「穴」ルイス・サッカー著・・・★★★★
無実の罪で少年たちの矯正キャンプに放りこまれたスタンリー。かちんこちんの焼ける大地に一日一つ、でっかい穴を掘らされる。人格形成のためとはいうが、本当はそうではないらしい。ある日とうとう決死の脱出。友情とプライドをかけ、どことも知れない「約束の地」をめざして、穴の向こうへ踏み出した。
本の雑誌社が運営している「WEB本の雑誌」サイトに「作家の読者道」というコーナーがある。
現在187人の国内作家がインタビューに答え、その読書歴、影響を受けた本などを紹介している。
それを見てみると、この作家がこんな本に影響されたんだ~、というその作家の作風とはかけ離れた作品を挙げたりしていて興味深い。
本書は森絵都(その風貌が私のイメージと反していた!)が、好きな本としてカズオ・イシグロの「日の名残り」などと一緒に挙げていた一冊である。
実はこの本は児童書の範疇として、図書館では児童書コーナーに置かれている。
読んでみると、小学高学年~中学生向け位な感じだろうか。
紹介文のストーリーは大雑把なのでもう少し具体的に紹介します。
太っちょで気が優しく、学校でいじめられていた中学生のスタンリーは、ホームレスの避難所に飾られていた有名野球選手のスニーカーを盗んだ罪で、グリーン・レイク・キャンプと言われる、昔、湖だった矯正施設に送られる。
そこには多くの同年代の収容生が居て、スタンリーは6人のグループに入れられた。
グリーン・レイク・キャンプには逃走防止用の柵が何も無かった。
何故なら100マイル四方、水は無く、恐ろしい黄斑トカゲやガラガラヘビが棲み、空にははげたかが獲物を狙っていた。
収容生たちに課せられた仕事は毎日、直径1.5m深さ1.5mの穴を掘る事だった。
ただ、穴の中から所長の気に入った物が出てきたら、その日の穴掘りは免除された。
炎天下の下での穴掘りは過酷なものだったが、ある日スタンリーは底にKBと文字が刻まれた金色の筒を発見する。
同じグループのX線(皆ニックネームで呼ばれていた。スタンリーは原始人)から、明日の朝報告すれば丸一日休みが貰えると助言され一晩待った。
ところが翌日、金色の筒はX線に盗まれ、X線はそれを自分が見つけたと報告する。
それを確認に来た所長は女性で、X線に穴掘りの免除を与え、大事な物を探すように穴掘りの作業を見守るようになった。。。
この話が主となり、その伏線として110年程前のスタンリーのひいおじいちゃんにまつわる逸話が並行して語られている。
本書で語られているのは、収容生同志の友情、大人たちの意地汚さ、スタンリーの冒険、スタンリーの先祖とスタンリーの間で起こった奇跡の物語である。
ストーリー展開が面白く、日頃の生活に疲れた人や小難しい本を読んでいる人(私の事?)にとって、心温まるハートフルな作品だと思う。
なお、本書は「Holes」シリーズの1作目として、他にも「道」「歩く」の2作が日本語訳化されている。
文学少年少女のみならず、児童文学には、私たち大人が忘れかけている大切な何かを教えてくれる力を持っているかもしれない。
読み疲れした時に又読んでみようと思う。
次は180°違う、大人(18禁)のそれもかなりぶっ飛んだ世界の作品です。。。(;´▽`A``
穴 HOLES (講談社文庫)
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