長引く戦争でアメリカの軍事産業だけはハッピーなクリスマスを迎える | きなこのブログ

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私たちは「戦争は始めやすく終わらせにくい」ということを太平洋戦争から学んでいる
http://suinikki.blog.jp/archives/86647191.html

ウクライナ戦争は2022年2月26日に始まり、現在も継続中だ。

 

現在のところ、停戦の見通しは立っていない。

 

ロシアのウラジミール・プーティン大統領は停戦交渉に応じる姿勢を見せているが、ウクライナはロシアに奪われた地域の奪還を目指しており、停戦を求める姿勢にはない。

 

ウクライナ戦争は泥沼化の様相を呈している。

 

ウクライナとロシア両国にとって不幸であるが、アメリカは大規模な軍事支援を行っており、アメリカ政府は多額の予算を自国内の軍事産業に投じている。

 

アメリカ政府は人々から反対されにくい予算支出の大義名分を得ているということになる。

 

世界中で多くの人々が物価高やエネルギー不足で苦しむ中で、アメリカの軍事産業だけはハッピーなクリスマスを迎えることが出来るだろう。

戦争は始めるのは簡単だが終わらせるのは難しい。

 

このことは歴史が証明している。

 

私たちは日中戦争や太平洋戦争から体験的にそのことを学んでいる。

 

戦争を始めてしまうと、「勝つ(相手が敗北を受け入れる)まで終われない」ということになる。

 

そして、戦争が自国に有利な状況で進んでいるうちには停戦を考えることはなく、敗色濃厚になってから慌てて戦争終結について考慮、検討を始めても手遅れで、敗北を受け入れるところまで追い込まれて惨めな敗戦を迎えることになる。

 

日中戦争開始から太平洋戦争で悲惨な敗戦を迎えるまでの約15年間に日本は何度も戦争を停める機会はあった。

 

アメリカとの開戦を避けることも出来た。

 

しかし、それができなかった。

 

サンクコストと呼ばれる現象が原因の一つになっている。

 

 

サンクコストは既に始めた事業から撤退した場合に回収できないコストのことで、これがあるために事業からの撤退を決断できずに、ずるずると事態が悪化し続けるということが起きる。

 

日本はこのサンクコストに悩まされた。

満州事変からの満州国建国までの道筋では、中国側に満州の権益を脅かされる事態となり、ここで関東軍が日露戦争を持ち出して、「十万の英霊、二十億の国帑(こくど、国の財産)」という言葉を使って「満州は日本の生命線だ」とのスローガンの下、満州国建国まで進み、日本は国際連盟脱退に至った。

 

また、日米開戦直前には、アメリカが日本の中国からの撤退を求めたのに対して、東条英機をはじめとする陸軍首脳は「ここで引き下がっては二十万の英霊に申し訳が立たぬ」と言って強硬に中国からの撤兵に反対した。

 

こうしたサンクコストへの個室のために結果的により大きな犠牲を払うことになった。

 

戦死者を英霊と呼び、英霊の数がどんどん増えていくことで、戦争はより激化し、戦争を停めることはどんどん難しくなっていた。

その他にも「首都である南京を落とせば中国は簡単に屈服する」「アメリカとイギリスを離間させることが出来る」「中国兵は弱兵、アメリカ兵は軟弱怠惰ですぐに逃げ出す」といった誤った認知、自分に都合の良い、客観的な証拠に基づかない期待に基づいた決定によって犠牲はどんどん増えていった。

 

誤った認識を改めることは難しい。

 

人間は誰しも自分の経験や先入観、考えを大きく変えることは困難だ。

 

そして、年齢を重ねていくと、思考がより狭くなり、そして自分の出した結論や決断に固執してしまうことになる。

 

しかし、そのことを知っていれば大きな失敗を回避できる。

私が見事だったと評価したいのは第一次湾岸戦争におけるアメリカの動きだ。

 

アメリカはクウェートを占領したイラクに対して、多国籍軍を結成し(アメリカ軍が大部分を占めてはいたが)、実力でクウェートからイラク軍を撤退させた。

 

アメリカ軍とイラク軍の戦力差を考えると、これはそこまで難しいことではなかった。

 

この当時のジョージ・H・W・ブッシュ(父)政権では、ディック・チェイニーやドナルド・ラムズフェルド、ジョン・ボルトンなどのネオコン派がこのままイラク国内に侵攻して、サダム・フセイン大統領打倒を行うように求めた。

 

しかし、ブッシュ大統領とジェイムズ・ベイカー国務長官はイラク侵攻に反対して、それは実現しなかった。

 

アメリカ軍の実力であればサダム・フセイン大統領を追い落とすことは可能だっただろうが、第二次湾岸戦争とその結果を見れば明らかなように、その後のアメリカによるイラク占領は大きな犠牲を伴うものとなることをブッシュとベイカーの2人は分かっていた。

 

戦争の目的(イラクのクウェートからの追い落とし)を達成したらすぐに軍を停めるという見事な決断だった。

 

このようなことは中々できない。

戦争が予想通りに進むことはほぼない。

 

最初に「戦争終結案」のようなものを作ってもその通りには行かない。

 

そして、戦争は長引き勝者になるにしても敗者になるにしても、犠牲は予想を大きく超えるものとなる。

 

一番良いのは戦争を始めないことであり、戦争につながる危険を平時から少しでも除去しておくことだ。



(貼り付けはじめ)

戦争を始めるのが容易くて終わらせるのが難しいのはどうしてか

(Why Wars Are Easy to Start and Hard to End)
-誤った認知(misperception)、サンクコスト(sunk cost)、激化(エスカレーション、escalation)、そして国際化(internationalization)、これら全てが衝突や戦闘を計画よりも長引かせることになる。
スティーヴン・M・ウォルト筆 2022年8月29日『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2022/08/29/war-military-quagmire-russia-ukraine/

私はこれまでに何度か、国家指導者たちが危険を覚悟しながらも忘れている重要な外交政策上の考え方、例えば、力の均衡(balance of power、バランス・オブ・パウア)、ナショナリズム(nationalism)、安全保障のジレンマ(security dilemma)などについて論稿コラムを書いてきた。

 

今週は、世界各国の指導者や外交政策アドバイザーたちが、机の上やオフィスの壁、あるいはまぶたの内側にタトゥーでも入れて、絶対に忘れないようにすべき、シンプルな意見を紹介する。

 

それは「戦争を始めるのは終わらせるよりずっと簡単だ」というものだ。

この現象の描写はあらゆる場所にある。

 

ジェフリー・ブレイニーがその古典的著書『戦争の原因(The Causes of War)』で述べているように、過去の紛争の多くは「来るべき将来の戦争への夢と妄想」、特に「戦争は素早く、安く、決定的な勝利をもたらす」という信念によって促されてきた。

 

例えば1792年、オーストリア・ハンガリー、プロイセン、フランスの3か国の軍隊は、1、2回の戦闘で戦争が解決すると信じて戦場に駆けつけた。

 

フランスの急進派は、自分たちが最近起こした革命がすぐに他国に広がると考え、相手国の君主国は、革命軍は無能な集団であり、自分たちの誇る職業軍人たちなら簡単に一掃できると考えていた。

 

しかし、その結果は四半世紀に及ぶ戦争が繰り返され、全ての大国が巻き込まれ、戦争が世界中に拡大していった。

同様に、1914年8月、ヨーロッパ諸国では、クリスマスまでに兵士たちは帰ってくると言って出征したが、クリスマスに帰ってくることができたのは、1918年のことであることを知らずに兵士たちは出征した。

 

イラクの指導者サダム・フセインは、1980年に同じような錯覚に陥った。

 

1979年の革命によって、イランはイラクの攻撃に対して脆弱になったと考えた。

 

その結果、戦争は8年続き、両国は何十万人もの死者と莫大な経済的損害を被った後、停戦した。

軍事作戦が大成功を収めても、すぐに勝利に結びつかず、泥沼にはまることがよくある。

 

1967年の「六日間戦争(Six-Day War)」は1週間足らずで終わったが、イスラエルとその近隣諸国との間の根本的な政治問題は何一つ解決されず、よりコストのかかる「消耗戦(War of Attrition)」(1969-1970年)と1973年の「十月戦争(the October War)」の舞台となっただけである。

 

1982年のイスラエルのレバノン侵攻は軍事的にはほぼ成功したが、その結果、レバノン南部の占領は18年間続き、何百人もの命を奪い、ヒズボラの創設につながり、更に費用のかかるいくつかの衝突の下地を作った。

 

1991年の「砂漠の嵐作戦(Operation Desert Storm)」より成功した軍事作戦を見つけるのは難しいだろう。

 

しかし、サダム・フセインはクウェートから彼の軍隊を追放した後も権力にしがみつき、アメリカは更に10年間、イラク上空の飛行禁止区域をパトロールし、時折空爆を行うことになった。

2001年のアフガニスタンと2003年のイラクにおけるアメリカの最初の成功は、全く幻想であったことが証明された。

 

ジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)がイラク侵攻後2カ月足らずで空母の上で早々と宣言した「ミッション・アコンプリッシュト(Mission Accomplished)」どころか、いずれのケースでも、驚くほど回復力があり有力な反乱軍との戦いで、コストがかかり、結局は失敗した。

 

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子は、イエメンのフーシ派に対する無謀な戦争を始める前に、この経験を熟考すべきだった。

ロシアのウラジミール・プーティンは、勝利が手早く簡単に訪れると信じて戦争を始めた最新の世界的指導者だ。

 

ウクライナ戦争の最終的な起源と責任について誰がどう考えるにせよ、ロシアが戦争を始めたことに疑問の余地はない。

 

プーティンは、ロシアの強みを誇張し、ウクライナの決意を過小評価し、第三者がどう反応するかを計算ミスしたため、あるいはその3つの組み合わせのため、当初の戦争目的は達成に時間がかからず、費用もそれほどかからないと信じていたようである。

 

プーティンは今、他の多くの世界の指導者が発見したのと同じ痛みを伴う教訓を学んでいる。

 

戦争を始めることは、戦争を終わらせることよりもはるかに簡単なのだ。

しかし、なぜ、戦争を始めた人々の予想通りに、容易に停止させることができる短期決戦の戦争がほとんどないのだろうか? 

 

戦争が常に不確実であること、戦前の予測にしばしば誤りがあること、戦闘がしばしば意図しない結果を生み、戦前の計算が無意味になることを認識するだけでは十分ではない。

 

戦争を考えている指導者が評価すべきは、戦争が予想以上に大きくなり、費用がかさみ、長引かせる強力な傾向があるということだ。

第一に、相手がどれほど激しく抵抗するか事前に知ることは不可能であり、攻撃を考えている指導者はそれを過小評価する可能性が高い。

 

ナショナリズムの力を理解していないことがその一因であり、自国があらゆる潜在的な敵に対して生来的に優れていると考える傾向があるので、侵略者たちは相手の抵抗力を軽視してしまう。

 

相手がより強く、より団結しており、より結果を重視していることを認識していれば、誰も戦争を始めない。

 

驚くべきは、戦争を始める国家がいかに頻繁にこの点を見誤るかということである。

第二に、戦争が始まると、サンクコスト(埋没費用 訳者註:既に投資した事業から撤退しても回収できないコスト)の問題が必ず発生する。

 

敵対国が損失を被ると、その指導者は既に払われた犠牲を正当化するために十分な利益を得ようとする。

 

愛する者を失った家族は、その犠牲が無駄であったとは言われたくないことだろう。

 

軍の指揮官たちは、戦争の危険性を警告したり、最初の決断にあらかじめ反対したりしていたかもしれないが、敗戦の責任を負いたくないし、勝利をもたらすあらゆる機会を求めていくだろう。

 

サンクコストが現在の政策を決定するのは非合理的かもしれないが、それが起こらないということではない。

 

また、サンクコストを回収したいという欲求は、それぞれの側の戦争目的を拡大させ、増大する損失に見合った利益を得ようとする。

第三に、戦争が続くのは、戦うという行為そのものが、それぞれの側の相手に対するイメージを硬化させるからである。

 

戦争が始まった時、当事国がいかに疑いや敵意を抱いていたとしても、それぞれが相手に死や破壊や苦しみを与えれば与えるほど、憎しみや疑いの感情は増すばかりだ。

 

このような状況下では、復讐心を抱くのは当然であり、その結果、より軽蔑され嫌われる敵に対して決定的な勝利を収めたいという欲求が高まる。

第四に、敵のイメージが固まるにつれて、交渉能力が低下する。

 

国交が断絶され、直接の意思疎通が難しくなり、妥協(compromise)の可能性を口にする者は、裏切り者(traitor)、あるいはそれ以上として糾弾される可能性がある。

 

たとえ交渉が始まったとしても、どちらの側も相手を十分に信頼して取引を行うことはできないだろう。

 

和平交渉は通常、深刻な関与(commitment)問題(「相手が再軍備して平和条約を破棄し、再び攻めてこないことをどうやって確認できるか」)に直面し、その障害は、双方の相手に対するイメージが悪化すればするほど顕著になるだろう。

例えばウクライナの場合、ヴォロディミール・ゼレンスキー政権にはプーティンやその関係者を信用できない理由が十分にあり、現時点ではプーティンやそのアドバイザーたちを誰も信用していない。

 

残念ながら、ジュネーブのロシア国連大使、ゲンナジー・ガチロフが先週述べた、「"紛争が長引けば長引くほど、外交的解決は難しくなる」という言葉は、おそらく正しいのだろう。

第五に、戦争はエスカレートし、拡大する強力な傾向も持っている。

 

一方が敗れれば、より多くの武力を行使し、より危険な新しい標的を攻撃し、他の方法で利害関係を高めることを考えるかもしれない。

 

クリミアでの爆発、ザポリージャ原子力発電所の危険な状況、モスクワでの親プーティン派論客の自動車爆弾テロは、これらの行動の最終責任が誰にあるかにかかわらず、この過程がいかに機能しうるかを如実に示している。

また、NATOがウクライナに対して行ったように、戦争が始まると、外部が一方を支援するために飛び込んできたり、他が混乱している間に自分たちが利益を得ようとするために戦争が拡大したりする。

 

シリアの内戦はその典型である。

 

シリア国内の反乱として始まった戦争は、最終的にロシア、トルコ、イラン、サウジアラビア、アメリカ、イスラエル、その他多くの国々による直接的または間接的な軍事介入を引き起こした。

 

残念ながら、紛争に関与する国の数が増えれば増えるほど、全ての国の合意を得ることは難しくなる。

戦争を長引かせる第六の問題は、情報の質の低下である。

 

ハイラム・ジョンソン元連邦上院議員の言葉にもあるように、「戦争が起きたら最初に犠牲になるのは真実である」ということになる。

 

戦争状態にある国は、できるだけ冷静かつ明確に考え、行動すべきであるが、戦時下においてはそれが困難となる。

世界各国の政府は、良いニューズを大々的に宣伝し、後退を隠し、敵の悪意を常に国民に思い起こさせることによって、国民の士気を維持しようとする強力な動機付けを持っている。

 

また、検閲(censorship)を行い、異論を唱える者を弾圧・排除し、戦場で実際に何が起きているのか、内部の人間でさえも正確に把握することが難しくなっている。

 

独裁国家には国民が知るべきことをコントロールする方法がたくさんあるが、この問題は民主政治体制国家でもほとんど知られていない。

 

メディア組織はしばしば愛国的熱狂や政府の意図的な操作に屈することがある。

戦争当事国のエリートも国民も、戦争が自分たちの側に有利に進んでいると信じていれば、戦争を終結させようという圧力はあまりかからないだろう。

 

もちろん、全ての人が正しい訳ではないが、本当の状況が広く理解されるには、長い時間がかかるかもしれない。

 

1917年にイギリスのロイド・ジョージ首相が言ったように、「もし人々が戦場の状況を本当に知っていたら、戦争は明日にでも止められるだろう。しかし、もちろん彼らは知らないし、知ることもできない」ということとになる。

戦争を始めた人々には、自分たちが勝利と言える何かを達成する前に戦争を終わらせようという意欲がほとんどない。

 

故フレッド・C・イクレ(彼はハト派ではなかった)は、その魅力的な著書『全ての戦争は終わらせねばならない(Every War Must End)』の中で、戦争を終結させるにはしばしば新しい指導者を迎え入れることが必要だと指摘している。

 

それは、戦争に進むことを選択した人々は、しばしば自分たちの誤りを認めたがらなかったり、認めることができなかったりするからだ。

 

このことは残念なニューズだ。

もちろん、全ての戦争は最終的に終結する。

 

しかし、犠牲が利益をはるかに上回る場合、それは冷たい慰めにしかならない。

 

この教訓は十分に明確である。

 

戦争は時に必要かもしれないが、最も不本意なものであり、切実な必要性の下にのみ行われるべきだ。

 

このような決定を下す立場にある人々は、戦争が予想や制御が困難な強力な政治的、社会的な力を解き放つことを決して忘れてはならない。

 

ひとたび戦争の犬(the dogs of war)(訳者註:戦争の惨禍)を解き放てば、誰が噛まれることになるかは分からない。

 

しかし、皆さんが考えているよりずっと長く、ずっと多くの費用がかかることは間違いない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。


(貼り付け終わり)


(終わり)


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