TPPは死んでもFTAは生きている | きなこのブログ

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すでに進んでいた日米FTA  傀儡国家?日本
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2016/12/post-f444.html
 
ゾンビTPP教国会、参議院審議のトピックは、TPPは死んでも、日米並行二国間協議の結果は生きているということが確認されたことにあるだろう。

12月8日の参議院特別委員会の審議について、中日新聞は、共産党の紙智子議員の質疑について次の通り、ベタ記事で伝えている。
 
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紙智子氏(共産)
発効の見通しがないのに、サイドレターは生き続けているのか。
 
岸田文雄外相 
文書は日本のこれまでの取り組みや今後自主的に行う内容を確認したもの。
 
わが国が行っていることなので廃することはない。
 
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ここでサイドレターは、条約の付属文書一般ではなく、本年2月4日のTPP署名に当たって、非関税障壁に関して日米双方が交換した書簡のことをいい、保険、透明性・貿易円滑化、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、急送便及び衛生植物検疫の9つの非関税分野に及ぶ。

交換書簡は、日本側が具体的な措置を行うべき用意があることを申し出、米国はこれを歓迎するという一方的なものだ。

この中には、各種の審議会について、

「外国の関係者を含む全ての利害関係者に対し、同様の状況において自国の関係者に対して与えられるものよりも不利でない条件で意見書を提出する有意義な機会を提供すること」

「(外国の関係者を含む)利害関係者が審議会等の会合を傍聴し、又は審議会等の会合に出席し、若しくは意見書を提出すること」

等、政策決定に当たり、国内の利害関係者と同様に外国企業の意見を反映させる仕組みを作るとされている。

米国企業が国内政策全般に介入する仕組みを作るということだ。

これは、先般、日本政府が薬価引き下げの機会を増やそうとしたことを受けて、直ちに米国政府や米国商工会議所が見直しを求めたことと符合している。
 
薬価決定システムについて日本の国内だけで決めるのは、ゾンビTPPに附属した、生きている二国間協議の結果に反することになるのだろう。
 
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ウォールストリートジャーナル
2016 年 12 月 6 日 16:44 JST 更新

米政府、日本の薬価引き下げ計画の見直し要求
 
米国政府は、日本政府が薬価引き下げの頻度を増やすよう計画していることについて、見直しを求める書簡を菅義偉官房長官に送った。

米国のプリツカー商務長官は12月2日付の書簡で、日本の薬価引き下げ計画にいかに「失望している」かを説明。
 
「医療関連製品のインセンティブ構造だけでなく、市場の予測可能性と透明性に対する深刻な懸念を引き起こす」と伝えた。
 
東京の米国大使館と首相官邸はこの書簡に関するコメントを避けた。
 
米商務省からもコメントは得られなかった。
 
書簡が菅官房長官に公式に送付されたものかどうかは不明だ。
 
全米商工会議所は、同様の内容の書簡を安倍晋三首相にも送ったことを明らかにした。

米国研究製薬工業協会の広報担当者、マーク・グレイソン氏は「プリツカー商務長官とトム・ドナヒュー全米商工会議所会頭の書簡は、日本の患者にとって良好なイノベーション環境がいかに重要かを強調するものだ」と述べた。

日本の医薬品市場は米国に次ぐ世界2位の座を中国と争っている。
 
日本の医薬品支出額は今年3月31日までの1年間に7兆9000億円に達した。

日本では政府が薬価を設定しているため、メルクやファイザーなどの米製薬会社にとって日本の政策は重要な関心事となっている。

安倍政権は先ごろ、増大する薬剤費を抑制する措置を講じた。
 
まず、来年2月1日からがん免疫療法薬「オプジーボ」の価格を50%引き下げることを決めた。
 
これにより、オプジーボを使用している平均的な患者の年間費用は30万ドルから約15万ドルに減少する。

また、安倍首相は11月25日の経済財政諮問会議で、薬価改定の頻度を2年に1回から年に1回に増やすことを検討するよう指示した。
 
実現すれば、政府はこれまでより速いペースで高額医薬品の価格を引き下げることが可能になる。

薬価制度の改革を求める人々は、日本がオプジーボに支払っている費用は世界で最も高いとし、医療費を抑制するため柔軟な対応が必要だと訴えている。
 
プリツカー商務長官は書簡でオプジーボの名前を挙げなかったが、「医薬品の保険償還価格を引き下げるためのその場しのぎの制度変更」に落胆していると伝えた。

日本政府の対応は、オプジーボの高額な価格に関する国内メディアの報道を受けたもので、米国でも高額な薬価に対する反発が起きている。

米国ではブリストル・マイヤーズ・スクイブがオプジーボを販売。
 
日本では、初期段階から同製品の開発に携わった小野薬品工業が販売している。
 
小野薬品によると、今年4~9月のオプジーボの売上高は533億円だった。

小野薬品の広報担当者は、政府によるオプジーボの値下げ決定を受け入れたとしたうえで、「国民皆保険を維持することの重要性も認識している」と語った。
 
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薬価見直しの頻度を増やそうとする国内のやむにやまれぬ政策に対して、介入する有効な機会を与えるのが、「すでに行っている内容」あるいは「今後自主的に行う施策」だというわけだ。

並行二国間協議の政府調達では、政府と全都道府県及び主要な市について、英語を用いた公示及び招請にアクセスできる検索可能なオンラインサイトの利便性を高めるとされている。
 
とうとう、調達での英語使用が義務化されたと思ったら、日本政府はこれに対して、https://www.jetro.go.jp/en/database/procurement/のサイトが利用可能であることを認識するとしている。

これは岸田外相による「すでに行っている施策」に分類されるのであろう(しかし、まあ、それにしても、いつの間に制度化されていたのだろう)
 
さらに、都道府県や市町村、独立行政法人等も含む政府調達について、「不当に競争を制限する慣行を禁止すること」を求めている。
 
地方自治体の入札などでは、県内で実績があること等の条件を付けることがしばしばあるが、これなどは「不当に競争を制限する慣行」に該当することになるだろう。
 
地元産の材料の使用などは、TPP本体の政府調達条項では禁止されているわけではないが、日米並行二国間協議において「不当に制限する慣行」に該当する可能性は排除できない。
 
また規格・基準の章では、「強制規格、任意規格及び適合性評価手続に関する作業部会を設置する」とされ、作業部会は、貿易上の懸念に対処し、規格・基準に関する日米の協力を強化すること等が決められている。

国際的な規格の使用の促進が謳われていることからすると、唐突に行われた洗濯タグマークのISO化や、温泉マークを含む地図記号の国際化の議論が急に起きている状況は、岸田外相のいう「今後自主的に行う施策」に分類されているのかもしれない。

TPPでは、遺伝子組み換え表示義務に影響がないとされてきたが、今後も維持されるかどうかは日米規格・基準作業部会次第ということになる。
 
TPPの帰趨如何を問わず、有効性が確認された、交換書簡には

「二国間の対話のための既存の枠組みその他の適当な方法を通じた作業を継続することにより、アメリカ合衆国政府との対話に取り組む用意があります」(日本側)

とあり、米国側は

「二国間の対話のための既存の枠組みその他の適当な方法を通じた作業を継続することにより、将来生起しうる非関税措置に関連する特定の問題について日本国政府と更なる対話を行う見通しを歓迎します」

と応じている。

今後の日本国政府の政策決定についても、二国間の作業を継続することを合意しているのである。
 
もともと非関税分野に関する日米並行協議は、TPP交渉参加時の合意によって、TPPの発効と同時に効力を生じるとされていたもので、TPP破綻後にも効力を生じることは想定されていなかった
(交換書簡は国際約束でもなく、法的拘束力がないという言い分はわからなくはないが、それならなぜ、当初の交換書簡では並行二国間協議の結果は「TPP発効と同時に効力を生じる」とされていたのか、訳がわからなくなる)。

想定外のトランプショックによってTPPが破綻しても、これを自主的な施策であると言いくるめて米国の意を体した政策を推し進めると言い張る。
 
永田町も霞ヶ関も、東京も国も、どこまでが日本で、どこからがアメリカなのか、もはや境目は不明だ。
 
傀儡政権と言えばよいのか、傀儡とも違うというのか、いずれにしろ主権が内側からひどくむしばまれていることは間違いがない。