775冊目 アウシュヴィッツの図書係/アントニオ・G・イトゥルベ | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「アウシュヴィッツの図書係」アントニオ・G・イトゥルベ著・・・★★★☆

アウシュヴィッツ強制収容所に、囚人たちによってひっそりと作られた“学校”。ここには8冊だけの秘密の“図書館”がある。図書係に指名されたのは14歳の少女ディタ。本の所持が禁じられているなか、少女は命の危険も顧みず、服の下に本を隠し持つ。収容所という地獄にあって、ディタは屈しない。本を愛する少女の生きる強さ、彼女をめぐるユダヤ人の人々の生き様を、モデルとなった実在の人物へのインタビューと取材から描いた、事実に基づく物語。

 

本書は、アウシュヴィッツ強制収容所に収容されていた実在の少女をモデルに描かれたフィクションで、著者はスペイン人ジャーナリスト。

 

両親と共にアウシュヴィッツに収容されたディタは、他の子供たちと共に31号棟で過酷な日々を送っていた。

ある日ディタは、収容者たちに希望を与えナチスに屈しないリーダー的存在の元体育教師・ヒルシュから8冊の本の管理を任される。

床下に隠した本を希望者に貸すのがディタの仕事で、万が一監視兵に見つかれば処刑を覚悟しなければならなかった。

ディタはその仕事に誇りを感じ過酷な日々を耐え忍んだ。。。

 

アウシュヴィッツの悲惨さをここで改めて訴える事は必要無いと思うが、このような劣悪な環境におかれた中で、人は何に希望を見いだすのか?

食料や睡眠すらも満たされない環境で、ここでは本が一縷の望みだった。

絶望の中で物語を読んだり、算数や理科を勉強して何の為になるのか?

しかし、収容者たちは勉強し想像する事で希望を見いだし、束の間の安らぎを得た。

 

アウシュヴィッツに収容された心理学者、V・E・フランクルは著書「夜と霧」で

「どんな過酷な環境下に置かれても、なお人間は生きる意味を見い出し、自分自身の生き方を選択する事ができる」と説いた。

 

絶望も希望も人は選択でき、何者にもそれを侵すことはできないのである。

 

本書はアウシュビッツの史実を後世に残す作品として高く評価されると思うが、難を言えばやや荒削りな感がある。

著者はジャーナリストで小説を書き慣れていないように感じた。

 

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