695冊目 対岸の彼女/角田光代 | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「対岸の彼女」角田光代著・・・★★★★

いじめで群馬に転校してきた女子高生のアオちんは、ナナコと親友になった。専業主婦の小夜子はベンチャー企業の女社長・葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始める。立場が違ってもわかりあえる、どこかにいける、と思っていたのに……結婚する女、しない女、子供を持つ女、持たない女、たったそれだけのことで、なぜ女どうし、わかりあえなくなるんだろう。女性の友情と亀裂、そしてその先を、切なくリアルに描く傑作長編。

 

第132回(2004年)直木賞受賞作品。

 

ストーリーは旅行会社を経営し新たにハウスクリーニング業を始めた女社長・葵の高校生時代と、そこに新入社員として勤める子持ちの主婦・小夜子の話が章ごとに交互に綴られている。

 

横浜の中学時代いじめにあっていた葵は、それが原因で高校入学を機に群馬へ家族で引っ越し、学校でナナコと親友になる。

ナナコはどのグループにも属さず、巧く立ち振る舞う女の子で、葵と学校帰りに待ち合わせをし、自宅に帰っても電話をするほどの仲になる。

葵は明るく振る舞うナナコが何の悩みも無い強い子だと思っていたが、、、

 

小夜子は仕事の為に夫や姑に反対されながらも、娘を保育園に入れ、葵の会社に勤めハウスクリーニングの仕事に没頭する。

小夜子は葵の自由奔放な性格に惹かれていくが、凄い過去があるという噂を耳に挟む。。。

 

人はどこかに属し、誰かに頼らないと生きていけないのか?自立してひとりで生きていけるのか?

 

高校生の葵とナナコは苦しみもがきながら、お互いを頼って日々を過ごすが希望を失い挫折する。

ところが現在の葵は、そんな過去を微塵も感じさせない女社長で、いったい彼女に何があったのか?

 

現在と過去を交互に描いた構成が良く、葵とナナコのストーリーに惹き込まれた。

葵の高校時代の不安や閉塞感で揺れ動く心と、そこから抜け出した現在の姿と社内での人間関係、小夜子が抱える家族関係が巧く描かれている。

 

失望の中から希望を見つけた、心に沁みる良い作品だった。

 

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