昔、予備校で聞いたクイズ。アジアには先進国が2つある。1つは日本。もうひとつはどこか?
「韓国」または「トルコ」と答えた人は△。正解はイスラエルだそうである。それ以外の解答は×。
しかし先進国って何なのだろう。一人当たりGDP?それでは石油が出て人口が少ないだけのブルネイとかも先進国になってしまう。科学技術のレベル?中国は宇宙開発、バイオなど部分的には日本と同等か日本より進んでいるし、インドの医学は日本よりはるかに進んでいるという。突き詰めると、言論の自由を中心とする基本的人権が保障された近代民主主義国家か否かということではないだろうか。
でもイスラエルでは、人口の80%を占める「ユダヤ人」以外は法的な権利がいろいろ制限されているらしい。(これはかなり婉曲的な表現であり、これ以上は恐ろしくて書けない。)
「ユダヤ人」とはユダヤ教徒のことであると、広河隆一「パレスチナ(新版) 」(岩波新書)の旧版を昔読んで理解していたのであるが、新版を改めて読んで見ると、「ユダヤ人」の定義はいろいろ議論があり、現在のイスラエルの法律では①母親がユダヤ人または②ユダヤ教徒であって他の宗教の信者でない人がユダヤ人であるとのこと。
一方、民族としてのユダヤ人というのも、たしかに存在する(阿刀田高「旧約聖書を知っていますか
」)。
ややこしいことに、ユダヤ民族ではないが、政治的な理由(キリスト教徒とイスラム教徒の板ばさみにあって生き残るため)から旧約聖書の時代よりずっと後世にユダヤ教に改宗した一派というのがあり、彼らをアシュケナージというそうだが、現在のイスラエル国家では、こちらが多数派だそうである。(ちなみに、アシュケナージと言えば有名なピアニストの名前だ。)
岩波新書の方は近代史と現状を知るのによいし、阿刀田氏の本は神話と古代の歴史を知るのによい。もっとも、阿刀田氏の本は気楽なエッセイとして楽しめるが、広河氏の著作は重い。現在を扱っているだけに生々しく、思わず目をそむけたくなる。死体がたくさん転がった写真も載っている。しかしこれが世界の現実だ。
たまにはこういう本を読むことも必要かと思う。平和なこの国で生きているということがどれだけありがたいかを知るべきだ。それが分かれば、つまらないことに不平不満を言っている場合ではないことも分かるのではないか。