サッカー審判TIPS(732) 不用意な言葉 | サッカー審判KenKenのブログ

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サッカー審判TIPS(732) 不用意な言葉

 

恥ずかしながら自分の失敗談を書く。ご参考になるでしょうか。

 

昨年12月。とある試合の主審を担当。

赤vs白の試合。

赤が敵陣センターサークルを過ぎたあたりでファウルを受け、笛を吹いた。ファウルがあった地点にボールが投げて戻されてきた。手で受け取った赤の選手がボールをポンとピッチに落とし、ボールは一度小さくバウンドした。(ピッチは人工芝)

ボールは地面に接触していたが完全に静止したか確認できない。たぶん静止したであろう微妙な状態でボールが前方に蹴られた。近くにいた白の選手が「やりなおし!」とアピールしたが、私はそのまま流した。

するとそれが見事なスルーパスになり、赤のトップに渡ってなんとシュートが決まってしまったのだ。

くだんの白の選手は「ボールが動いていた」と食い下がってきたが、「いえいえ、あのくらいは大丈夫」と答えた。しかしこれは不用意な発言だった。

 

するとセンタースポットにボールを置く際にその選手は味方を振り返って「みんな、今くらいのボールは止まっていることになるからちょっとくらい動いていてもフリーキック早く蹴っていいからな」と私の言葉尻をとらえて言った。

私はカチンと来た。その選手を呼んで注意を与えようかと思ったが、「だってあれくらいは大丈夫なんでしょ」と反論が来て面倒くさいことになることが予想され、そのあとどのように話を展開してまとめようか急には思いつかなかったのでそのままキックオフの笛を吹いた。

 

さて、この場合どうすべきだったか。

 

(1)キックオフ前のその発言に対して主審の判定(やり直しさせなかったこと)に対する異議の表明とみなし注意。(警告するまでもないかな。)あるいはこの異議と侮辱的な発言の合わせ技で警告、とする。

 

(2)「あのくらいは大丈夫」ではなく「私には止まって見えましたよ」としらっと返事をすればよかった。ボールが動いていたのでやり直しを命じることができるのは審判なので、その審判が止まっていたと判断したのだということであればそれ以上反論はできない。

 

(3)ボールが完全に止まっていることが確認できなかったのですぐに笛を吹いてやり直しをさせる。

 

時系列に遡って対応を書いてみたが、(1)→(3)の順に後手となる。

やはり再開のキックに対して「あれ?」と思った自分の第一印象を信じて笛を吹き、やり直しをさせるべきだった。つまり(3)とすべきだった。

白の選手に指摘されてやり直しをさせたという形にしたくないという変なプライドが働いたのかどうかわからない。しかしたとえ周囲からそのように見えたとしても自分の直感を信じて笛を吹くべき。

 

だいたい、クイックで蹴ろうとする場合は通常は手や足でいったんボールを押さえてそれからキックをする。

地面に置いたボールを蹴る場合、落としてあるいは置いてから蹴る方向を見て助走して蹴るケースが多いので数秒の時間があり誰が見ても静止している。

今回のようにクイックで蹴る場合にいったん押さえる動作をしないで蹴った場合は完全に静止していないと少しでも思ったら躊躇なく笛を吹こうと思った。

 

私がこの教訓を得るために赤チームは1点を失ってしまうことになり申し訳ないと思う。

ただこの1点の有無は勝敗には関係なかったことと、試合終了後にその白の選手が握手を求めてきたこと(グータッチだが)が幸いであった。