アルジャーノンに花束を | あしたはこっちだ!
2008-07-29 14:04:30

アルジャーノンに花束を

テーマ:書籍・DVD・CDレビュー
ユースケ・サンタマリア/アルジャーノンに花束を DVD-BOX

はい、こんばんは!!


さて今夜はドラマレビューです


このドラマは俺の中では、今まで見たドラマの中でも
「ケイゾク」「僕の生きる道」「タイガー&ドラゴン」
「ブラックジャックによろしく」などと共に
間違いなく10本の指には入る名作だと思います


原作は、全世界で900万部以上が売れ
”現代の聖書”とまで言われたという
アメリカ人作家ダニエル・キイス氏の同名小説です


このドラマは、医学の力によって天才になった
知的障害者の青年の”悲劇”を通して
「天才になることは、はたして人を幸福にするのか?」
という問いを提示しつつ、胸をうつ純愛をも描いた大感動作です
タイトルは「アルジャーノンに花束を」


<あらすじ>
生まれつき知的障害がある藤島ハル(ユースケ・サンタマリア)は
幼い頃に預けられたパン屋で、もう20年以上も住み込みで
働いていた。いつか母親が自分を迎えに来てくれるのを信じて…
そんなハルが通っている、知的障害者専門の学習クラスで教鞭をとる
養護教諭・エリナ先生(菅野美穂)は、IQは幼児なみだけど
心優しくて前向きなハルのことを、いつも温かい目で見ていた
ある日、大学教授の建部(益岡徹)とその研究チームから
驚くべき提案が、エリナ先生に伝えられる
「世界初の脳外科手術による知能回復の実験台になる知的障害者を
 あなた(エリナ)の教え子の中から1人紹介して欲しい」というのだ
ネズミへの実験は既に成功を収めていて、アルジャーノンという名の
そのネズミは、脅威的な記憶力・思考力を示しているとのこと
脳手術と聞いて、エリナは教授の提案に強く反発するが
ハルは「かしこくなりたい」と、自分から実験台に志願する
こうして脳手術によって、大天才になったハルではあったが
知能が上がっていくにつれて、周囲の人間との折り合いが悪くなり
また婚約者がいるエリナ先生に恋をしてしまったことで
ハルは激しく苦悩する。やがてハルは、アルジャーノンの知能が
急速に減退し始めていることに気がつくのだが…


これって、原作はすごく有名な小説です
俺も読みましたけど、たしかに傑作だと思います
ちょっと長くなるけど、まずは原作について話させて下さい


原作は、主人公の知的障害者チャーリーが書く
日記(=脳手術の経過報告)の形式をとっています
その文章は手術前は子供のように拙いんだけど
手術後は、語彙も豊富な知的な文章へと変貌します


ところが、自分より先に手術を受けたアルジャーノンの知能が
ある時を境に、急速に落ちていくのを見て
チャーリーは自分の運命を悟ります


再び知的障害者に戻る将来に絶望し、
天才になってから得た教養や記憶が失われていく恐怖に怯えて
自ら命を絶つことすら考えるチャーリー…


しかし、やがて彼は運命を受け入れる覚悟を決めます
徐々に、手術前の拙い文章に戻っていくチャーリーの日記…


IQが手術前の数値にまで完全に戻って
”かつて自分が大天才だったこと”も
”生まれて初めて恋をしたこと”も
何かも忘れてしまったチャーリーが
日記の最後に追伸を書き加えて、この小説はお終いです


「ついしん。どーかついでがあったらうらにわの
 アルジャーノンのおはかに花束をそなえてやてください。」


何度読んでも、悲しいラストだ…


というわけで、このあまりにも有名な原作を前にして
”ドラマ独自の視点を入れられないだろうか”という難題に
このドラマの作り手は、あえて挑んだみたいです
(↑この挑戦は大成功してると思います!)


知能が上がっていくにつれて、手術前には見えていなかった
他人の悪意や、自分への嘲笑にハルが気がつく所とか
急に天才になったせいで、精神面の発達が知能に追いつかずに
ハルが傲慢な性格になったりする所は、原作と同じですね


「自分は母親に捨てられたんだ」ということをハル(チャーリー)が
ハッキリと理解するシーンは、原作もドラマも涙なくしては
見れません(読めません)


それじゃあ、いったいドラマと原作とはどこが違っているのか?
1つには、ハルとエリナ先生(原作ではチャーリーとキニアン先生)
の2人の間に芽生える恋の描き方です


原作には出てこない、先生の婚約者を登場させたことで
先生に対するハルの想いは、原作以上に切なく描かれます
例えば…


ドラマの中盤、エリナ先生が婚約者とうまくいかなくなり
「婚約破棄か?」みたいな状態になるんですね
ハルは内心喜びます、そして期待します
「これで僕とエリナ先生が一緒になれるかもしれない!」と


ところがハルは知ってしまうのです
”自分に残された時間”は残りわずかだということを…
絶望し自暴自棄になり、婚約者に嫉妬するハル…


長い苦悩の果てに、ハルが出した結論は
「愛する先生に幸福になってもらいたい」でした
自分は身をひいて、先生が婚約者と仲直りできるように
間を取り持ちます


これには本当に感動しました、勿論原作には無いエピソードです、
全体的に”救いの無い話”だった原作とは違い、こんな風に
このドラマには、1つ1つの問題に対して必ず答えが用意されてます


原作は「誰にも理解されないチャーリーの孤独」がテーマですが
ドラマの方のテーマは
「ハルの周囲の人たちが手術(実験)をきっかけにして
 障害というものを真に理解し、互いに気持ちを通じ合わせていく」
だと思います


ストーリーの骨組みは同じでも、全く違うお話だと思います


でラストも原作とは異なり、ドラマはハッピーエンドになってます
ちょっと強引に思うかもしれない結末だけど
第1話からずっと見てきた人には、さほど違和感は無いかも?


脚本を担当された岡田恵和さんが、原作とは全く異なる
このエンディングにした意図は
1話から見てればきっと解ると思いますよ、きっとね


ちなみにこのドラマって、涙もろい人が見る場合には
全11話すべての回で、尋常じゃない量の涙を毎回消費すること必至!
傍らにはハンカチではなくタオルを置いて鑑賞しませう(笑


それじゃあ、今夜はこの辺で…


次回の更新は明日、7月30日(水)23:45:55~ です


いやー、外で体を動かした後ってすんごい量の水を飲んじまうね
ボルヴィックとかも買わなくはないけど、全然足りない(笑
飲み水全部を買ってたら破産するんで、我が家の浄水器はフル稼働!
ほなまた明日!!