世界には各国夫々に船級協会があり、云わば船舶の安全検査、資格要件等々
それら検査機関の評価により航海区域や保険料率その他各種等々が決定される。
従って、特に国際航路、船籍国の船舶に対して何れかに入級する必要がある。
(有)福岡航研は船穀(船体構造)設計を造船所(又は船主)の要求された条件を満たすべく設計を実施。 表現すればクラス直接接触の立場で無く国内の前例も無い。
偶々、ドイツ語が発端でG.L.との折衝をはじめ各国クラスと直接対応する事となり、過ってJ.G.(海運局)やN.K.(日本海事協会)で経験する事の無かった、発想や手順に解決手段を見出し、技術的にも新たな手法で国内での船舶設計事務所で稀有な存在となる。 以後、 幾例かクラスとの当時を思い起こし記述の予定。
因みに、L.R.(ロイド 英国) ・ A.B.(アメリカンビューロー 米国) ・ B.V.(ビューローベリタス 仏) ・ G.L.(ジャーマニッシュロイド 独) ・ N.V.(ノリスケベリタス ノルウエー)以上私が係わったクラス(船級協会)。 ロシアや中国等、他にも有ると思われる。
本題のL.R.だが一番印象深く又多数設計に係わったクラスであり横浜のオフィスに通い特に関所長は所長室での雑談も思い出。 但し対応の検査官は全て英国人。
L.R.のルールブック(英文原書)は分厚く重い大判、 しかしその頃は専門用語や慣用句等にも馴れ、計算書作成に左程苦労はしなかった様に思う。 最初が鹿児島ドックの100番貨物船で8,000D.W.(積載重量)のノースバルティック(北バルト海)のクラス2。 耐氷構造では上位のクラスで砕氷船に近く, 構造上アイスベルト(外板補強部)やアイスフレーム(中間肋骨)等特別な補強を要求。
しかし、納期や材料発注の為、福岡航研に許された時間は僅か5日間!
しかも春の連休前、アイスクラスは初めての経験であり用語も見慣れぬ表現に戸惑うばかり。 私は原書片手に計算書作成、天本君Const.Pro.(全体構造図)を始め,
Midship(中央横断面図)、ShellExp.(外板展開図)各人一枚ずつ手分して徹夜作業。
皆、図面に必要な構造要素や部材に次々要求に追い着けず、最早順序良くとは
行かず飛び石伝いの如く睡眠不足も手伝い混乱の極致、全員等しくであった。
最終日の連休明け、一番機に飛び乗り「鹿児島ドック」へ当然手直しに旅館で又々徹夜で修正に費やし、ヤットカットで済ませた。 造船所サイドでアプローバル(建造許可)を取得されたが、その期間(約2ケ月)が後日私共に委ねられる事となった。
後談 恥ずかしながら、完成後の重査(重量重心査定)で125トンの重量オーバー
8.000トンの積載量を満たせず相応のペナルティーを科され造船所に迷惑を掛けてしまった。 時間が足りなかったは弁解ならず、しかし不問は理解されたか大人の扱いに感謝。 アイスクラスの見積もりに計画段階の不備は我々同様だったと思える。