「選ばれし者」バーニス・ルーベンス著・・・★★★
銀色の魚がカーペットの上を這う。麻薬による幻覚に襲われるノーマンは、息苦しいまでの親の期待に遂に押しつぶされ、今は心を病んでいる。深く愛し合いながらも正常に機能しない家族を描く、ルーベンスの力作。
1970年ブッカー賞作品。
ユダヤ教の元司祭を父にもつ弁護士ノーマンは、麻薬を常習し、床いっぱいに銀色の魚が這う幻覚症状に襲われていた。
同居する父のツヴェックと妹のベラはそんなノーマンに悩まされ、強制的に精神病院に入院させる。
しかし、その精神病院には自らを”長官”と称する院内で秘かに麻薬を売る患者がいて、ノーマンはその男から麻薬を買い中毒から逃れられないでいた。。。
著者のバーニス・ルーベンスは、亡命ユダヤ人の父をもち1928年ウェールズに生まれた女性作家。
本文の前に「患者が心を病んでいるとき、たいてい、家族に原因がある。」R・Dレイン『経験の政治学』
と書かれている。
あとがきによれば、R・Dレインは反精神医学の旗手の1人で、その主張は「精神病患者というものは存在しない。狂気は個人のうちにあるのではなくて、家族など、その個人と関係する周囲に問題がある。家族のうちの一人の自立しようという行動に対して、家族は耐えがたい不安を抱く。――」
だそうである。
本ブログで前回まで、2冊のアドラー心理学関連書を紹介し、家族関係の在り方についても勉強した訳だが、今回特に選んだ訳でもないのに奇しくも本書は、その家族の人間関係のあり方をテーマにした本だった。
本作の家族の関係はアドラー心理学の集団ルールで言えば、アナーキズム法(甘え―思いやり)の関係で成り立っている。
ひとことで言えば、過保護である。
ノーマンは常に相手が、自分の事を手助けしてくれると期待しているような男で、特に亡くなった母親(父親もそうだが、子離れできていない)との関係性によりそれを学んだようである。
本作はそんな家族模様を描いた作品だったが、残念ながら物語としては、いま一つとらえどころが無く、パッとした感じがしない地味目な作品だった。
よって、コメントも地味目です。以上。。。( ̄_ ̄ i)
選ばれし者 (バーニス・ルーベンス選集 3)
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