著作権法28条の意味 | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

著作権法

第二十八条 二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。



この規定について、「原著作物の著作者は、二次的著作物を自由に利用できるのか」というご質問を受けました。


これは誤解です。たとえば原著作物を「日本語の小説」、二次的著作物を「それを英訳した小説」とします。28条の意味は、英語版の著作権者は、英語版を利用する(複製する、あるいは映画化する)のに原著作物の著作権者の許諾が必要であるということです。また第三者から見ると、日本語版を利用するには日本語版の著作権者の許諾が、英語版を利用するには日本語版の著作権者と英語版の著作権者の両方の許諾が必要です(ただし契約実務では、原著作物の著作権者の許諾まで取るのは大変なので、二次的著作物の著作権者の表明保証をもって替えることが多いです)。


28条は決して、日本語オリジナルの著作権者が英語版を自由に利用できるという意味ではありません(英語版の著作権者の許諾が必要です)。


要するに「複製権」というのは他人に対して「勝手に複製するな」と言える権利なんですね。「自分が自由に複製してよい権利」ではないのです。