恒例のフィクションです。
気が向いたら読んでくださいね。
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ぎっしりと予定が詰まった手帳。
22日だけは空白だ。
「ずっと予定をいれないでほしい」と、結婚した時、夫に言われたからだ。
言葉通り、平日ならディナー。
休日なら遠出やランチ。
夫は「このまま、いい夫婦でいよう」と言いながら、いつも笑顔で話しかけてくれた。
今年は。。。
このまま、空白だろう。
なぜなら、夫が海外出張に出かけているから。
仕事だもの、仕方がない。
緊張が高まるヨーロッパ。
今は、元気に帰国することを待つだけだ。
でも、連休のど真ん中だけ、何も予定がないのは寂しい。
そんな「心の空隙」を埋めるかのように、あの人から連絡があった。
子どものいない私たち夫婦。
結婚して15年、お互いに仕事を持って暮らしてきた。
ずっと、夫を愛していることに変わりはない。
それなのに、ただ一度だけ過ちを犯したことがある。
私自身の出張先で、偶然出くわした学生時代の同級生。
私にとっては憧れの人だった。
投宿したホテルのロビー。
目があった瞬間に彼だと分かった。
彼も出張中だった。
予定したクライアントの夕食会がキャンセルになり、手持無沙汰になっているところだった。
「○○だろう?食事でもどう?」という誘いに乗ったのは旅先の気安さからか。
昔の思い出に浸りたかったからか。
早めの食事。
ホテルのバーで鳴らすグラス。
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(画像はお借りしました)
エレベーターの中でのキス。
手を引かれて、大して抵抗もせず、彼の部屋に入った。
「綺麗になったね」
「昔から好きだったんだ」
お世辞だと分かっていても、甘い言葉に心がとろける。
やがて身体も溶けていった。
夜中に目覚め、あわてて自分の部屋に戻る。
夫から「遅くまでおつかれ。気をつけて帰ってきてね」というメールが届いていた。
自分の過ちを責めることもなく、「浮気ってあっけないものだ」と感じる自分が怖くもなった。
西日本の大都市に住む彼。
「上京するけど、お茶でもどう?」という。
お茶だけ、ランチだけで済まないかもしれない。
どうしよう。
返事は今日でも構わないという。
もう一度、身も心もとろけたい自分と
夫を待つ貞淑な妻と
どちらも本当の私だ。
まずは服を着て、出かける準備だけしてみよう。
鏡に映った自分を見て、どんな顔をしているのか、確かめてみたい。
それで、本音が分かるかもしれない。