人類の名誉を守った男 | 知財弁護士の本棚

知財弁護士の本棚

企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 将棋竜王戦第5局で渡辺さんが勝ち、決着は次局以降に持ち越しに。


 渡辺明竜王と言えば、最強ソフト「ボナンザ」との公開対局に勝ち、新聞の見出しに「人類勝つ」と書かれた人。(詳しくは「ボナンザVS勝負脳 」を参照されたい。)


 出だし3連敗したときはもう駄目かと思ったが、その後2連勝して巻き返した。しかし将棋界の歴史に3連敗後4連勝というのはないから、結局は羽生が勝つと、みな思っているだろう。しかし渡辺さん本人はそう思っていないはず。そうでないと困る。


 もっとも、教養深く実社会とのつながりを常に意識している羽生さんに対して、渡辺さんと言えばマンガばかり読んでいるというイメージが強い。私は個人的には渡辺さんを応援しているのだが、もうちょっと本を読みなさいよとは言いたくなる。


 将棋の強さとマネジメント能力は本来関係ないが、将棋界では将棋の強い人が会長や理事になって運営を担う慣習になっている。だから渡辺さんも将来的には運営にあたる人。そういう人がマンガばかり読んでいてはいけない。今はタイトルを持っているからいいが、無冠になったとき、何を言われるかわからない(この国の総理大臣を想起されたし)。


 なお渡辺さんがボナンザに勝ったのは2007年3月であるが、その後のコンピュータ将棋の進歩はすごい。アマチュアトップレベル(つまり並みのプロ棋士レベル)と戦って勝ったり負けたりというところにきている。ボナンザが初めて採用した「全幅探索」は今は当たり前になった。評価関数の進歩や、ハードウェアも専用のものが開発されており、近い将来に「七冠王に香車を引いて勝つ」という宣言まで出ているとか。


 オセロなどは既に人間よりコンピュータの方がずっと強いのであるが、将棋もそうなるのか。ただでさえ少ない競技人口がなおさら減るのではないか心配だ。