@sin 78「離された手」 | 青くんの部屋

青くんの部屋

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今でも彼を愛してる。
その気持ちは少しも変わらないのに、潤の事も……愛していた。
あの事が翔くんに知られたら嫌われると思った。
嫌われて捨てられると…
彼から別れを告げられる事をあんなに恐れていたのに、実際にはオイラが別れを告げた。

毎日を不思議と普通にすごしていた。
笑うように求められれば笑ってポージング。
仕事はそつなくこなしていた。
翔くんが明らかに毎日お酒を飲んでいるのが心配だったけど、既に他のメンバーに指摘されたことを俺がくどくど繰り返すこともない。


潤が毎日オイラに何を食べたかと聞いてくるからいい加減煩わしいと言って逃げた。
不思議と腹はすかない。
それで家では何も口にしなくなっていた。


そんなもんだから…


『ちょっ…大丈夫なの?』


ふらついた躰を潤に支えられた。


「大丈夫だ。」
『嘘、何も食べてないんでしょ。』



そう言って、俺に夕食を食べさせると言ってきかなかった。
いらないって言うのに強引に付いて来ておいて、しつこい位 「何もしないから」 と繰り返す。


『大野さんの嫌がるような事は絶対しないからっ。』
「てか、面倒だから帰れば…。」
『蕎麦なら食べれるでしょ? うどんのがいい?



お前、いま無視しただろ?
潤には悪いけど、蕎麦は全くと言っていい程口に入らなかった。
当たり前か…
コレだけ毎日蕎麦ばかり…
そんな俺を心配そうな眸が見つめていた。
その眸を見ていたくなくて、彼を放ってそのまま寝室に逃げた。





◆◆◆◆◆





大野さんに朝食を用意する。
基本、ヨーグルトがあればいいから簡単だ。
やっと起きてリビングに来た。


「おはよう。」
『…おはよう。』


大野さんは 「いたんだ」 って顔をしていた。
でもめげない。
俺のせいでこんな事になったから。
二人が収まるところに収まるまで、あんたのそばにいる。
ニノと一緒に入院していいたせいもあるけれど、随分痩せた。

ろくに食べてないのが分かったから食事だけでも…


『仕事は?』
「俺は夜に一本。 休みでもちゃんと食べてよ。」


大野さんは無言のまま用意しておいたサラダを背中を丸めて咀嚼し始めた。
そんな姿は小動物を連想させた。
何でもいい。
食べてくれれば。
あの後、翔さんが大野さんに怒って乱暴な事をするんじゃないかと
散々心配したけど、実際はニノが病院に運ばれた。
翔さんが大野さんに乱暴したと勘違いしたニノが気持ちを押さえられなくなって、ブルーティアラに取り込まれた。
そしてそれをユウ達が助けたんだと聞いた。

一言もしゃべらない大野さんをチラリと見た。
翔さんは乱暴な事をしなかった。と、あんたは言ってたけど本当にそうならニノが暴走なんかしなかったはずだ。
そして…
なんで2人は離れているの?


「俺が翔さんに話そうか?」
『……何を?』
「だから…アレは智は何も悪くないだろ。
俺が…無理矢理…だから大野さんは被害者なわけだし…。」
『何でニノの事黙ってたの?』
「…。」
『あの時の事は思い出すのも嫌だから考えない様にしてた。

でも翔くんに話しながら不自然な事に気が付いたよ。
2人いたんだ。
あの時あそこに…。』


大野さんの怒りとも悲しみとも取れないモノを浮かべた眸が、真っすぐ俺を捕らえていた。