長い月日をかけて、作家の精神力を注いで作られる織物の世界。
繰り返される繊細な手仕事、鍛え抜かれた感性。
一流の着物を着ることは「まさにその人(作者)の人生」をいただいて身に付けるようなものですね、と言われたのは、おなじく一流の品だけを扱う老舗の呉服屋さん、泉州さの呉服 北浦 の女将 北浦雅子さん でした。
(北浦雅子さんとは、鞠小路スタイルのきものの学校でご一緒させていただきました。)

先日、志村ふくみ展 に出掛けると友人に伝えたところ、これ持ってる?と一冊のエッセイをもらいました。
「語りかける花」志村ふくみ著


手にとって数ページすすむうちに、織物がその人の人生、生命そのものならば、言葉も同じように楽しみたい。
そう思いました。

流麗な言葉の運びに日々の疲れや子育てのイライラ(笑)が洗われるようになる、と同時に、あぁ、そうだった、この方はエッセイストではなく染織家なのだと改めて認識し再び文章に目を戻す。

このエッセイをもらうまで、私の手元にある 志村ふくみさんの本は2004年に発行された「篝火」一冊のみ。

この本もまた、すごいんですよ。
まだ着物への知識が少ないころに手にしたということもあって、私が感じた驚きと感動がいまだに新鮮によみがえります。

なにが驚きだったかというと源氏物語に出てくる姫君たちの物語を、十二単の世界を 「紬」で表現した「人間国宝 志村ふくみ 源氏物語を織る」  のシリーズ。
滋賀県立美術館での展示を見に行ったのはもう10年以上前のことでした。



当時の私には紬は庶民の着物だという知識しかなく、それとは反対に位置する王朝文学の世界を「紬」で表現するなんて、なんて新鮮で素敵なんだとうと。

織物のアップが載っている頁もあり、手にその風合いを楽しんでいるかのような錯覚をおぼえます。


紬糸の息遣い、不思議な色のグラデーション。

「こんな着物がきたい!」
いてもたってもいられなくて当事勤めていた織元の会社のつてで手織りの紬をやっている工房を探してもらったこともあります。
(中国で現地の職人さんに指導して安く求めやすいものを企画しておられ、そこで織っていただいたのが私のこの着物でした)


また、エッセイ「語りかける花」には、ご自身の創作や過去の出来事だけでなく、明治大正から昭和までを生きた女性の画家 上村 松園 について書かれている部分も。
明治の世では「女は嫁に行き家を守ることが最上の美徳」。画家として己を貫くのは世間から歓迎される生き方ではなかったようです。さらに未婚の母、画壇の男性作家たちからも女性ならではの差別的なあつかいを受けたそうです。

現代では古い風習は姿を消し、明治大正に比べれば女性が伸び伸びと生きられる時代になったといえます。

同時に松園が描いた慎ましさの極みともいえる女性の姿は、現実の女性の美しさではなく古典となりました。

「もうどこにも松園の描く女性はいないといっていい程である」と志村ふくみは述べています。

と同時に、「松園の中に生きる女性は終局において女性を超えている」とも。

ここで言う女性を超えた女性、それは、「性差のカテゴリから飛び出した自由な人間」ではなく、因習との軋轢を避けず身を挺して生きた女性のソリッドな「内面」の美しさ、です。

このエッセイを読んでいると、女性が「紡ぎ」「織り成す」言葉の大切さを感じました。女性が女性へ伝えるべきもの。フェミニズムなどの思想もその一部と捉えることが出来るかもしれません。

私もやはり現代人。社会を男対女 の構図で短絡的に語ることには違和感を覚えてしまいますが、それでも女性が紡ぐ言葉がなければ歴史に埋もれてしまっていたかもしれないもの、知られざる女性の生き方があるのだと、しみじみ感じました。

そうなんですよ、切り口はフェミニズムでも着物マニアでもなんでもいいよなぁ、と。

蛇足ですが、最近、表面的な美しさと内面的な美しさを分けて捉えることにも違和感を感じるようになりました。

すなわち着物のなせる技。
元ある姿×場との調和=美しさ
という着物の世界の方程式は、決して堅苦しいルールを私たちに押し付けるものではありません。
整形やコルセットで型にはめるのではなく、その人のあるがままの姿を受け入れ、さらに季節感やシーンとの調和によって全体を美しいと「感じる」心。

「美人」とは本来、整った顔立ちや肉体を指す以前に、「人」が「美しくある状態」を言うのだと思います。 
美しさって∞無限大なんですよね。

着物の世界、楽しすぎる^^


ウインク誰でも必ず9回のレッスンで "きもの美人"に。 

カジュアルもよそゆきも自分で着られるようになります。

京都東山三条 着付け教室 ”きものシャン!”  

ビックリマークレッスン受講随時受付中です。ビックリマーク着物ママを応援します!レッスンは、お子様連れOKです。

講師も育児経験がありますので、いろんな面でサポートしながらレッスンを致します。育休中や子育て中に学びたいという小さいお子様のお母様も安心して受講していただけます。(プライベートレッスンのみ)


きもの  着物はじめてさんへ 初級レッスンのご案内はこちら きもの   着物のお悩み解決!ポイントレッスンのご案内はこちら きもの     ヒメノルミ&ayaaya考案 短い名古屋帯でお太鼓結びレッスン のご案内はこちら