バイオレンスと純愛の美しきケミストリー DRIVE | 不思議戦隊★キンザザ

バイオレンスと純愛の美しきケミストリー DRIVE

暗い部屋で一人の男が携帯で話している。
「逃走経路は任せろ、その5分間に何が起きようとも待ってる、だが5分を過ぎたら面倒はみない、銃は持たない、運転だけだ」
男は指定された時間に、指定された場所へセダンで向かう。時計をセットし、警察無線を傍受しながら客を待つ。過ぎゆく時間にじりじりとしていた瞬間、建物の裏口が開いた。ボストンバッグを持った覆面の強盗が、セダン目掛けて走ってくる。
後ろのドアを開け、強盗を待ち受けるドライバー。警報が鳴り始める。強盗を乗せたセダンは夜のL.Aを縦横に疾走する。

 

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卓越したドライビングテクニックを持つドライバーは、強盗の逃走を請け負うという闇の仕事人であった。
ただし闇の仕事は夜に限り、昼間はハリウッドのスタントマンをする傍ら、車の修理工場で働いている。

 

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ある日、マンションのエレベーターでひとりの女と出会う。女はドライバーの隣りの部屋に引っ越してきた人妻だった。言葉など一言も交わさなかったが、ドライバーは恋に落ちてしまった。

 

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また別の日、マーケットの駐車場で隣りの人妻を見かけた。子供を連れた女は車が故障して困っているようだった。ドライバーは声をかけた。
女はアイリーンという名前だった。亭主は服役中だという。ぎこちない会話から始まった二人は、徐々に親密になっていく。といっても、激しい恋が始まったわけではなく、お互いに控えめな、淡い恋心を秘めている恋だ。
アイリーンの6歳になる息子もドライバーに懐き、三人はまるで家族のような関係になっていく。

 

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休日には三人でドライヴに出掛け、夜は一緒にテレビアニメを見、疲れて眠ってしまった息子を部屋に運ぶ。ドラマティックな事件など起こらない日常に奇妙な安心感を覚えたドライバーは、そういった生活に幸福を感じ始めていた。

 

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この小さな幸せが永遠に続けばいいのに、と思っていた矢先、アイリーンの亭主、スタンダードの出所が決まった。スタンダードが何をやって捕まったのか、アイリーンは何も語らないし、ドライバーもそれについて聞こうとはしなかった。

彼女は人妻なのだ。亭主が戻ってきたら、アイリーンと出会う前の以前の生活に戻るだけだ。


しかし「ありふれた日常の中の幸福」を知ってしまったドライバーは、もう以前のドライバーではない。
ひとりの女を密やかに愛してしまったのだ。それも、どうしようもないくらいに。

 

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スタンダードが戻ってきてしばらくした後、ドライバーはアパートの地下駐車場で、スタンダードが血だらけで倒れているのを発見する。放っておけないドライバーは、何があったか理由を聞きだす。
監獄内での借金を盾に、マフィアが無理やり仕事を押し付けてきたという。つまり、強盗を強要されたのである。また悪事に手を染めるのは嫌だが、断れば家族に手が及ぶだろう。
その言葉を聞いたドライバーは、スタンダードに申し出る。「俺が運転を手伝おう」

 

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指示されたターゲットは質屋だった。真昼間に売上金を狙う。助っ人として、赤毛の女がマフィアから紹介された。ドライバーがセダンを運転し、スタンダードと赤毛女が強盗役だ。金を盗んで、あとは逃げるだけだ。

 

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ただ運転だけを手伝って、上手く強盗が終わればそれでいいと思っていたドライバーだが、強盗が失敗し、スタンダードがショットガンで撃たれたとき、ドライバーの本能が警告する。これは仕組まれた罠だと。
ここからドライバーとマフィアとの、血生臭いバイオレンスが始まる。


ホテルの一室に隠れたドライバーと赤毛女だったが、赤毛女の連絡でマフィアに居場所がばれてしまう。赤毛女がスパイだったことに気付いたとき、マフィアはもうドアの外まで来ていた。バスルームの窓が割られ、ショットガンの銃口が火を噴き、赤毛女の頭が吹っ飛ぶ。

 

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血の海の中、ドライバーは冷静にマフィアを仕留め、ショットガンを奪い、別のマフィアに向けて至近距離からぶっ放す。ドライバーの顔に返り血の雨が降る。
このドライバー、只者じゃねえ!一体何者だ?

 

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ドライバーとマフィア、仕組まれた罠、絡まった糸がするすると解けてゆくに従い、ストーリーは一気にスピードを加速してゆく。
アイリーンと一緒のときは、あんなに優しそうに笑っていたドライバーは、もう笑わない。
バイオレンスの世界に踏み込んでしまったドライバーは、残虐性を露わに、血飛沫を浴びながら容赦なく敵を追い込んでゆく。

 

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スタンダードが強盗犯として殺され、警察から一日事情聴取を受けたアイリーンは、疲れきっていた。ソファでは息子が眠っている。不意に呼び鈴が鳴った。ドアを開けるとドライバーが居た。

「話したい事があるんだ」
ドライバーは、言葉少なにスタンダードがマフィアに脅されていたこと、自分も強盗の運転手として関わったことをぽつぽつと語る。盗んだ金はいま自分が持っていて、それを全て渡すから逃げろと告げる。アイリーンは何も言わず頬をひっぱたいた。
それでもドライバーは、アイリーンに語り続ける。この街から早急に逃げろと懇願する。なぜならスタンダードが殺され、自分も狙われている今、アイリーンと彼女の幼い息子にも危害が及ぶことは明白だからだ。しばらく身を隠し、どこか遠い田舎で生活を始めて欲しい。

そして、出来るなら自分も一緒に・・・・。


エレベーターの扉が開いた。二人は何も言わずエレベーターに乗り込んだ。男が一人乗っていた。男のジャケット下から銃のグリップがちらりと覗く。ドライバーを狙う刺客だ。それに気付いたドライバーは、アイリーンを引き寄せてキスした。

 

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これがこの映画唯一のラブシーンだ。唇が離れたと同時に、ドライバーは刺客の男に襲いかかる。

エレベーターが地下に着いたとき、ドライバーは男の頭蓋を潰していた。それを目の当たりにしたアイリーンは一言も発せず、ドライバーを呆然と見つめたまま、エレベーターを降りる。

扉は、ドライバーの目の前で閉じた。

 

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惚れた女の目の前で人を殺してしまった。しかも頭蓋を潰すという残虐な手法で。ドライバーは何もかもが終わったと思った。金も命も惜しくはない。ただひとり、アイリーンだけが生きる希望だったのに。その希望も尽きてしまった。
しかしまだやり残したことがある。罠を仕組んだ蛆どもを一掃しないと、アイリーンは安心して暮らせない。
ドライバーは最後の対決に向かった。

 

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指示された中華料理屋で、相手は待っていた。「金はどこだ?」「車のトランクにある」「案内しろ」
金の入ったボストンバッグを渡す瞬間、相手がドライバーの脇腹を刺した。しかしドライバーは動じず、やはり隠し持っていたナイフでやり返す。しばらく揉み合い、とうとうマフィアが倒れる。ドライバーはボストンバッグからこぼれおちた金に一瞥さえせず、血まみれの腹を押さえ、セダンに向かって歩く。

 

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アイリーンは昼間にドライバーからかかって来た電話を気にしている。受話器の向こうで彼は言った。
「これから遠い場所へいく。もう帰れない。君と一緒に過ごせたことが一番の幸せだった」
アイリーンは何も言えなかった。黙って彼の声を聞いていた。

 

ドライバーは、夜のL.Aを疾走する。彼はどこに向かっているのか?

遠い街か、それとも愛する女のいる場所か。


―完―


とにかく主人公のドライバーがめっちゃクール!!
とにかく寡黙!映画史上、最も科白が少ない主人公といってもいいかもしれない。その上、常に無表情で感情を露わにすることもない。どこから来て何をやっていたのか、ドライバーの過去も名前も最後まで明らかにされない。
ただ運転が上手いだけのドライバーかと思っていたら、途中から超エグいバイオレンスでとんでもない強さと残虐さを発揮する。非っ常~~にミステリアスな主人公である。そんな超硬派な主人公が、惚れた女の前だけで見せる優しい笑顔。
ちょっと、これって、反則じゃない?女からしてみりゃ、惚れるしかないじゃん!

 

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惚れた女を守るために危険な賭けに飛び込んだ主人公は、たったひとつ、アイリーンに対して小さな嘘をつく。
「スタンダードに手伝えって言われて運転だけ手伝った」と。これは最高に優しい嘘だ。

 

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二人の出会いから、秘めた恋が静かに始まる前半と、かなりエグいバイオレンスが炸裂する後半のバランスが素晴らしい。
極限まで削ぎ落とされた科白、シャイな男の恋心、アイリーンのために復讐すればするほど募る孤独感。そして文字通り出血大サービスなバイオレンスの応酬。

終わり方も一筋縄ではいかない。少なくともバッド・エンドじゃない。と、思いたい。

観る人それぞれによって終わり方も違うだろう。

 

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シリアスなバイオレンスが平気な人に是非観ていただきたい。惚れるから!!絶対、惚れるからっ!!

 

ドライバー役のライアン・ゴズリングが最高にクール!シャイで寡黙な男が命を掛けて惚れた女を守るってストーリーが、ベタだけどやっぱりいいのかしらね?
それからもうひとつ。ドライビング・テクニックも「いい男」に必要不可欠な条件であろう。
いくらイケメンでも、運転が下手だと全て台無し。いくら高級な車に乗っていても、運転が下手だと全て台無し。


シャイで寡黙な男たちよ!いますぐ免許を取得し、ドライビングテクニックを磨くんだ!