635冊目 選ばれし者/バーニス・ルーベンス | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「選ばれし者」バーニス・ルーベンス著・・・★★★

銀色の魚がカーペットの上を這う。麻薬による幻覚に襲われるノーマンは、息苦しいまでの親の期待に遂に押しつぶされ、今は心を病んでいる。深く愛し合いながらも正常に機能しない家族を描く、ルーベンスの力作。

 

1970年ブッカー賞作品。

 

ユダヤ教の元司祭を父にもつ弁護士ノーマンは、麻薬を常習し、床いっぱいに銀色の魚が這う幻覚症状に襲われていた。

同居する父のツヴェックと妹のベラはそんなノーマンに悩まされ、強制的に精神病院に入院させる。

しかし、その精神病院には自らを”長官”と称する院内で秘かに麻薬を売る患者がいて、ノーマンはその男から麻薬を買い中毒から逃れられないでいた。。。

 

著者のバーニス・ルーベンスは、亡命ユダヤ人の父をもち1928年ウェールズに生まれた女性作家。

 

本文の前に「患者が心を病んでいるとき、たいてい、家族に原因がある。」R・Dレイン『経験の政治学』

と書かれている。

あとがきによれば、R・Dレインは反精神医学の旗手の1人で、その主張は「精神病患者というものは存在しない。狂気は個人のうちにあるのではなくて、家族など、その個人と関係する周囲に問題がある。家族のうちの一人の自立しようという行動に対して、家族は耐えがたい不安を抱く。――」

だそうである。

 

本ブログで前回まで、2冊のアドラー心理学関連書を紹介し、家族関係の在り方についても勉強した訳だが、今回特に選んだ訳でもないのに奇しくも本書は、その家族の人間関係のあり方をテーマにした本だった。

 

本作の家族の関係はアドラー心理学の集団ルールで言えば、アナーキズム法(甘え―思いやり)の関係で成り立っている。

ひとことで言えば、過保護である。

ノーマンは常に相手が、自分の事を手助けしてくれると期待しているような男で、特に亡くなった母親(父親もそうだが、子離れできていない)との関係性によりそれを学んだようである。

 

本作はそんな家族模様を描いた作品だったが、残念ながら物語としては、いま一つとらえどころが無く、パッとした感じがしない地味目な作品だった。

よって、コメントも地味目です。以上。。。( ̄_ ̄ i)

 

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