「出来る道を探る武の心」
武術の稽古において、技が上手くいかないことは日常茶飯事です。型が思うように決まらない、力の流れが止まってしまう、相手の動きに対応できない――こうした壁にぶつかったとき、「自分には才能がない」「体格が違うから無理だ」「時間が足りない」と、“出来ない理由”を並べることは簡単です。
しかし、武術の真髄は「不可能を超える術」を探るところにあります。
達人たちは皆、出来ない状況の中で「どうすれば出来るか?」を問い続けました。たとえば、力のない者がどうすれば力のある者に勝てるのか。動きの鈍い者がどうすれば素早く動けるのか。そこから生まれたのが、「力を使わずに崩す技法」や「間合いと呼吸で先を取る術」などの工夫です。
これは単に武術に限った話ではなく、日常や仕事、人生全般にも通じます。
「考えるより、感じ、試す」
武術の稽古では、頭で考えるだけでは技は身につきません。まず動き、試し、失敗の中から学びを得ます。「こうしてみたらどうだろう?」「この角度なら届くかもしれない」と、“出来る可能性”に意識を向けて繰り返すことで、出来なかったことが自然と出来るようになるのです。
つまり、「出来ない理由を探す」のは、現状維持の言い訳であり、
「出来る方法を考える」のは、成長と突破への第一歩です。
結び
武術の道は、常に「工夫と応用」の連続です。
「出来ない」ではなく「どうすれば出来るか?」という問いが、心を強くし、身体をしなやかにします。
それはやがて、人生のあらゆる場面で応用できる“心の型”となるのです。