サッカー審判TIPS(714)
ラグビー日本代表の快進撃
サッカーの話ではないが、ラグビーの話題で思うところがあったので書いてみた。
ラグビー日本代表がワールドカップで快進撃を遂げ、初めてベスト8に進出し、日本中がハッピーな気持ちとお祝いの雰囲気に包まれている。
私個人としても日本代表が2015年のワールドカップ以降急速に力をつけてワールドカップ開催国に相応しい成績を残したことは驚くとともにとても誇らしい。
ということを踏まえてもう少し考えを掘り下げてみた。
決勝トーナメントに進み南アフリカとの準々決勝。グループリーグでの日本代表の素晴らしい攻撃も防御も通用しなかった。これはもちろん南アフリカの実力が日本を上回っていたこと、日本の戦い方をしっかり研究してきたこと、そして初めて決勝トーナメントに進んだ日本の疲労の蓄積などが原因と思う。
そこにもう一つ、今大会の目標を「ベスト8」と設定したこと、そしてそれが実現したことも要素の一つだろうと考えた。未踏のベスト8進出は悲願だったし、それを達成したことで「達成感」を覚えホッと一息ついてしまったのではないか。
もちろんリーチ主将をはじめとして「気を緩めることなく戦う」と力強く言ってくれた。が、目標を達成した直後にさらにもう一つ高い目標を設定し実現することはそうたやすいことではないだろう。
他のスポーツでもそうだが引き分けでも次に進める、というシチュエーションで引き分けを狙って戦いに臨むようでは勝つどころか引き分けだって難しいだろう。
勝ちを狙って戦いに臨むが、勝ちきれず引き分けになることで結果的に次のステージに進む、というのがよく見られる結果だ。
男子サッカーの本田圭佑が「ワールドカップでは優勝を狙う」と発言していたが、これは単なるビッグマウスではなく、優勝を狙ったチームだけが優勝できるということからも理にかなっている発言なのだ。
サッカー日本代表が「ベスト16を超えてベスト8に進む」という目標設定をしたとしたらベスト8に進めたとしてもそこで終わってしまうのではないだろうか。
2050年にはワールドカップを日本で開催してそして優勝するという目標も川渕チェアマン(当時)がぶち上げた。その時はなんて荒唐無稽な、と思ったがそれを目標として常に意識して目指していけば達成に近づける。思わなければ2050年になっても2100年になっても実現しないだろう。
私はその時まで長生きして見届けたいと思っているのでぜひその目標を実現してほしいものだ。
話をラグビー代表に戻す。今の方向で強化を進めればワールドカップのベスト8常連にもなれる可能性はあると思う。そして次の目標は「優勝」と言いたいところだが、オールブラックス等の超強豪がひしめいているのでちょっと大胆。だから「決勝進出」を目標と設定しよう。
もちろん「進化」し続けないといけない。日本代表の快進撃の要因を研究されて、そこをつぶしに来たり、同じことをより高いレベルでやられたらまたライバル国の背中が遠ざかる。
女子サッカーが2011年のワールドカップで優勝したときは、細かくボールを動かし俊敏性を活かして体格で優る強豪国を撃破していった。女性版バルセロナなどとも言われたものだ。
しかし、そのなでしこ流のボール回しが有効だとわかると世界の強豪国が同じことをやるようになった。
恵まれた体躯の国に速いボール回しを身につけられたらチビッ子のなでしこジャパンはなかなか勝てなくなってしまった。2019年のワールドカップでは準優勝したオランダに準々決勝で敗れている。
だからラグビー日本代表は、今まで磨いてきた技術や体力をベースに更に進化してもらいたい。
サッカーが世界に伍するようになったのも理論を学び練習方法も世界基準のやり方をどんどん取り入れてきたから。ラグビー界でも当然やっていることだろうが、今回のベスト8をきっかけにますます強化に力を入れてさらに我々を楽しませてほしい。