654冊目 魔法の夜/スティーヴン・ミルハウザー | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「魔法の夜」スティーヴン・ミルハウザー著・・・★★★

夏の夜更け、アメリカ東海岸の海辺の町、眠らずに過ごす、さまざまな境遇の男女がいる。
何を求めているかもわからず、落ち着かない14歳の少女、ひとつの小説を長年書きつづけている39歳の男、その男を優しく見守る60代の女性、マネキン人形を恋い慕うロマンチストの酔っ払い、仮面を着けて家屋に忍び込む少女たちの一団……ほぼ満月の光に照らされ、町なかをさまよう人びとの軌跡が交叉し、屋根裏部屋の人形たちが目を覚ます……。

 

私が「ナイフ投げ師」の作風で魅了された、ミルハウザーの最新日本語版(原作は1999年刊)。

ミルハウザーの作品は、奇想天外で幻想的且つ退廃的な世界を、精緻な文体で描き独自の作風を持った私の好きな作家の1人である。

 

しかし、本書の表紙はかわいい熊のぬいぐるみや像や女の子の絵が描かれた、一見大人向け絵本の様な趣で「あれ?こんな本も書くの?」という軽い感じで手に取った。

 

ところが、読み始めてすぐに戸惑った。

何故なら、ストーリーは2~3ページごとに章立てされ、詩や散文的な文章で断片的に構成され、そのどれもが行動描写と情景描写のみで綴られ、話の前後の関係性があやふやで、登場人物の心情もまるで伝わってこない。

幻想的で抒情性は感じるが、ストーリー性は無いと言ってもいいかもしれない。

 

私が知るミルハウザーの作品とは全く異なる作風である。

手法は、先日読んだオンダーチェの「ビリー・ザ・キッド全仕事」と似ている。

 

これは、どう捉えたらいいのだろうか?

読み込めば少しは理解出来るかもしれないが、一通り読んだだけでは意味不明だった。

 

訳者の柴田元幸は「ミルハウザーの9作目(1999年発表)にあたるこの中篇小説は、格好の「ミルハウザー入門」といえるだろう。短い章を数多く積み重ねながら、多様な人間模様と情景を緻密に描写することによって、「小宇宙」全体の空気を浮かび上がらせる手法は、作家の得意とするところ。まさに作家の神髄が凝縮された作品で、余韻は深く、心に重く響く。
ミルハウザー初心者の読者には好適であるとともに、熱心なミルハウザー愛好者にも堪能していただける傑作中篇だ。」
と述べているが、残念ながら凡才の私には理解し難く、本作がミルハウザーの入門書とも感じなかった。(。>0<。)

「ナイフ投げ師」の方がよっぽど読み易く、入門に適していると思うのだが。。。

 

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