「おらおらでひとりいぐも」若竹千佐子著・・・★★★★
桃子さんの人生は戦後の日本女性の典型かもしれないが、他人が思うほど悪いものではない。最愛の夫を喪ったときに根底から生き方を変え、世間の規範など気にせず、〈おらはおらに従う〉ようになったのだ。話し相手は生者とは限らない。そんな〈幸せな狂気〉を抱えて桃子さんは孤独と生き、未知の世界へひとりで行こうとしている。
昨年の第158回芥川賞受賞作。
久しぶりに新刊を買った。(といってもヤフオクで)
この作品から、爆発的と言っていい程の溢れだす著者の思いが伝わってきた。
私小説風な作品だが、三人称で語る事で、かろううじて冷静になって作品にしたような感じがする。
その思いとは主人公の桃子さん、すなわち著者自身(?)の今までの人生と、残された人生への、悲しみ、喜びだ。
特に中盤あたりで、亡き夫への想いを綴った東北弁での語りは圧巻だった。
著者(主婦)は55歳の時夫を亡くし、それから小説講座に通いこの作品を生み出すのに8年掛かったそうだ。
それ程に言いたい事が内面にあったのだろう。
もしかしたら、この一冊だけでもう書かないかもしれない。
この作品の良さは若い人には分からないと思う。
人生の大きな苦しみをいくつか超え、喜びがあり、残りの年数を意識する程の歳にならないと無理だと思う。
そういう経験がないと、単に東北弁で書かれた変わった作品だとしか感じないかもしれない。
私も人生の半分をとうに過ぎ、大きな苦しみと喜びをいくつか経験し、やっと自分も一人前になったかな?という歳になったからこそ分かる。
本作を読んで老いは思ったより悪くないな、と感じた。
実際、私の人生では今が一番充実している。
歳をとるにしたがいそれを感じるようになった。
最近、周りの人間にもそれを感じる。
30、40代なんてまだまだ青い。
50になってやっと良いかな~?という感じ。
久しぶりに良い芥川賞作品に出会えました。
年配の方々に是非おすすめします。
おらおらでひとりいぐも 第158回芥川賞受賞
1,296円
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