どもどもキムです。
ネネさんが生まれてきた時のお話の続き。
自分にとっては病院でもなく、
助産師さんもいない中、
4人の子どもたちが自宅で生まれてきたってことは、
すでに当たり前の過去になってるけど、
普通ではないことは頭ではわかってる。
でも、特に特別な事という感じはしていない。
命の誕生はどれもみんな神秘的だし、神聖だし、奇跡的な事だと思う。
今も目の前にいる花ちゃんが、どんな風に生まれてきたか?
って事は案外どうでも良い事のように感じるし、
花ちゃんの人生に大きな影響があるような気もしない。
でも、自分の人生においては大きな出来事だったのは間違いないな。
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第1話はこちら。
https://ameblo.jp/kimkimkim1202/entry-12378380534.html
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掃除をしまくって、
とにかく神々しくなった我が家。
そして3時間のお散歩から帰ってきた里恵さんが言った。
「キム。おしるしが来たよ」
あ、ちなみに「おしるし」って男の人はなんだかわからない人が多いかもしれないけど、
出産前にちょっとだけ血が出るやつね。
この出血があると、もうすぐ出産だよ〜っておしるしってこと。
女性は普段は生理で血が出ることには慣れてるだろうけど、
妊娠してからは血が出てくることはないから久しぶりに見る血なんだよね。
男があそこから血が出てきたら
ちょっとだけでも相当ビビるよね(笑)
そうそう。話を戻して、
「キム。おしるしが来たよ」と言われ、
ついに来たか。。。
という気持ちと、
え?本当?
本当に生まれてきちゃうの??
みたいなイマイチ信じられない気持ち。
それでも一応、出産の準備をいそいそと始める。
布団を敷いて、
その上にブルーシートを敷いて、
さらにその上に汚れてもいいシーツやバスタオル。
さらに予備のシーツやバスタオルもたくさん用意する。
これも男の人にはピンとこないかも知れないけど、
出産ってめっちゃ血が出るのよ。
お湯を沸かしてハサミを消毒したり、
ビデオカメラの準備をしたり、
陣痛の間隔の時間を計ったり、
後で使うかも知れないお風呂を念入りに掃除したり
色んなものを消毒したり。
あとはブログとか書いたのかな?
これから生まれてくる赤ちゃんに手紙とか書いたっけな?
ま、全部自分たちで準備するから案外バタバタ。
そうこうしている間に、気がつけば陣痛の間隔はだいぶ短くなって、
里恵さんもだいぶ苦しそうになってきてた。
しばらくはね、ビデオ撮ったりしてたけど、
あっという間にどんどん陣痛は激しくなって、
里恵さんが動けなくなっていった。
そこであらかじめお風呂にお水をためておいたので、
急いで沸かしに行く。
我が家は薪で沸かす五右衛門風呂だから
外に出て薪に火をつける。
これもすぐに暖かくなるように、
すぐ火がついて、火力がある薪と、
いつまでも冷めてこないように、
長く燃えていてくれる薪をちゃんと用意しておいた。
あ、これも男の人は???ってなるかもだけど、
お湯に浸かって、リラックスすると陣痛も和らいでくるんだよ。
そんなこんなであっという間にお風呂も温まり、
里恵さんをお風呂に連れていく。
リラックスして気持ちよさそうな里恵さんを見てひと安心して、
その間にビデオの準備やその他の雑用をバタバタとこなす。
でも、なぜかさっきまで動いていたビデオが突然動かない。
その時の自分たちにしてみると、
この記録を撮ることはとっても大事なことだと
思っていたので、案外ショック。
でも、そんなことに気持ちを引っ張られている余裕はない。
一気に陣痛は襲ってきた里恵さんが、お風呂場から叫ぶ。
「キムー!!!キムーーーー!!!
こっちにいて!!!!」
駆けつけてみると、見たこともないような里恵さん。
徐々に叫び声も大きくなる。
小さいお風呂場ってこともあってやたら響く。
その時の里恵の声は
今まで聞いたどんな音よりも大きな音だった。
ライブハウスとかだとさ、自分の声聞こえなくなるじゃない?
でも、自分が喋ってるかどうかはわかるじゃん。
でも、その時のお風呂場では、
果たして自分は本当に声を出しているのか?
自分でもわからないくらい大きな音で里恵は叫んでいた。
その音と里恵のその姿、その迫力。
気を緩めたらこの場で気を失えるな。。。
って思った。 マジで(笑)
同じくらいの気合を入れてないと、
俺って死ぬんじゃね?って本気で思った。
気がつけば俺も本気で応援してた。
「頑張れ!!頑張れ!!!!」
他にかける言葉はなかった。
ただただ気合を入れて叫び続ける。
里恵も叫び続ける。
永遠に感じる時間。
うちらのちょっと前に仲間が自然出産をしててね、
それが確か40時間以上かかって生まれてきたの。
それを思い出した時、
これが40時間続いたら里恵より先に俺が死ぬなってマジで思った(笑)
外がだんだん暗くなってきた頃、
里恵さんが言った。
「キム、次のいきみで赤ちゃんが出てこなかったら、
お風呂から引っ張り上げて」
それを聞いて、心からホッとしたのを覚えてる。
里恵さんはお風呂の中。
俺はお風呂の外から「頑張れー!!」
とかやってるから、
今、赤ちゃんがどんな状態なのか全然把握できてなかったの。
そんな時、里恵さんが、
「次のいきみで出てこなかったら。。。」と言ったってことは、
だいぶ進んでいるだ。。。と初めて認識できたのでした。
そして、次の陣痛が過ぎて行った時、
里恵さんを湯船から引っ張り上げた。
もう足にはほとんど力が入らず自力では全然動けない里恵さん。
お風呂の洗い場まで引っ張り上げ、
そこで自分の肩につかまってなんとか立ってられる感じ。
いつ出てきてもいいように、
俺の手は里恵さんのまたの下へ。
そこでまた次の陣痛。
もう何度目だかわからない、この世のものとは思えない
大迫力、大音量の世界。
と、その時、
「ふにゃ・・・」って声がした!!!
またの間から小さい頭!!!
いよいよだ!!!!
恐る恐る触れてみると、
暖かくて柔らかい!
そして思った以上にヌルヌルしてる!!
俺は中腰で、肩の上から里恵が寄りかかってる状態。
ちょうどお相撲さんの「はっけよい」の姿勢だね。
さらに両手は生まれてくるヌルヌルの赤ちゃんを絶対に落とさぬように
意識を集中させる。(床はコンクリにタイル張り)
次のいきみが来た!!
出てきた!
肩が抜ける!
つるん♫
自分の腕の中に赤ちゃんが滑り降りてくる。
暖かい。。。
へその緒も絡んでない。
口の中に羊水が詰まってるかもしれないから、
軽く下に向けてあげる。
ケホっって小さく咳き込んだ赤ちゃん。
大丈夫。
呼吸を始めてる。
そして、そっと里恵さんの腕へ。。。。
と、その時、今までの大迫力、大音量の里恵さんの叫びよりも、
赤ちゃんが生まれてきた瞬間よりも、
もっともっと衝撃的なことが起こった。
それは、
目の前の里恵さんが全くの別人になっていた。
この目の前の里恵さんは、俺は見たことがない人だと感じるくらい、
違う存在になっていた。
言葉にすると、一人の女性から、一人の母親に。
それは、俺からすると、全くの別人だった。
姿や形は一緒でも、
赤ちゃんと同じように、
この世に存在していなかった新しい存在。
母親木村里恵がこの世に生まれた瞬間だった。
そんな衝撃を受けながら、赤ちゃんを里恵さんの腕の中へ。
相変わらずヌルヌルしているから、慎重に慎重に。
里恵さんの胸に抱かれた赤ちゃんは、
全く泣き声もあげず、
まっすぐに里恵の目を見つめてる。
その時、思い出した。
今日、この家がやけに神々しかったことを。
そっか、これだったんだ。
本当に神がいるんだ。
神がいたんだ。
その光景は言葉の挨拶よりも、
もっともっと深い挨拶だった。
すごくすごく美しい光景でなんかちょっと嫉妬した(笑)
さっきまで里恵さんが一人で入っていた湯船に、
今度を赤ちゃんと二人で入る。
そこで、体についた血をさっと流して、
里恵さんを抱えながら布団まで連れていく。
そっと、そうっと里恵さんと赤ちゃんを横に寝かせる。
そんな記憶がなくなっていたけど、
その時俺は、
「ありがとう。ありがとう。
一生感謝する。一生感謝する。」
と言っていたらしい。
忘れたけどね(笑)
新しい命が生まれた喜び、
出産が終わった安堵。
安堵の方が大きかったな。
生まれた。
生まれた。
終わったんだ。
終わったんだ。。。
続く。。。