最後にお雑煮を食べたのはいつかを考えてみると、それは間違いなく今年の正月ごろで、その前はいつかと思い出してみると、去年の正月ごろなのだ。

1年に一度しか食べていない私がいうのもなんだが、お雑煮のことはかなり好きである。私が作るお雑煮は、鶏肉をじっくり煮込んで醤油ベースで仕立てたけんちん汁風のつゆに、こんがりと焼いた餅を入れ、ちぎった海苔と一味をふりかけたものだ。


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しかし好きだというわりには、年に一度しか食べない。それも正月にだ。

確かにお雑煮は正月の定番料理ではあるが、別に私は「お雑煮は正月じゃないと食べてはいけないよ」と言われたわけでもない。ただ単に、自分が「正月にしかお雑煮のことを思い出さない」だけなのである。

これは非常によろしくない事態である。

30歳をすぎたとはいえ、私は自分のことを若者であると思っているフシがある。若者というのは柔軟な発想に富み、そして既成概念を覆し歴史を変えていく、そういう存在だと思っている。

だがお雑煮に関しての私の体たらくっぷりはひどい。

一説によると、室町時代にはすでにお雑煮が縁起物として正月に食べられていたという話もある。私は既成概念を覆すどころか、室町時代から全く変わらない思想で今を生きているのである。600年越しの事なかれ主義である。思想の凝り固まり方がひどい。

こうなってくると私がやるべきことはひとつだ。そう、お正月以外にお雑煮を食べるのである。

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私は少し、自分の心が踊っていることを感じた。まだ11月なのに、目の前にお雑煮がある。これがなにを意味するかおわかりであろうか。「お雑煮=正月」の既成概念を覆したこの行為は、もしかすると第2のコペルニクス的転回と言われ、歴史に残るかもしれないのだ。

そして驚いたことに、お雑煮のにおいを嗅いだことにより、私の心の中に正月がやってきたのだ!人間における「嗅覚」は、記憶と直結しているという。私にとってのお雑煮の記憶は間違いなく「正月」で、そこに直結したのだった。

11月なのに、これほどまでに気持ちが「謹賀新年」を迎えている男は、世界広しといえども私だけではないかと思う。

600年越しの事なかれ主義から脱却した私は、むしろ世間より先に正月を迎えるという、飛躍的進歩を遂げたのだった。人類の皆様、私はちょっと先で待っていますね。

もし私のいる「エア正月」の域にたどり着きたい方は、お雑煮を作ることをお勧めしたい。茶碗蒸しがあればなお良いということを付け加えておこう。


(完)


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