ルールとマナー | 知財弁護士の本棚

知財弁護士の本棚

企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 新しい年になりました。と言っても、もうすぐ1月も終わりか・・。


 昨年、最も興味を引いたニュースと言えば、ゴルフの全米オープンでフィル・ミケルソン選手が動いているボールを故意に打ったというニュース。


 そんなニュースあったかという人もいるでしょうが・・。


 「強風で乾いたグリーンはボールが止まりづらく、選手たちは悪戦苦闘。カップから遠く離れた位置で次の一打を打つよりは、罰を受けてもカップ近くでプレーした方がいい、との判断だったようだ。」(2018年6月18日 日本経済新聞)


 ルールどおり2罰打の裁定となったが、メディアやファンからは「失格では」との声もあがったという。


 皆さんはどう思いますか?


 思うに、スポーツとかゲームというものは、ルールが明確であるからこそスポーツやゲームとして成り立つものである。ルールがあるからこそ、戦術が生まれる。


 ルールブックで「2罰打」と明記されているのに、「失格では」という人がいるのは私には信じられない。


 ゴルフがマナーを重んじるスポーツだというのは、もちろん知っている。たしかに、ゴルフの入門書には、ルールよりマナーが大切と書いてある。


 しかし、ルール違反ではない以上、失格ではないかというのはおかしい。ゴルフはスポーツではないのだろうか、と思ってしまう。


 これと対照的なのがサッカーだ。欧州の監督の対談記事を何かで読んだが、「なぜ日本の選手はペナルティーエリアでわざと転ばないのか」などと言っている。


 これはこれで、どうかなと思うのだが・・。フェアプレイを重んじる日本人、勝てば何でもありの欧州サッカー。


 さっきと言っていることが違いますか?難しいですねえ。


 将棋では、昔は「卑怯な戦法」「卑怯な手」という言い方もあったが、今はそんなことは誰も言わない。ルールの中で何をしても自由だ。しかし、だからと言ってマナーが軽視されているかと言うと、もちろんそんなことはない。


 将棋雑誌で昔読んだ話。奨励会の対局だったか、龍の王手で自玉が詰んでいるのに、投了しないで、無駄な合い駒をした人がいた(手数が2手伸びる)。その理由を対局後に問われると、「相手が龍を裏返す反則をする可能性がある。逆転の可能性が百万分の一でもある以上は諦めるべきでないと思った」とのこと。


 どう思います?駄目でしょう。「最後まで諦めない」の意味をはき違えている。そんな人と、私は指したくない。悪あがきをするのはコンピュータだけにしてほしい。


 まあ、しかし、仮に公式戦でそれ(無駄な合い駒)をやったとしても、もちろん反則ではない。ルールではなくマナーの問題だ。(ちなみにプロの公式戦で、成銀を裏返すという反則をした例がある。だから龍を裏返して飛車に戻す反則というのも、あり得ないことではないのだが・・。)