ユダヤ的な合理的選択論 1-2 | きなこのブログ

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(転載開始)
 
副島隆彦による推薦文
 
本書『ハーヴァード大学の秘密』は、私の弟子である古村治彦君の二冊目の単著である。
 
古村君の前作『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、二〇一二年五月)は、有難いことに大きな評判をいただいた。
 
古村君はこの『アメリカ政治の秘密』で、ヒラリー・クリントン(Hillary Rodham Clinton)前国務長官を支える三人の女性たちについて書いた。
 
このうち、スーザン・ライス(Susan Rice)が国家安全保障問題担当大統領補佐官、サマンサ・パワー(Samantha Power)が米国連大使というアメリカの外交を担う要職に就いた。
 
このことは古村君のアメリカ研究の確かさを示している。
 
『アメリカ政治の秘密』は、現在のアメリカ政治、日米関係に関心を持つ人々にとって必読の書となった。
 
未読の方は是非お読みください。
 
古村君は、前作を発表してから、この『ハーヴァード大学の秘密』の準備に取り掛かったのだが、書き上げるまでに苦労していたようだ。
 
私はその様子を見ていたので、今回、出版まで漕ぎつけたことを大いに喜んでいる。
 
古村君には、益々の研鑽を期待している。
 
今回、古村君が取り上げたテーマは、世界一の名門大学として知られるハーヴァード大学だ。
 
私は、二〇一一年あたりから、古村君に「ハーヴァードの政治学の全体像を書いてみてはどうか」と提案した。
 
彼がアメリカ留学経験で学んだ合理的選択論(Rational Choice Theory)について書いてもらいたいと思った。
 
私自身が、何よりもこの理論を知りたかった。
 
古村君がアメリカに留学していた二〇〇三年頃、アメリカの全ての大学の政治学(Political Science)研究や分析で共通の土台として使われている方法論(methodology)について、彼に根掘り葉掘り話を聞いたことがある。
 
このメソドロジーをすぐに日本語で「方法論」と訳すから困ったことなのだ。
 
メソドロジーは、そんな甘い「学問方法論」のことではない。
 
いろいろの近代諸学問(サイエンス)の共通の基礎、土台を作っているものなのである。
 
だから以後は、メソドロジーは「学問土台学」と訳すべきだ。
 
文科系の諸学問の土台となる学問なのである。
 
私の先生である碩学・小室直樹は自分をメソドロジストと称した。
 
メソドロジーがしっかりしていない学問分野は欧米では大事にされない。
 
そして、アメリカの名門ハーヴァード大学は、この大学のお家柄というか、その真髄である「合理的選択論」という方法論、ではなかった学問土台学を持っている。
 
この学派が今のアメリカ政治学の分野で支配的な(dominant)であることを私なりに理解した。
 
このハーヴァード大学の秘密と言うべき合理的選択論とは何か。
 
この本の冒頭に、著者でもないのに推薦者が出しゃばってズバリと書く。
 
それは、
 
「合理的選択とは、政治家(権力者、支配者)にとって最大の目的は選挙に当選し続けることである。
 
権力者(支配者)だったら自分が権力を維持し続けるということだ。
 
そのためなら何でもする。
 
どんなことでもする。
 
それが合理的選択だ」
 
ということだ。
 
彼らはここまであけすけに言う。
 
私は大いに驚いた。
 
私は、古村君から合理的選択論についての話を聞く少し前の二〇〇一年に、「合理(ratio、ラチオ、レイシオ)」という言葉について研究し発表した。
 
そしてその奥義をすっかり読み破った。
 
ラチオ(合理)とは、元々が
 
「割合、分け前」と
 
いう意味で、
 
「取り分、利益の分配」と
 
いう意味の言葉だ。
 
だから、自分の利益になるように「合理的(rational)」「行動を選択(choice)せよ」ということである。
 
自分が勝つ(得をする、生き延びる)ように賢く行動せよ、ということだ。
 
このラチオを人類の長い歴史でよくよく分かっていたのがユダヤ人(ユダヤ民族)である。
 
ユダヤ思想(Judaism)の中心に、このラチオがある。
 
ラチオの思想こそは、ユダヤ人の生き方そのものであり、それがユダヤ思想(そのままユダヤ教でもある)の中心なのである。
 
そして、このラチオが資本主義を生み出し、人類の近代(modern)も生み出した。
 
ハーヴァード大学はユニテリアン系のプロテスタント修道院として創立されたのだが、その背景に強力な利益の法則を持つ。
 
この合理的選択論については、本書の第8章で古村君が詳しく紹介している。
 
是非お読みください。
 
この合理的選択論という政治思想を大きく理解することが今の私たち日本人に極めて重要だ。
 
そしてこの合理的選択論が、まさしくハーヴァード大学に世界中から集まってくる頭の良い学生たちに教えられていることを知ることもまた重要だ。
 
本書には、合理的選択論以外にも、幅広い内容が収められている。
 
前半では、ハーヴァード大学出身者たちのネットワークについて書かれている。
 
三木谷浩史氏を中心とするハーヴァード大学出身者のネットワークを、古村君は「クリムゾン・クラブ(Crimson Club)」と名付け、その人脈を丁寧に追っている。

後半部では、ハーヴァード大学の知的パワーを代表する政治学者の故サミュエル・ハンチントンとジョセフ・ナイについて詳しく、かつ分かりやすく紹介している。
 
また、日本でもマイケル・サンデル教授の名で有名になった共同体優先主義(Communitarianism)と合理的選択論について詳しく紹介している。
 
この一冊で、ハーヴァード大学の政治学部でどういうことが教えられ、どんな人材が育てられているのかを理解することができる。
 
そしてハーヴァード大学が持つ、これまで私たちに明らかにされてこなかった部分を知ることができる。
 
本書『ハーヴァード大学の秘密』を是非買って読んでください。
 
 
二〇一三年十二月
副島隆彦 
 
あとがき
 
前作『アメリカ政治の秘密』を二〇一二年五月に出版していただいた後、師である副島隆彦先生から、「君はアメリカで政治学の勉強をしてきたのだし、次はハーヴァード大学の政治学の全体像について書いてみてはどうか」という提案があった。
 
この提案を受けて、私は、本書『ハーヴァード大学の秘密――日本人が知らない世界一の名門の裏側』の準備に取り掛かった。
 
構想を練り、準備するのに予想以上の長い時間がかかってしまった。
 
本として出版できるのかという不安を持ちながらの執筆であったが、このように出版していただけることになり、ホッとしている。
 
本書『ハーヴァード大学の秘密』は、「ハーヴァード大学」をキーワードにして、幅広いテーマを取り上げている。
 
副島先生の提案通りに政治学の全体像を描くことは、私の力不足でできなかったが、ハーヴァード大学で教えられている政治学、ハーヴァード大学の政治学を代表する学者、留学全般に関することを網羅することはできた。
 
読者の皆様に、それぞれの興味関心と重なる部分からお読みいただけたらと思う。
 
そして、第1部では、ハーヴァード大学出身の日本人人脈を取り上げた。
 
ハーヴァード大学をキーワードにして、張り巡らされた人脈の地下茎を掘り起こす作業を行った。
 
私は、これを“属国日本の政界のたけのこ掘り”と呼んでいる。
 
このたけのこ掘り作業を通じて、ハーヴァード大学から送り出された人材たちは、現在に至るまで日本の中枢を形成し、日本を動かしてきたことを発見した。
 
正直なことを言えば、ハーヴァード大学出身者たちを中心にして人脈がここまで広く形成されていたことは、私にとって大きな驚きであった。
 
私はこれからもたけのこ掘りの作業を続けていく。
 
ハーヴァード大学は、「合理性(rationality)」の総本山と言うべき存在である。
 
政治学部では、政治学の分野で主流となっている理論である合理的選択論(Rational Choice Theory)が教えられている。
 
副島先生が推薦文の中で書いているように、合理性とは、一言で言ってしまえば、「自分が得をする、生き延びる」ために行動するということである。
 
この合理性(ラチオともいう)はユダヤ思想(ユダヤ教)の中心となり、そこから資本主義(Capitalism)と近代(modern)が生まれた、ということである。
 
合理性を身につけることこそが、資本主義社会で成功するためには必要なことだ。
 
ハーヴァード大学で学んだ日本人たちも当然のことながら、この合理性を身につけている。
 
私が前著『アメリカ政治の秘密』でも指摘したことでもあるが、最近のアメリカの日本管理には鷹揚さがなくなっている。
 
ジャパン・ハンドラーズたちはより露骨に、かつ、より性急にアメリカの利益追求の姿勢を示すようになっている。
 
アメリカと、そして自分たちの利益追求に一直線に進んでいる。
 
それは、ジャパン・ハンドラーズたちの中で世代交代が起こり、若い世代は合理的選択論を学んだことで、合理性をより重視する姿勢を取るようになっているからだ。
 
管理する側 管理される側 を分けるものが「合理性」なのである。
 
日本管理のジャパン・ハンドラーズが合理性を武器にしているならば、それに対抗するために、私たちも彼らが使っている武器を手に入れて使えるようにするべきだ
 
そうすることで、ジャパン・ハンドラーズの意図を見抜き自分たち、そして日本が損をしないように賢く行動できるようにしなくてはならない。
 
本書が読者の皆様にとって、合理性について、そして合理的選択論について学ぶ契機になれば幸いである。

(転載終わり)