皆さまこんにちは、
木村義雄です。

新型コロナウィルスの流行は
全世界で被害が及び、未だ終息の兆しは見えません。
今年1年はまさにコロナ一色となりました。

そんなコロナ禍で、日本でも
クローズアップされたのが
「働き方改革」です。

この「働き方改革」は、
感染症予防の観点からテレワークが
中心となった新しいワークスタイルに
どのような影響を及ぼしたのか。
今年最後のメルマガは、
「働き方改革」について
私なりの見解と意見をお伝えいたします。

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コロナ禍から生まれた
「テレワーク」という新しい働き方
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新型のウィルスの感染拡大は
労働問題にも大きな影響を与えました。
コロナ禍がなければ本年(2020年)4月の
新労働基準法完全施行による
長時間残業労働の罰則付き規制により
従業員が残業できなくなり、深刻な人手不足が
惹起することが予想されていました。

しかしながら予想外のコロナ危機の長期化が
新労働基準法施行による人手不足を
吹き飛ばしてしまいました。

コロナ禍で注目された新しい働き方は
感染症予防の観点から生まれた、
出社をしないで自宅で仕事する
「テレワーク」です。

そしてこれからは勤務形態が今までの
労働時間の長さによる働きの評価ではなく
職務の成果によって評価される方向になって来ました。

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同一労働同一賃金は実現できるのか
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ところで、ここ数年の日本の労働市場の課題は、
リーマンショック後に於いて特に顕著になってきた
非正規雇用の増大です。

時の内閣の『非正規雇用を正規雇用に』の
掛け声とは裏腹に、現在では
全体の4割は非正規雇用労働者で占められています。

その中で同一労働同一賃金の問題が
クローズアップされてきました。
そもそもわが国では同一労働同一賃金は
全く不可能な話です。

日本には都道府県別の最低賃金制度が
存在しているからです。
欧米は日本と違い全国一律の
職業別最低賃金制度を導入している
ところが主流ですが、日本はちがいます
(東京と地方では時間給200円以上もの格差がある)。

日本国内でも賃金の高い大都会への
集中回避のためにも全国一律の最低賃金制度を
導入せよとの意見もありますが、
多くの中小企業者、特に地方の中小零細業者が
急激に賃金上げを強制させられれば
コスト高によって経営が不可能になるとの
反対意見が多くあり難航しています。

そもそもこのように同一労働同一賃金
といっても、まさに
「言うは易く行うは難し」
といった状態なのです。

そこで今回の働き方改革法案でも
全面的な同一労働同一賃金ではなく
企業内での正規職員と非正規職員との
同一労働同一賃金を実現するという
範囲にとどめたのです。

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最高裁判所の判決は
現状維持とも言える内容に
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ところが日本が従来の年功型労務管理
すなわちメンバーシップ型雇用
(職務内容に限定はない)を続けていくのか、
あるいは コロナ禍を契機として
労働時間にとらわれない欧米型のジョブ型雇用
(採用時にあらかじめ 職務記述書に基づいて仕事を限定する雇用形態)
へ舵を切るのか、このタイミングで、
日本の最高裁判所は 本年10月(2020年)
働き方改革の目玉の1つである
同一労働同一賃金を半ば否定する判決を
下しました。

すなわち、その判決の中身は交通費など
の諸手当は同一労働同一賃金を認めたものの、
肝心の賞与と退職金に関しては
同一労働同一賃金を認めず 、
正規採用職員と非正規採用職員間の
格差の存在は不合理ではないという
判決を下しました。

最高裁判所があえて意図したとは思われませんが
結果として日本型雇用の伝統を守った形となり
コロナ禍で一気にテレワークそして
欧米型の成果主義への移行の流れに
歯止めをかけたようになりました。

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正規雇用・非正規雇用の格差が
産む将来への不安が浮き彫りに
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この度の最高裁判決は女性にとって、
特に未婚非正規の女性にとっては厳しい判決でした。
最近の潮流である今後も単身で暮らして
行こうと考えている非正規雇用女性社員に対して
暗雲を投げかけた旧態以前の判決との非難もあります。

新しい働き方改革の方向性に
ブレーキをかけたとも言われています。

退職金でも勤続20年以上になりますと
正規社員は優遇されています。
退職金課税額が大幅に軽減され、
より長い勤続年数ですとますます優遇されます。
今後は非正規社員の定着がますます難しくなり、
少しでも給料の高い企業への転職が増えるなど
不安定化が進むと思われます。

一方では退職金制度を廃止する企業が増えて来ます。
企業決算において退職金は負債と
カウントされ株価が下がる原因にもなります。
そうなると給料の中に退職金も含めて
前払いする企業が今後増加すると思われます。

いずれにしても、今度の最高裁判決は、
長時間労働重視の現在の
メンバーシップ型雇用制度を守り、
立法府が意図した同一労働同一賃金に対し
疑問符をつけ、新しい社会潮流であるテレワーク等
によるジョブ型雇用の広がりにもブレーキを
掛けかねないものと言われています。 

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国民や労働者のためにも
格差是正をしっかりと議論すべき
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立法府が意図した同一労働同一賃金が
なぜこのように難航するかの背景は、
そもそもこの提案者が労働サイド、
すなわち連合からの提案でした。

労働側がその実行を経営側に
押し付けたものでした。

最高裁はこの度の働き方改革は
内容が労働サイドに有利過ぎると
感じていたのかもしれません。

しかし、正規と非正規の格差の拡がり過ぎは
国家全体としても放置するわけにはいきません。

非正規低所得者にはMMT理論による
ベーシックインカムなどによる本格的な
格差是正策を真摯に議論し、
実現を図らなければならない
段階に来ていると思われます。

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