揺れる~いい夫婦の日に | スイーツな日々(ホアキン)

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フィクションです。
今日は11月22日、「いい夫婦の日」です。
でも、明るい話ではありません。

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「もしもし」
「明菜、私だけど」
「お母さん、分かっているわ、番号表示で」
「あ、そうだったね。それより明菜、最近、真彦さんの調子はどう?」
「え?どうって?」
「どこか具合が悪いとか」
「そんなことないわよ」
本当は、よく分からない。
「どうしてそんなこと聞くの?」
「いえ、お父さんが、ね」
「え、お父さん?」

夫の真彦とは、私の父の反対を押し切って結婚した。
13歳も年上のバツイチ。
私はまだ22歳だった。
しかも彼は、勤めていた会社を辞めて、司法試験浪人をしているところだった。
「結婚するなら、司法修習生を終えてからでもいいだろう。
そもそも受かるかどうかも分からないのに」
「私が働いて支えたいのよ」
親子喧嘩を繰り返した挙句、
「結婚するなら、二度とこの家の敷居をまたぐな」という父親の怒声を背中に
私は彼のアパートに転がり込んだ。

あれから5年。
私自身、彼は司法試験に受かるのだろうか、と心配していた。
いい意味で予想に反し、彼は一発で合格。
「法学部出身で、会社の法務部にいたからね。
顧問弁護士のレベルを見ていて、これならできるという自信はあったんだ」
自慢げに話す、彼を頼もしく思った。
実家には、飛び出して以来、一度も戻っていない。
それでも母親には、時々会っていたし、母は私たちの住まいにも何度か遊びに来たことがある。
しかし、父に会いに行く気持ちにはならなかった。
あの時の言動がどうしても許せなかったからだ。

「実はね、明菜」
母が電話で話す言葉に驚いた。
夫は、真彦は、2年ほど前から私の実家を訪問しているというのだ。
初めは、面会を渋っていた父だが、好きな囲碁の相手として認めてほしいと繰り返した真彦の熱意に、根負けしたらしい。
それ以来、月に1度ほど、2~3時間かけて、黙って碁盤を囲んでいたという。
「真彦さんはね、『実の親子が仲違いしたままなのは良くないですよ』と言ってたよ。
『まずは、僕がお父さんの気持ちをほぐしてから、明菜を説得します』って」
確かに、休日に、半日ほど「出かけてくる」と言って、外出していた。
そうなのか、てっきり、休日出勤をしているのかと思った。

夫はいわゆる「マチベン」、離婚、交通事故、相続、なんでもござれの弁護士事務所に就職した。
「この年齢では、大手は無理だから」と言って、懸命に働いていた。
出来高制のこの事務所は、弁護士一人ひとりが個人事業主のようなもので、
仕事も自分で見つけてくることになっていた。
「明菜に苦労はさせないからね」
会社員時代以上に猛烈に働いた結果、弁護士になって3年目なのに、かなりの収入を手にするようになっていた。
彼が真面目に働いてくれるのは嬉しい。
ありがたいと思っている。
なのに、私は、自分が無視されているような、疎外感を覚えていた。
もっとちやほやされたかった。
夫婦だけの時間が欲しかった。
心に隙間風が吹いている時、職場の後輩男性、田原が近づいてきた。
3歳年下の彼は、私を称賛しまくった。
5年以上前、夫にも同じように言われたことも忘れ、私は年下の彼の言葉に酔った。
そして、ついに一線を越え、間違いを犯してしまったのだ。
田原も私に夢中だったようだ。
彼は、仕事帰りの夫を待ち伏せし、事実を暴露した。
「明菜さんと別れてください」
そう告げたのだ。

「いい男じゃないか。明菜も年が近い方がいいだろう」
帰宅した真彦は、乾いた口調で言った。
中古とはいえ、買ったばかりのマンション。
「本来、慰謝料をもらうのはこちらだが、『明菜には苦労させません』と君のお母さんにも言ってある。
マンションごとあげるよ。ローンは僕が払うから心配するな」
そんな置手紙を残して、真彦は出て行った。
それが1カ月前だ。

「いつもなら、半月ぐらい前には、真彦さんが来るはずなんだけどね~」
母の言葉に我に返った。
テーブルには真彦から送られてきた離婚届の用紙が置いてある。
事務所からだから、どこに住んでいるかもわからない。
田原は「早く一緒に住もう」と執拗に迫ってくる。
正直、少しわずらわしいとも感じる。

夜、ベッドに入った時に、思うのは、真彦のことばかりだ。
「帰ってきて」と頼むのは、あまりにムシが良すぎるだろうか?
もっとも、妙なプライドのある私は、彼にすがりつくことなど、できないかもしれない。

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あなたは、パートナーがあなたのことをどう思っているか、分かっていますか?