【パレスチナ発】「戦争を止めれば豊かになれる」女性救急隊員の夢壊した日本の安保法制
http://tanakaryusaku.jp/2018/05/00018156
「また撃たれた」。救出に駆けだす女性隊員たち。=15日、パレスチナ自治区アルビーレ村 撮影:田中龍作=
イスラエル軍が雨あられのごとく催涙弾を浴びせ、毒ガスであたりは白く煙って視界ゼロとなる。
「パン、パン」…乾いた音と共に実弾も放たれる。
バタバタと倒れる同胞たち。
サイレンを鳴らして走り回る救急車。
パレスチナは世界一、救急隊が忙しい地域だ。
現場で見る限り救急隊の半分は女性である。
スカーフを被っていたり、被っていなかったりする。
イスラエル軍が丘の上まで下がり、前線が緩んだ時だった。
若い女性隊員が田中に話しかけてきた。
年の頃はまだ二十歳に手が届いていないのではないだろうか。
「どこから来たのですか?」
「日本です」。
会話の始まりはお定まりのパターンだった。
この日も女性救急隊員たちはオリーブの木陰から心配そうに戦況を見つめていた。=15日、パレスチナ自治区アルビーレ村 撮影:田中龍作=
ところが彼女は「日本」と聞くと、アーモンドのような目をさらに大きくさせた。
キラキラと輝いているのが手に取るように分かる。
「日本は世界の中でも別の国。第2次世界大戦の後、戦争を止めて経済繁栄を遂げた。日本はピースフルカントリー。一度日本に行きたい。それが私の夢です」。
彼女はそこまで一気に話すと「私たちの国と全く違う」と言って目線を落とした。
田中は逡巡した。
本当のことを話せば彼女の夢を壊す。
しかし、もし彼女がお金を貯めて日本に来て、現実を知ったら、どうなるだろう?
立ち直れないほど落胆するだろう。
思い切って実情を明かすことにした。
「それが違うんだ。プライムミニスターが愚かで、平和な国から戦争ができる国に変えてしまったんだ」
「きのう飛んだドローンはイスラエルと日本が共同開発してるんだ」。
彼女は見る見る顔を曇らせた。
唇に人差し指をあてたまま押し黙ってしまった。
世界には豊かで平和な国がある。
そうなれば血を流さずにすむ・・・戦争の最前線にいる彼女はそう信じて生きてきたに違いない。
なのに日本の愚かなジャーナリストは、彼女の希望をぶち壊したのである。
この時ほどアベシンゾウの安保法制を憎んだことはなかった。
日本が米大使館移転に追随しなかったことだけが、かすかな希望として残った。
〜終わり~