米英支配層と話し合いで問題を解決できると考えたなら、破滅が待っている
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ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は12月19日、ジョー・バイデン政権の危険で近視眼的な政策により、アメリカとロシアの直接的な衝突を招く可能性が高まっているとアメリカ政府を批判した。
これはアメリカ国務省の報道官を務めているCIAの「元」幹部、ネッド・プライスの声明に対するコメント。
アメリカは現実を見ず、安全保障に関する真剣な対話を嫌がり、自分たちの覇権を維持しようとしていると彼女は主張している。
バイデン政権が平和を望んでいるという印象を広めたいのか、プライスはアントニー・ブリンケン国務長官はロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と接触していると語っているが、ザハロワはこれを嘘だと切り捨てている。
両者が最後に話したのは7月29日だ。
もっとも、アメリカ政府にとって話し合いは時間稼ぎにすぎない。
アンゲラ・メルケル前独首相はツァイト誌のインタビューで、「ミンスク合意」はウクライナの戦力を増強するための時間稼ぎに過ぎなかったと語っているが、これはいつものことだ。
アメリカやイギリスの支配層と話し合いで問題を解決できるとは思えない。
ミンスク合意はドンバス(ドネツクとルガンスク)での停戦を目的としてウクライナ、ロシア、OSCE(欧州安全保障協力機構)が起草し、この3者のほかドネツクとルガンスクの代表が2014年9月に署名した協定書に定められている。
ドイツとフランスが調停役を演じた。
この合意をキエフ政権が守らなかったことからドイツとフランスの調停で2015年2月に新たな合意、いわゆる「ミンスク2」が調印されたのだが、当時のドイツ首相がこの合意はキエフ政権の軍事力を強化するための時間稼ぎに過ぎなかったと語ったのである。
現ドイツ政権を含め、この発言は否定されていない。
ウクライナでの戦闘はバラク・オバマ政権がネオ・ナチを利用して行った2013年11月から14年2月にかけてのクーデターから始まるのだが、そのプロローグは2010年から始まる。
この年の1月から2月にかけて行われた大統領選挙で東部や南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチが勝利、7月にヒラリー・クリントン国務長官(当時)はキエフへ乗り込んでヤヌコビッチに対し、ロシアとの関係を断ち切ってアメリカへ従属するように求めた。
西側の植民地になることを望まないヤヌコビッチはこの要求を拒否。
そこからバラク・オバマ政権のクーデター計画が始まったと言われている。
そしてオバマ政権は3年かけてクーデターを準備、ヤヌコビッチの排除に成功したわけだ。
このクーデターを現場で指揮していたのがビクトリア・ヌランド国務次官補(当時)。
2014年2月上旬、クーデターが山場を迎える直前に彼女は電話でジェオフリー・パイアット米国大使に対し、「次期政権」の閣僚人事について話している。
その中でヌランドは混乱を話し合いで解決しようとしていた「EUなんか、クソくらえ」と口にしたのだ。
バイデン政権と同様、オバマ政権に「話し合い」という言葉はなかった。
いや、アメリカやイギリスの支配層に「話し合い」という言葉はない。
最終的には侵略、破壊、殺戮、そして略奪で終わる。
そして今、その矛先は東アジアに向けられ、日本が手先として動き始めた。
東アジアで日米韓と中露の間で軍事的な緊張が高まっている
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アメリカ軍と韓国軍は12月20日に朝鮮半島上空で合同軍事訓練を実施、アメリカからB-52爆撃機とF-22戦闘機も派遣されている。
中国やロシアに対する威嚇のつもりかもしれないが、こうした行為は中国とロシアの連携を強めるだけだ。
中国海軍とロシア海軍は12月21日から1週間の予定で東シナ海で艦隊演習を始めると19日に発表された。
アメリカ軍のインド・太平洋海域での軍事戦略や日本の軍事力増強に対応した動きのようだ。
その直前に中国軍は空母「遼寧」を含む艦船11隻が宮古海峡や大隈海峡を通過、東シナ海からフィリピン海へ入ったという。
イギリスは19世紀からユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配し、内陸部を締め上げるという戦略を維持してきた。
インドから太平洋にかけての海域はその一部だ。
その海域を一体として扱うため、アメリカ軍は2018年5月に「太平洋軍」を「インド・太平洋軍」へ作り替えた。
日本を太平洋側の拠点、インドを太平洋側の拠点、そしてインドネシアを両海域をつなぐ場所だとしたものの、インドとインドネシアはアメリカと一線を画している。
明確に従属しているのは日本だけだ。
アメリカが太平洋地域における同盟国と考えているのはタイ、フィリピン、韓国、オーストラリア、そして日本だが、タイとフィリピンは微妙で、韓国もアメリカの戦略に従うことを拒否する声が小さくない。
台湾ではアメリカに従属する政策を進めている蔡英文総統の民主進歩党が11月26日の地方選挙で大敗している。
日本とオーストラリアは今年1月、軍事演習や軍事作戦を迅速に行うことを目的とする相互アクセス協定(RAA)に署名した。
アメリカは日本とオーストラリアを軸に軍事作戦を考えているようだが、その一方でAUKUS(A:オーストラリア、UK:イギリス、US:アメリカ)という軍事同盟を太平洋に作った。
そのAUKUSへ日本は近づきたいようだ。
ロシア国家安全保障会議のニコライ・パトロシェフ議長はAUKUSについて、中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」であると主張している。
ソ連を追い出し、アメリカを引き入れ、ドイツを抑え込むことが目的で創設されたNATO。
その事務総長を現在務めているイェンス・ストルテンベルグは「NATO2030」なるプロジェクトを始めると2020年6月8日に宣言した。
NATOの活動範囲を太平洋へ広げ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、そして日本をメンバーにする計画を明らかにしたのだ。
アメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」の発表したレポートによると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしているが、配備できそうな国は日本だけ。
その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。
そこでアメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力する方針で、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成された。
その計画を先取りする形で自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設し、19年には奄美大島と宮古島に作った。
2023年には石垣島でも完成させる予定だという。
日本は軍事拠点を作るだけでなく、高性能兵器の開発にも乗り出している。
例えばアメリカと共同で音速の5倍以上で侵入してくるHGV(極超音速滑空体)を迎撃するミサイル技術の研究開発を考えていると報道されている。
すでにロシアはHGVを配備、中国は飛行試験段階だ。
今年7月24日には宇宙航空研究開発機構(JAXA)が鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所で迎撃ミサイルに必要な速度に到達することが可能だとされるエンジンの飛行試験を初めて実施したが、極超音速で飛行するミサイル自体も研究している。
日本の場合はHGVではなくエンジンによって推進力を得る極超音速巡航ミサイル(HCM)の開発を目指しているという。
2026年に九州や北海道の島々へ配備したいようだ。
JAXAが開発したLUNAR-AはM-Vを使って打ち上げられ、月を周回する軌道に入った段階で母船から観測器を搭載した2機の「ペネトレーター」と呼ばれる観測装置を投下、地中約2メートル前後の深さまで潜り込ませることになっていた。
ペネトレーターには地震計と熱流量計が搭載される予定で、その際にかかる大きな圧力に耐えられる機器を作るために必要な技術があれば小型のバンカー・バスターを製造できると見れていたのだ。
そこでこの「探査機」を「MARV(機動式弾頭)」と重ねて見る人は少なくなかった。
そのためか、2007年1月にLUNAR-A計画は中止になる。
日本のロケット技術は1990年代に長足の進歩を遂げたが、これはソ連が消滅した直後、秘密裏にSS-20の設計図とミサイルの第3段目の部品を入手し、ミサイルに搭載された複数の弾頭を別々の位置に誘導する技術、つまりMARVを学んだからだと言われている。
その当時のロシアは欧米支配層の傀儡だったボリス・エリツィンが君臨していた。
そして現在、日本政府は射程距離が1000キロメートル程度のミサイルを開発し、艦艇、戦闘機、そして地上から発射できるようにする計画を立てている。
地上発射の改良型は2024年度にも配備する方針だとされていた。
その後、日本政府はアメリカから亜音速の巡航ミサイル「トマホーク」を購入する意向だという話も出てきた。
トマホークは核弾頭を搭載でき、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートル。
記事では「反撃能力」が強調されているが、このミサイルには言うまでもなく先制攻撃能力がある。
さらに、日本は射程距離が3000キロメートル程度のミサイルを開発し、2030年代の半ばまでに北海道へ配備する計画だとも伝えられている。
それが実現するとカムチャツカ半島も射程圏内だ。
ロシアや中国の軍事施設や工業地帯を先制攻撃で破壊する能力を持つことになるが、「敵基地攻撃能力」は「先制攻撃」の言い換えにすぎない。
こうした方針が打ち出された背景にはアメリカの戦略がある。
日本はアメリカの中国やロシアに対する先制攻撃の片棒を担がされる可能性が高まっているのだ。
アメリカ軍が日本に軍事基地を作った理由は先制攻撃のためだ。
防衛のためではない。
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