TPPと日本という国の未来 その3 | 蜜柑草子~真実を探求する日記~

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その1その2はこちら。

条文はこちら。
TPP協定の全章概要(日本政府作成):PDF
TPP協定の全章概要(別添・附属書等):PDF
TPP全文:"Text of the Trans-Pacific Partnership"

さてさてさて、今回もTPPについて書いておこう。
農業の関税とか自動車のセーフガード措置といったテクニカルな話は、他のところで書かれているだろう。
本丸の一つの医療(保険)の分野であれば、以前からジャーナリストの堤未果さんが切り込んでいるので、そちらを参照。
政治過程や具体的な制度などもお書きになっている。

筆者は、ごく普通の一般市民なので、別の視座から書いておく。


TPP委員会
ご覧になった方も多いと思われるが、これは第27章(運用及び制度に関する規定)にある。
これまで散々、TPPの驚くべきことを書いて来たのだが、この存在も驚きだ。
この章は短いのだが、すごいことが書いてある。

それがTPP委員会だ。
締約国は、それぞれの国の大臣又は上級職員(日本で言えば官僚だろう)のレベルで会合するTPP委員会の設置をする(第1条)。
その代表者は、それぞれの国で決めることができる。
この委員会は、協定発効後、一年以内に会合を開き、
その後は、TPP委員会の任務を完全に果たすために必要な場合など、締約国が決定した時に会合を開く(第4条)。
(事実上、いつでもということだろう。)
このTPP委員会の任務はいくつかあるのだが、TPP委員会は、
(d) この協定の下で作られる、全ての委員会及び作業部会の作業を監督する。
(f) 締約国間の貿易や投資をさらに大きくするための方法を検討する。
などの役割をする(第2条1項)。
(d)で言われる委員会や作業部会は、例えば、第15章(政府調達)では、第23条に従って作られる。
この委員会では、第15章の実施や運用に関することで、締約国の要請により、それを協議したり、
公共事業をさらに自由化したり、差別的な基準を撤廃するような交渉がなされる。
TPP委員会は、こうした全ての委員会や作業部会を監督し、その上に立つ存在。

TPP委員会の意思決定は、協定に別段の定めがある場合以外は、コンセンサス方式(≠全会一致)によって決定される。
日本と呼ばれている国では、憲法98条2項により、条約の方が国内法に優越するため、
このTPP委員会が、形式的にも、国会より上位に来る。
ということは、TPP委員会で決まったことが、日本で実施されるようになるということだ。
しかもこうした意思決定の手続きは、TPP委員会で決めることができるため(第4条4項)、交渉同様、秘密裏になるだろう。
また、TPP委員会は、自身の役割を妨げるような問題について、
非政府の人間や集団(group)に助言を求めることができる(第2条2項(g))。
条文ではこういう書き方をしているが、実質的には、
アメリカを支配しているグローバル企業やグローバル金融資本の人間がTPP委員会に口を出せる(ように仕向ける)、ということだ。
こうしたことに加え、以前にも書いたようにISD条項によって訴訟が次々に起こされるため、
「彼ら/彼女ら」の意向が反映された法令や環境が日本という国に次々に整備されるようになる。

ここまで来るとマンガやアニメみたいだが、これも本当の話。
1回目に読んだ時は、「TPP委員会って何だよ」と、思わずツッコミを入れたくなる感じだったが、
しかし、条文を素直に読んでも、そう書いてある。
ちなみに、その1その2はで書いた内容も、素直に条文を読んだだけであり、ほとんど特別な解釈をしていない。
未読の方向けに書いておく。
日本語訳の概要は、意図的に重要な箇所を省略してあったり(例:第9章第21条や第15章の附属書など)、
"等"という文言の中にわりと大事なことが隠されてしまっていることがあるので、印象が全く違ってしまう。
英語の原文は、附属書を含めて1000ページ程度なので、こちらをおすすめする。
(正確にはこれに加え、交換文書が加わる。)
(影の)世界政府樹立に向けた動きをありありと感じることができるだろう。


今後
世界政府樹立で思い出したので、IMFと中国の熾烈な争いについても、ちょっとだけ書いておこう。
中国の人民元が、いよいよ、2016年10月からSDR構成通貨の仲間入りする。
11月30日に、IMFが正式決定した。
構成比率は、ドル、ユーロに続いて、元は3番目になる。円は4番目。
人民元が正式な国際決済通貨になるということだ。

これを利用して、中国は、さらに世界各地に手を広げて行くだろう。
特に、中東では、産油国との原油の元建て決済を目論んでいるだろう。
ドル建てだけでなく、元建てでも決済できるようにすることは、中東にとっても悪い話ではないので、いずれ実現されていくだろう。
また、EUとは一帯一路でさらに関係を強化し、ロシアに対しても切り下げられているルーブルを助け、
アジアとはAIIBを使うなどして影響力を行使し、元の経済圏を構築していく。
上流階級はもちろんのこと、年収10億円以上の中流階級の影響も、さらに大きくなるだろう。
そして、中国国内に積み上がっている様々な債務(債権)の証券化も、視野に入れているだろう。
CDOなどにより組成されたトリプルA債に加え、2次や3次以上のCDO、その他様々な金融商品が作られ、
国際的なデリバティブ市場(という名前のババ抜き大会)で大きな力を持つ日もすぐそこだろう。
なるほど、その手で来たか。
彼らは、「こんなことができるのか!?」というようなことを平気で実現してくる。
国内にとてつもなく巨大な矛盾を抱えたまま、十数億の人間を率いなければならないので、やはり上の人間はケタが違う。
今後も中国とIMFやグローバル金融資本との熾烈な戦いは続く。


一方、日本という国は、完全に蚊帳の外。
TPPによって、アメリカと日本がやり合った時に、
ほぼ確実にアメリカが勝てるような枠組みがまたしても作られてしまい、日本は第2の敗戦をしてしまったのでした。
こうした枠組みを作ることも世界皇帝達の得意技だ。
こういった話は、抽象度の高い世界なので、目に見えず分かりにくいが、大変強力だ。
しかも、今すぐに効いて来るのではなく、少し経ってから効いて来る。
そして、気がついてみると、ほぼ必ず負けるような戦いをさせられている。
自分にとって、完璧に不利なルールなのにも関わらず、賭場で「次こそは!」「これしかないんだ!」と叫びながら、
負け続けるのでした。
シンガポールの外交官が言うように、"a big fat loser(デブの敗者)"。
オリンピックの競技同様、委員会による一方的な変更もされ、日本人は次々と敗れてしまうのでした。
もう世界皇帝達の眼中には無いだろう。

このまま行くと、日本という国は通貨発行権も奪われるだろう。
TPPや郵政民営化により加速された財政破綻が到来し、株安・債券安・通貨安のトリプル安を経験する上、
5年以内にはIMFの管理下に入ると言われているが、それは経済的な主権も完全に失うということだ。
日本銀行の出資証券のうち、55%は日本政府が保有しているが、これも失うことになるだろう。
日本と呼ばれる国は、通貨までも世界政府に握られ、世界皇帝達とのIQや力の差を知らしめられてしまったのでした。

日本という国は、「30年後にもまだ残っていればいいね~」、「そうだね~」、という感じだろう。
その頃、日本語と呼ばれる言語を話す人々は残っているだろうが、日本という国が残っているという確証はどこにもない。
(仮に、残っていたとしても、それが国家と呼べるような代物かどうかは定かではない。)
「東アジアに存在する細長い火山列島の上にある国が日本である」ことに必然性はない、ということだ。
それは、アメリカかもしれないし、中国かもしれないし、はたまた別の国や、極端にはほぼ無人島かもしれない。
そうした可能世界(possible world)でも十分に到達可能(accessible)だ。(そうでなければ、安全保障という概念は不要だ。)
日本という国は、必然的に存在するのでもなく、たまたま存在するだけ。
天から降って来たわけでもなく、人によって作られたもの。
であるが故に、自分達で作り変えることもできるのだ。
これを「作為の契機(けいき, きっかけの意)(丸山真男)」と言う。
このまま「作為の契機」を体得できなければ、日本という国は、恐らく無くなるだろう。

まぁでも、日本という国が無くなることもそんなに心配する必要はないだろう。
ユダヤ人も世界中に離散した後、今のように国家を作っているのだから。
「作為の契機」を知るいい機会になるかもしれない。
うまく行けば、ユダヤ人のように2000年後くらいにはもう一度、日本と呼ばれる国が存在しているかもしれない。
啓典が無いため、日本人と呼ばれる人々や日本語と呼ばれる言語が存在しなくなってしまい、
そうしたことができない可能性も高いけど。
結果は、2000年後のお楽しみ。


次回も気が向いたら更新。