現代民事判例研究会編「民事判例Ⅰ 2010年上期」 | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 日本評論社より、10月20日に現代民事判例研究会編「民事判例Ⅰ 2010年前期」が出版されます。


 現代民事判例研究会は、上智大学の加藤雅信教授(民法)が主催する私的な研究会で、その中に「知財判例研究会」があります。


 私も知財判例研究会のメンバーになっており、このたび出版される上記の書籍に判例評釈を寄稿しています。


 題材は知財高裁平成22年2月24日判決・平成21年(ネ)10017号です。職務発明に係る特許を受ける権利の二重譲渡が問題となった事案で、判決は民法の背信的悪意者論を適用しているのですが、背信的悪意者論はあくまで不動産の二重譲渡を念頭に置いた議論であり、特許を受ける権利の二重譲渡の場合は、不動産と同じに考えることはできないのではないか、というのが私の主張です。なぜなら、不動産と異なり、出願前の特許を受ける権利を譲り受けた者はただちに対抗要件を備える(=出願をする。特許法34条1項参照)べきだとは言えないからです。


 また、最近の民法学では、そもそも背信的悪意者論自体が強く批判されています。


 今後も半年に一回、研究会を開催し、半年分の判例をまとめて研究し、成果を出版していく予定です。