「秋のホテル」アニータ・ブルックナー著・・・★★★☆
夏が過ぎた、季節はずれのジュネーブ湖畔のホテル。大衆小説で有名な作家イーディス・ホウプは、独りそのホテルを訪れた。裕福だがもう若くない彼女は、男性社会の典型的な優等生であったがために、愛のない結婚をしようとし、それから逃れてここへ来たのだった。
1984年ブッカー賞受賞作品。
先日読んだ同賞受賞の「パディ・クラーク ハハハ」とは180°違った作風で、一言で言えば大人の上質な作品である。
既婚男性と不倫している女性作家イーディスが、晩秋にオーナー経営の小さなホテルに滞在し、そこに泊まっている客たちの人間模様と、イーディスの結婚に対する心の揺れを描いている。
希望の無い不倫を諦め、裕福だが愛の無い結婚生活をイーディスは選ぶのか?
硬質な文体で綴られた緻密な情景描写や心理描写は派手さは無いものの、晩秋を感じさせるジワッと心に沁みる作品だった。
秋のホテル (ブルックナー・コレクション)
1,836円
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