映画大好き!鮮血大好き! ホラー・シネマ・パラダイス | 不思議戦隊★キンザザ

映画大好き!鮮血大好き! ホラー・シネマ・パラダイス

ヴィクトリアシアターは、小さな町にある小さな映画館であった。1980年代当時、映画は人々が最も好むレジャーであった。週末には友達同士、恋人同士、或いは家族で映画を楽しんだ。ささやかながらも町の住人に愛されている映画館。そんな映画館が、昔はあちこちにあったものだ。


個人経営のアットホームな映画館


ある週末、ヴィクトリアシアターでは子供たちのために「シネマ・マティネ」が開催されていた。子供向け映画の上映だけではなく、芝居や歌などを披露するちょっとしたイベントである。観客の子供たちは配られたお菓子とジュースを受け取り、観客席へ座っていた。
次の出し物はシアター館長の娘、デボラが歌う「オズの魔法使い」である。ピアノの伴奏は館長のパパであった。デボラの夢は女優になることである。そして優しいパパは、デボラの才能を認めてくれている。ここで一発、自分の才能とやらを観客に示しておかなければならない。


だが初めて舞台に上がったデボラは、緊張しすぎて漏らした挙句、感電してしまったのである!


デボラ感電中


デボラの異変に気付いたパパが、とっさに助けてくれたから大事には至らなかったものの、意地の悪いママは気絶しているデボラを見て大笑いしたのであった。指を指しながら。


登場人物全員キワモノ


それから何年もの月日がたった。パパは既に亡くなり、デボラがヴィクトリアシアターを受け継いだ。しかし映画館の運営だけで暮らせる時代は終わった。デボラはカネのために平日のフルタイムを図書館で働き、シアターの営業は週末の夜に限るのであった。
図書館の仕事を終えたデボラは家路を急いだ。今夜がその上映日なのである。プログラムは「BLOOD FEAST(血の祝祭日)」だ。えーと、タイトルからも分かるように、ホラーというかスラッシャーというかゴアというか、まあ、そっち系の映画である。


一晩だけの血の祝祭日


なぜならパパがホラーマニアだったからだ。つまり、シアターにはホラー系のフィルムしかないのである。だもんだから上映出来るのは全てホラー。だもんだからヴィクトリアシアターの観客は全てホラーマニア。ということは、ホラーマニアにとってヴィクトリアシアターは天国のようであるともいえる。ヤな天国だなー。


デボラが映画館の鍵を開けようとしているとき、怪しい人物が声をかけてきた。驚いて振り向くデボラ。そこにいたのは怪しい人物などではなく、映写技師として長年シアターで働いてきたトウィグス氏であった。彼はシアターを守るデボラの良き理解者であり、シアターを愛するひとりである。
上映日には必ず駆けつけ自らの手で映写していたが、これはもちろん無料奉仕である。技師にカネを払うほどシアターは儲かっていないのだ。


不気味な映写技師トウィグス氏


上映時間が近づき、客がぽつりぽつりと入り始めた。デボラは受付でチケットを売り、軽食を売る。シアターを続けるためには、なんでも自分でやらなければならない。客席が満席にならなくなって久しい。そして残念ながら、満席になることはもうないだろう。
それでも、見に来てくれる観客がいる限り、私はパパの残してくれたこのシアターを守っていくつもりよ。ホラーしか上映出来ないけど。


すげー地味なデボラ


と、健気に頑張っているデボラの前に悪魔が舞い降りた。おっと、間違えた。ママがシネマの権利書を持って現れた。
「いつまでこんなボロいシアターに縋り付いてるつもり?いまなら高く売れるわよ!ほら、ここに早くサインして頂戴!」なんとママはシアターを売り飛ばそうとしているのである。

デボラが嫌がると、「なんて愚図な子なの!あんたは昔からそうだったわ。もしかしてまだ女優を諦めてないの?ブスのくせに。バカじゃない?あんたは父親と同じ負け犬なのよ。ガハハ!」っつって、デボラをこき下ろすこき下ろす。いっそ清々しいほどの口の悪さだ。


さっさとサインしなさいよ!


ママの毒舌には慣れているつもりだった。私だけをバカにするなら我慢できる。だけど、パパを侮辱するなんて許せない!この糞婆アアアアア!!
デボラは持っていたペンで母親の喉を突いた。


よっしゃ!いい感じだ!!


ぴゅっ、ぴゅるるるる。溢れる鮮血!デボラの反撃に驚くママ!弱々しい足取りで逃げようとするママに追い打ちをかけるデボラ!ついには馬乗りになり、グッサグッサとメッタ刺し!
悪魔め!ママの顔をした悪魔め!恥知らずはどっちだ!クソビッチが!あたしはずっとあんたのことが大っ嫌いだったんだよ!殺したいくらいにね!



ついにやったわ!


ママの返り血を浴びて恍惚となっていたデボラだが、客席が騒がしくなって正気に戻る。開始時間を過ぎても映画が上映されないので、客たちがブーイングをかまし始めたのである。
上映前に買物に出かけた映写技師のトウィグス氏が、まだ戻っていないのだ。もう!すぐ戻るって言ってたのに!このまま客に騒動を起こされたら大変!早くフィルムを回さなきゃ!っつって焦ったデボラは、ママの惨殺死体を放ったまま映写室へ急いだ。おいおい、死体を片付ける方が先じゃねえのか?
映写室には来たものの、デボラは映写技術なんて持ってないもんだからテキトーにボタンを連打する。バンバン叩いているうちに、フィルムが回り始める。
あー良かった良かった。上映中にゆっくり死体を片付ければいいや。とホッとしたのも束の間、スクリーンに映ったのは映画フィルムではなかった。


スクリーンに現れたのは不鮮明なモノクロ映像。どこかの映画館のロビーだろうか?女性がカウンター内でヒマそうにしている。そこへ背の高い痩せた女が現れた。痩せた女はカウンターの女性に書類を見せながら喚いている。そのうちふたりは口論を始め、カウンターにいた女性が痩せた女に飛び掛かった!倒れこんだ痩せた女に馬乗りになるカウンター女性。床にはどす黒い液体が広がってゆく・・・。


なにこの既視感


あれ?これって・・・・?スクリーンに流れたのは、先ほどデボラが犯した惨殺シーンであった。つまり、映画のフィムルではなく、ロビーに設置したった監視カメラ映像を流してしまったのである!なんというドジッ子!


ギャー!間違えた!!どどどどどどうしよう・・・!?デボラは固まってしまった。観客も固まっている。あまりにもモノホンに見えたからだ。って、まあ、モノホンなんだけどね。
客席は固唾を飲んで静まり返っている。そこへ、派手なジャケットを着こんだトウィグス氏が舞台に駆け上がった。


俺に任せろ!


「レディース アンド ジェントルマン!ようこそヴィクトリアシアターへ!当劇場オリジナルのショートフィルムはお楽しみいただけましたでしょうか?我々は先代が残したヴィクトリアスピリッツを倣っていく所存でございます。みなさまのヴィクトリアシアターを、これからもどうぞよろしく。それでは本編をお楽しみください」


みたいな口上を述べたところ観客大喜び!口々に不鮮明なショートフィルム惨殺映像(本当は監視カメラ映像)を褒め称えた。
さすが俺たちのヴィクトリアシアターだぜ!ショートフィルムはまるでモノホンみたいだったぜ!すげえぜ!監視カメラホラーってな新ジャンルの誕生だ!今まで観たどんなフィルムよりリアルだったぜ!

そりゃそうだ。だってマジモンなんだもの。だけどトウィグス氏の口上を聞いて、誰が本物だと思う?


トウィグス氏の機転でデボラは助かった。しかもトウィグス氏はママの死体を片付け、ロビーの掃除までしてくれていた。なんて頼りになる男なんだ!
このアクシデントがヒントとなり、デボラは自分がこれから何をすればよいか理解した。
これよ!これなら売れる!!スナッフフィルム(殺人フィルム)を作ればいいのよ!


ふたりで仲良く編集中


ってことで、デボラとトウィグス氏は次なるスナッフフィルムの制作に取り掛かった。って簡単に書いちゃったけど、要は殺人だ。通常の精神であれば躊躇するだろうが、っていうか、そもそも最初からそんな考えは思いつかないに違いないが、なにしろふたりはホラー専門シアター育ちである。
生贄は映画館でのマナーがなっていない黒髪の女に決めた。女は半裸で地下に追いつめられ、ギロチンにかけられる。しかし頭が大きすぎて首を固定する穴に入らない。良く見ると女はデカいオッパイを持っていた。そこで、これ幸いとオッパイをギロチンにかけた。
オッパイを両方切断したところで、ドレスを着たデボラが一言「上映中はケータイ及びスマホの電源をお切りください。さもないとこの女のようになりますわよ。電源を入れたままの鑑賞は、フランスでも不作法ですの」


このあとオッパイがギロチンにかけられます


本編映画上映前の鑑賞マナーフィルムとして流したところ、これがまた客に大ウケ。客たちは喜んでスマホの電源をオフにした。
まるで作り物には見えない残酷な映像が話題を呼び、ヴィクトリアシアターは徐々に客が増えていった。そうなるとデボラとトウィグスだけでは手が足らなくなる。そこでデボラは、7歳で両親を惨殺して精神病院に入れられていた双子姉妹のヴェラとヴェダを引き取ったり、老婦人の毛皮と宝石を盗むためだけに往来で婦人を撲殺した凶暴基地外男エイドリアンをスカウトしたりして人手を増やす。


18歳まで精神病院で育ったヴェラとヴェダ

凶暴基地外男エイドリアン


新入り3名はそれぞれの仕事を与えられ、お仕着せに着替えてシアターで働いた。そこにはファミリーのような連帯感が生まれつつあった。


絶対に笑わない双子姉妹

あれ?もしかしていい男?

ロケ現場へ向かうシアター御一行様


そしてもちろん、みんな一緒に力を合わせてフィルムを制作する。
次の犠牲者は図書館での仕事仲間だった口うるさい中年女だ。中年女を椅子に縛り付け口を縫い、「上映中の私語禁止」マナーフィルムを完成させる。これもまた客の度肝を抜き、やんややんやの大喝采。

観賞中の私語は慎みましょう


ヴィクトリアシアターは、瞬く間に有名な劇場となった。連日観客が大勢詰めかけ、ローカルTV局が取材に来た。
そしてデボラは、ホラーマニアの間でカリスマホラー女性監督として崇められ始める。


やっと、あたしの才能が認められたんだわ。デボラは思った。でも短編ばっかりじゃ面白くないわね。そろそろ長編を制作してもいい頃じゃないかしら?


デボラは新作長編映画の上映を発表する。上映日には多くのファンがシアターに集まった。ロビーでは乾杯のためのシアター特製ドリンクが配られ、劇場内はさながらお祭りのようだった。客たちはデボラの成功を喜び、これから上映される新作長編映画を楽しみにしている。
パパから受け継いだ劇場が懐かしい幸福感に包まれている。ヴィクトリアシアターに、昔日の活気が戻ってきたかのようだ。


さて観客全員が席に着くと、出入り口は外側から施錠された。観客は閉じ込められたってわけだ。


スナッフフィルムに手を染め、それが日常となっていったデボラは、いつしか長編映画の制作を夢見るようになっていた。つまり、大量殺戮である。
そう、今夜のパーティーは長編映画の上映などではなく、長編映画の制作が目的なのだ。新作映画上映という名目で観客を集め、場内に閉じ込めた上で毒を飲ませ殺していく。その地獄絵図を、デボラがフィルムで撮影する計画である。
なんて素晴らしいのかしら!!これほど壮大なスナッフフィルムが他にあって?この私以外に、一体誰が撮影できると思う?


舞台でトウィグス氏が挨拶し、デボラを呼ぶ。舞台に現れたデボラをスポットライトが照らす。観客の熱気は最高潮だ。
手を叩いて喜ぶ観客を前に、デボラが叫ぶ。


「Enjoy the show!」


出口のない地獄へようこそ。ここはあなたの墓場。でも怖がらないで。あなたが死に行く時の絶叫を、あたしがちゃんとフィルムに収めてあげるから。


-略-


この映画は、映画好き且つホラー好きを「ほんわか」させてくれる映画であった。とはいえ、スプラッター要素も盛り込んであるので、血が噴出するといった派手な演出もポイントごとに押さえており、それでいてスラップスティックコメディにも通じるおかしみを含んでいる。
ホラーといってもシリアスではないので、脳味噌を弛緩させて鑑賞するのに最適だ。テンポ良く、プロットも破綻なく、なにより登場人物が素晴らしい!!特にデボラ!


ローカルTVに出演中


最初は地味で鈍臭そうなデボラだが、フィルム制作に没頭するに従い表情が豊かになり、あれよあれよの間に美しくなっていくのである。外見が整えば自ずと自信も満ち溢れ、凄みさえ身に付けてヴィクトリアシアターに君臨する。ママに怯えていた頃が嘘のようだ。
それほど変身しちゃったもんだから、デボラに恋心を抱く男子が現れてもおかしくない。デボラに恋しちゃう男子、それが男子高生スティーブン君である。


良い子そうなスティーブン君、左側でスクリーンアウトしてるドラァグクィーンが監督(!)


スティーブン君は根っからのホラーファンだ。先代が生きていた頃からヴィクトリアシアターに入り浸っていて、まだ地味だったデボラに「君の父さんがいなければ、僕はホラーを知ることなんてなかったよ!」と感謝の意を伝えている。
って、お前、ホラーなんて知らない方が良かったんじゃね?学校の成績的に。と突っ込まざるを得ないが、まあ、スティーブン君が無邪気だからいいか。


そんなスティーブン君は、デボラの成功を自分のことのように素直に喜ぶ。映画館でデボラに会うたび、なにかしら話しかける姿はいじらしい。思わず応援したくなるほどだ。でもなー、生憎あんたが惚れてる相手は殺人鬼なんだよなー。恋の成就は難しいところだ。


デボラに拍手を送るホラーマニアたち


ところでメリケンのハイスクールでは、ホラーマニアはギークと決まっている。所謂オタクである。ハイスクールヒエラルキーでは最下層にあたる。一番蔑まれているグループだが、スティーブン君は素直で純粋な男子なので友達は多かった。類友だけど。
しかしホラーマニアという嗜好は、社会的に誤解されやすいうえ、攻撃されやすい。


ホラー好きでもいい子なんですよ


スティーブン君のママは、自分の息子がホラーにハマっていることを心配する。もしかして心の闇を抱えているのではないかしら?何か重大な悩み事を抱えているのではないかしら?どうやったら息子の心を知ることが出来るかしら?
心配しすぎてスティーブン君にウザがられるが、息子を心配するのは母親の務めであることを考えると、一般的な母親である。


もうひとり、スティーブン君のホラー好きを心配する人物がいる。スティーブン君のクラスを受け持っている女教師である。

女教師は心配を通り越して、ホラー好きのスティーブン君を異常者と決めつけている。何か問題が起こると、スティーブン君を疑うのである。


その問題というのが、女子学生の失踪である。スティーブン君と一緒にヴィクトリアシアターに出かけ、「トイレに行ってくる」と言い残し失踪したのである。そのときスティーブン君は、なかなか戻ってこない女子学生を探しにロビーをのぞいてみた。

そこには双子姉妹とエイドリアンがいて、何やら掃除をしている様子である。「僕と一緒だった女の子を見かけませんでしたか?」と聞いてみたところ、エイドリアンが「ひとりでタクシーに乗って帰っちゃったよ」と答えた。

ということは、最後の目撃者はエイドリアンなのである。しかしそんな事実をよそに、女教師はスティーブン君が女子学生を拉致監禁したと思い込んでいるのである。


もう殺されました


この頃からスティーブン君は、あることを疑い始めていた。それは、デボラがプロデュースする短編フィルムが真に迫り過ぎているということだ。出演者たちの演技は、演技とは思えない。もしかして・・・?


オッパイ切断編


そしてまた事件が起きた。スティーブン君のギーク仲間、というか、ガールフレンドも失踪してしまったのである!!

ガールフレンドはデボラに会いに行ったまま帰ってこない。なぜだ?

前回もそうだ。女子学生は自分と一緒にヴィクトリアシアターにいて失踪した。ガールフレンドは、ヴィクトリアシアターに出掛けて失踪した。ふたりが失踪した共通項はヴィクトリアシアターだ。

これは一体どういうことなんだ!?


捕まっちゃいました


スティーブン君は意を決して警察に駆け込み、一部始終を話した。刑事と一緒にシアターに乗り込むが、令状がないのでシアターの家宅捜査が出来ない。いますぐに捜索すれば、きっとふたりは見つかるはずなのに。くそう!どうすりゃいいんだ!


そうこうするうち、デボラの新作上映日がやってきた。スティーブン君はギーク仲間とシアターへ赴き、デボラの企みを暴く。他の観客たちは、最初のうちこそスティーブン君の言い分を信じなかったが、シアター特製のドリンクを飲んだ女子が血を吐いて倒れるのを目の当たりにし、デボラの罠にハマっていることを悟った。


劇場内大絶叫


しかしドアは施錠されている!そのうえ双子姉妹がシアターに火を放った!逃げようとするも、女装したエイドリアンとマッドサイエンティストのようなトウィグス氏が行く手を阻む!


凶暴基地外男エイドリアンの女装、女装する必要があるのか?


このままでは死んじまう!観客たちは一致団結してドアに体当たりし、なんとか開いたドアから逃げる。その間にエイドリアンは天井から落ちてきた死体で窒息死、トウィグス氏は撲殺される。


劇場内大混乱


逃げた観客たちを、ヴェラとヴェダが包丁を持って追いかける。が、外へ出た途端、ひるむ。なぜならこの騒動で、警察やらTV局やら野次馬やらが大勢集まっていたからである。そこで双子姉妹の取った行動が素晴らしい!


ふたりは向き合って、お互いにお互いをメッタ刺したのである!!


無表情で刺し合うのがまた良い!

なによ、あんたたち!心配する振りをしながら、本当は本物の殺人が見たいのでしょう?だったら見せてやるわ!ほら!両手で顔を隠しても無駄よ。どうせ指の間から盗み見してるんでしょう?あたしたちは、あんたたちみたいな良識ぶった俗物が大嫌いなの!


といった心意気が伝わって来る、素晴らしいシーンであった。

ふたりは何度も何度も刺し違え、とうとう力尽きて血の海となったエントランス前で息絶えた。



いやあ、このシーンには感動しました


スティーブン君は母親を人質にとったデボラを追いかけ、屋上に駆けあがり、そこで一悶着したのち、デボラは屋上から落下、止めてあったパトカーにダイブし、その壮絶な死を遂げる。

で、デボラ落下地点のそばに、女教師がいたのである。女教師はダイブしたデボラの血を浴びた。それでおかしくなったのか、もともとおかしかったのか分からないが、この事件を引き起こしたのはスティーブン君だと喚くのである。目撃者がたくさんいるのに。


デボラダイブ!血がドバーーー!


スティーブンはホラーを好んでいるので精神が歪んでいる。ほらみたことか!こんな陰惨な事件を起こして!すべてはホラーが悪いのよ!ホラーを見るヤツなんて、みんな異常者なのよ!マリリン・マンソンだってそうよ!彼の教師がちゃんと更生させてやれば、彼もあんな風にはならなかったはずよ!(←意味不明)


ここで、スティーブン君と女教師の立場が一変する。つまり、「異常者」の立場だ。

いままでは、周囲(といっても大人たち)から心配されるホラー好きの成績の良くない男子高生と、ホラー好きな彼を潜在的異常者とみなし、それを更生しようとする少々頭の固い女教師という位置付けだったはずだ。

しかし現状は、デボラの真相を暴き、人質に取られた母親を助けるため、なにものをも恐れずデボラに向かっていった勇気ある青年のスティーブン君と、ホラー好きだというだけで口汚く罵る女教師。

異常者はどちらであろうか?この鮮やかな対比は見事である。


だが女教師の考え方は、一般的な良識的人物の考え方を集約している。彼らは自分の良識を信じて疑わず、自らが率先して魔女狩りを行っていることに気付かない。


マダムは不健全なものが好きだが、不健全を楽しむためには、健全な精神が必要であると思っている。

「ホラー・シネマ・パラダイス」は、そこのところを巧く代弁した稀有な映画であろう。

ちなみに監督は、サンフランシスコでブイブイ言わせているドラァグクィーンのPeaches Christさんだそうだ。


このひと


この映画では観客として登場している。セリフもあるし、女装エイドリアンにウィンクしたりして、スゲー目立ってた。

※Peaches Christさんについては、「ホラーSHOX 呪 」さんをどうぞ。かなり詳細で面白いです。


そんで、凶暴基地外男エイドリアンだが、普通にしてりゃそこそこいい男なんじゃないの?なんでこんな映画に出てんの?イケメンの無駄遣いってこのこと?と思って調べてみると


仲良さそうじゃねえか


どうやらマリリン・マンソンと交友関係にあるらしい。うーん、そういうことか。



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