今週の気になるニュースは、先月の日米首脳会談で合意した「物品貿易協定」(TAG)について解説をしたいと思います。


TAGとは、モノの輸出入にかかる関税について定める協定で、農産品や工業用品などの幅広い貿易品目を対象にした協定です。しかし今回のTAGについて、私は、二国間の自由貿易協定( Free Trade Agreement、FTA)の始まりであると見ています。



それではこれから、今後の日本の置かれる立場をみながら解説したいと思います。


初めに、二国間の自由貿易協定( Free Trade Agreement、FTA)を取り巻く歴史について、解説します。



経済産業省のホームページ(http://www.meti.go.jp/main/60sec/2015/20151109001.html)

にわかりやすく説明されているので、詳細はそちらをご覧いただくことにして、私からは簡単に説明をします。



世界の貿易ルールは、世界貿易機関(WTO)で161か国と地域の全会一致が原則でしたが、先進国と途上国で意見の対立が起こり交渉はまとまりませんでした。

そこで二国間での交渉が始まるのです。


しかし二国間交渉は非効率なので、地域でまとまって交渉する流れが起こり、日本は環太平洋を含む12か国が参加する環太平洋パートナーシップ(TPP)に参加することになります。


太平洋戦争後の日本は、経済も外交も安全保障もアメリカの傘の元、大きな試練もなくきました。


ところがアメリカはトランプ政権になり、2017年1月にTPPからの永久離脱を発表しました。今後は二国間貿易交渉を進め、自国の利益を守るというのです。



日本をはじめ環太平洋諸国は、アメリカとの二国間貿易交渉を避けてきました。

それは力の差が歴然だからにほかなりません。

二国間ですと圧力に屈しざるを得ないので、多国間交渉をすることでアメリカの巨大な力を抑えようとしてきたのです。


ところが事態は変わり、アメリカは韓国やEUと次々に交渉を始め、日本もいつまでも二国間貿易交渉を避けて通るわけにはいかなくなったのです。


乱暴な言い方かもしれませんが、今回安倍首相が物品貿易協定に合意したことで、日本は避けたかった二国間貿易交渉の第一歩を踏み出させられてしまったわけです。

外堀を埋められてしまったのです。

今回は「物品貿易協定」(TAG)ですが、いずれ全ての貿易が二国間交渉の方向に進んでいくのではないかと懸念されます。


しかし政府の対応が悪いとは言えないのです。

それは皆様もご存知の通り、外交問題は大変難しく、経済の問題だけでなく安全保障問題にも関わっているからです。

日本にとって一番大切なことは、安全保障問題です。いつまでアメリカが日本を同盟国として守ってくれるとは思いませんが、そこを見極め取り組まなければならないのです。

また周辺国との友好関係も大変重要です。

現在南シナ海では中国の領土権問題が起こっています。

南シナ海は日本のタンカーが通行する重要な輸送路ですが、南シナ海領土権問題の影響で、今後通れなくなる可能性も出てきています。

日本はアセアンの中で孤立しないように、この問題に限らず周辺国そして近隣諸国の問題にも目を向け上手に向き合う必要があるのです。


日本の外交の基軸は、
今までの日米同盟から、
自国は自分達で守らなければならないという局面に来ていることを、国民の皆さんに伝え、共に考えていきたいと思います。