725冊目 家族を駆け抜けて/マイケル・オンダーチェ | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「家族を駆け抜けて」マイケル・オンダーチェ著・・・★★★☆

本書は証言や帰郷の旅で作家が目にするものと、自分自身の記憶の間を自在に往来しながら紡ぎだされた不思議な物語だ。話はまず、破談になった婚約、日曜ごとの競馬、放蕩息子の父親が泥酔の果てにくり返す奇行、イサドラ・ダンカン風のダンスを踊る母親、熱帯で繰り広げられるダンスパーティーといった、両親世代の、とにかく破天荒な青春群像の描写から始まる。熱気と湿気とくらくらするような幻視の世界だ。

 

オンダーチェの第4作目。

 

1943年コロンボ(現スリランカ)に生まれたオンダーチェは、11歳で母親とイギリスに移住。

その後カナダに移り大学で学び、カナダ人として教鞭をとりながら作家になった。

 

本書はコロンボ時代のオンダーチェ家の事を綴った自伝的小説である。

と言ってもオンダーチェだけあって、数々のエピソードはどこまでが事実でどこからが虚構なのかが判然としない。

作風的にはマルケスの「百年の孤独」やサルマン・ラシュディの「真夜中の子供」のようなマジック・リアリズムのテイストがする。

 

特に破天荒なおばあちゃんと、アル中で奇行を繰り返す父親のエピソードが面白い。

それらの話はオンダーチェが生まれる前の出来事が多く自身は殆ど登場しない。

作家となった著者が何度かスリランカを訪問取材し本作を書き上げたそうだ。

 

カナダ人となったオンダーチェだが端々にコロンボに対する望郷の念を感じる。


移民として生きるオンダーチェは、他の作品でもどこの国に帰属しているか?といった事をテーマの1つとして扱い、次に上梓された傑作「イギリス人の患者」にもそれが描かれている。

 

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