「ご遺体」イーヴリン・ウォー著・・・★★★☆
英国出身でペット葬儀社勤務のデニスは、友人の葬儀の手配のためハリウッドでも評判の葬儀社“囁きの園”を訪れ、そこのコスメ係と恋に落ちる。だが彼女の上司である腕利き遺体処理師もまた、奇怪な方法で彼女の気を引いていたのだった…
聞いた事もない作家だったが、図書館で表紙を前に向けて「おすすめ本」みたいに陳列され、且つ薄い本だったので読んでみた。
著者(1903-1966)はイギリス作家で、本作は1965年に映画化されている。
主人公のイギリス人デニス・バーロウは詩をこよなく愛する、ハリウッドにあるペット専門の葬儀社〈幸福の谷〉の従業員だった。
そこには毎日のように、猫やら犬やら羊やらチンパンジーやらカナリア、、、etcが持ち込まれ、火葬をしていた。
デニスはハリウッドに住むイギリス人の映画関係者らと交流していたが、ある日その中の1人である脚本家のフランシスが人生に悲観し首を吊って死んでいた。
デニスはフランシスの葬儀の為、近くにあるハリウッドでも評判の葬儀社〈囁きの園〉を訪れる。
広大な霊園は、〈巡礼の安息地〉やら〈恋人たちの巣〉やら〈影の国〉やら、、、etcと区画分けされ、彫刻などの芸術作品が置かれ、故人の人生に相応しい場所に埋葬されていた。
遺体は遺体処理師のMr.ジョイボーイとコスメ係のエイメの処置により生前の様に蘇った。
そこでデニスはエイメに一目惚れするが、ジョイボーイもエイメに恋心を持っていた。
2人の狭間に立たされたエイメは悩み、地元紙にコラムを持つ魂の指導者、導師バラモンに手紙を送る。。。
むか~し、昔読んだ、山口雅也のデビュー作「生ける屍の死」もアメリカの葬儀事情が描かれていて、それに感心した記憶があるが、こんな昔(1947年)からアメリカの葬儀がビジネス化されていた事にまず吃驚。
日本でも自宅で葬儀をする事が減り葬儀場で行ったり、民営の霊園が造られたり、土地の無い都会ではビルの中にシステム化された納骨堂があったりとビジネス化が進んでいるが、アメリカはその比では無い。
何しろペット専門の葬儀社がこの時代にあったのだから。((゚m゚;)
本作は著者がハリウッドを訪れた際に、巨大な葬儀産業に出くわし、厳粛なはずの葬儀まで商業化してしまうほどのアメリカ社会を皮肉って描かれた作品で、全篇に亘りシニカルさとブラックユーモアに溢れている。
結末のデニスがとった行動には大笑いした。( ̄▽ ̄)
初読み作家の200P程の中編だったが、なかなか面白い作品だった。
次は「薄い本」シリーズ最後の一冊です。
トリを飾るのは、日本を代表する作家の薄い名作です。
ご遺体 (光文社古典新訳文庫)
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