昨年12月の特許制度研究会の報告書については、以前の記事 でも少し触れました。
その中で、「登録対抗制度の見直し」の議論について気になったことがあります。
現行法では、通常実施権は特許庁に登録することにより、第三者(特許権の譲受人や、特許権に対する質権者、特許権に対する差押債権者など)に対抗できます(特許法99条1項)。
しかし、登録制度は使いにくく、利用率が極めて低いことは周知のとおりです。
そこで報告書は
(A案)対抗要件の緩和:特許発明の実施・準備行為の立証により、第三者に対抗可能とする
(B案)悪意者等対抗制度:悪意(又は重過失)の第三者に対抗可能とする
(C案)当然対抗制度:通常実施権の存在の立証により、第三者に対抗可能とする
の3案をあげ、当然対抗制度について検討を進めてはどうかとしています。
当然対抗制度への賛成意見は、導入の必要性と許容性の議論がありますが、許容性の議論の柱は次の部分かと思います。
「特許権を譲り受けようとする第三者は、当該特許権について通常実施権が存在するか否かについて調査する義務があると考えるべきであるから、通常実施権の存在を知らずに特許権を譲り受けたとしても、そのような第三者は保護する必要がない。」
「特許権の取引は制度に精通する業者間で行われていること、現状の実務においてデュー・デリジェンスが実施されていること、デュー・デリジェンスにおける回答の真実性は契約責任等によって担保できることからすれば、取引の安全を害するとは考えづらい。さらに、特許権の取引後、不測の通常実施権者が存在したという場合の手当ては契約で対処しておくというのが実務の常識であるから、当然対抗制度を導入すべきではないか。」
しかし、私の経験上、事業譲渡とともに特許権を譲渡する場合にはデュー・デリジェンス調査をしますが、特許権のみを譲渡する場合は、調査というほどのことはしないと思います。また、報告書が言っているような「不測の通常実施権者が存在したという場合の手当ては契約で対処しておくという」「実務の常識」は存在しないと思います。
報告書の前提とする事実認識に偏りがあり、問題があります。