ジョイント・ベンチャーにおいてtag-along rightが規定されることがある。tag alongとは「一緒についていく」「しがみついていく」というような意味で、たとえば60%の株主Aが第三者に自己の持分100株を売ろうとするとき、40%の株主Bがtag-along rightを有するとは、100株のうち40株はBの所有株の中から売れるということである。
国際取引法部会でいつもお世話になっている山田勝重先生の「はじめての英文契約書 」では「売却参加権」と訳してある。なるほど、たしかにそういう意味である。
これに対してdrag-along rightというのがある。drag alongとは「引きずり込む」というような意味で、平たく言うと「俺が売るからお前も売れ」と言える権利である。たとえば60%の株主Aが第三者に自己の持分60株を売ろうとするとき、Aがdrag-along rightを有するとは、40%の株主Bに対して、40株を同じ買主に売却することを強制できるという意味である。
山田先生の本では「売却強制権」と訳してある。これなら上品だ。
tag-along rightとdrag-along rightとはセットというわけではない。drag-along rightはラジカルであり、むしろtag-along rightのみ規定する方が普通ではないかと思う。
はじめて聞いたときは「タガロン、ドラゴン」(アメリカ人の発音はこう聞こえる)って何?と私もチンプンカンプンであった。
最近は日本語での英文契約の立派な解説書も多く出ているが、first refusal rightについては説明していても、tag-along rightとdrag-along rightまで説明しているものは少ないように思われる。