田中桔梗(ききょうぱんだ)です🐼🎋
 
今日はバレンタインですね~。
特に何も用意はしていないので、
4年前に書いた短編を置いておきます~。
 
もしかしたらまだ読んでいない人もいるかもしれないもんね?
お話の下に珍しくあとがき的なものを書きました~。
 
 
 
エリー王女のバレンタイン
 
 
 一月下旬、久しぶりによく晴れた朝。いつものように側近であるアルバートがエリー王女の部屋に入ってくると、エリー王女はアルバートの腕を掴んでソファーに座らせる。

「え? 何々?」

 アルバートがどうしたのかと驚いているのも構わず、エリー王女はその隣にすとんと座ると、期待の眼差しをアルバートに向けた。

「今年はチョコを作ってプレゼントしたいです!」

 そう意気込みを見せるエリー王女に対して、アルバートはたじろぐ。

「んぁ~? ああ、いいんじゃねぇの? 喜ぶっしょ」

 なんだそんなことかとアルバートが適当に答えるが、エリー王女は真剣な表情を崩さない。

「それで……あの……セイン様は甘いものは好きですか? 苦手なものはないですか?」

 良く考えたらエリー王女は、セイン王子のそういうことは何も知らなかった。アルバートであれば仲も良いし、何か良いヒントをもらえるのではないかと思ったのだ。

「甘いのは別に嫌いじゃねーはず。ま、エリーちゃんから貰えれば何でも嬉しいんじゃね?」
「いえ、どうせなら喜んで欲しいのでアルバートに相談しているのです……」
「あ~、そうだな~……」

 アルバートはセイン王子の喜びそうなことを思いついたが、流石に王女に対して『体にチョコを塗れば』とも言えない。横を見るとエリー王女がキラキラと瞳を輝かせている。物凄い期待感……。

「あ~……。あっ」

 アルバートは閃いた。




 ◇

 バレンタインに合わせて、エリー王女はアランとアルバートを引連れてローンズ王国を訪れていた。食事を終え、エリー王女はセイン王子の部屋を訪れていた。

「ここがセイン様のお部屋ですか……」

 エリー王女は初めてのセイン王子の部屋に少し緊張しており、きょろきょろと部屋を見渡している。部屋はローンズ王国の色でもある、紺色を基調とした落ち着いた部屋だった。

「わざわざ遠くから来てくれてありがとう。エリーがこの部屋にいるなんて、なんか不思議だね」

 セイン王子は自ら紅茶を淹れ、エリー王女に差し出した。

「アル先輩みたいに上手くは淹れられないけど、どうぞ」
「ありがとうございます。ふふふ、セイン様に淹れてもらえるなんて、なんだか嬉しいです」

 そう言いながら一口飲み、美味しいですと微笑んだ。

「あの……。今日はバレンタインですので、チョコを作ってきたのですが……」
「え? エリーが作ってくれたの? 凄く嬉しいよ」

 エリー王女は持ってきていた袋から横長のプレゼント箱を取り出した。

「セイン様……。大好き……です」

 頬を赤らめながら伝えてくるエリー王女に、セイン王子は今すぐにでも押し倒したい気持ちになった。しかし、そこはぐっと堪えプレゼントを受け取る。

「ありがとう、エリー。開けていい?」
「はい……」

 緊張しているのか、エリー王女はそわそわとセイン王子を見つめている。セイン王子が青いリボンをするりと解き、包装紙はがし、白い箱の蓋をゆっくりと開いた。

 中に入っていたのは、細長い棒状のクッキーに持ち手以外はチョコがコーティングされているお菓子だった。

「わぁ、美味しそうだね。じゃ、早速……」
「あ!」

 食べようとしたところをエリー王女がセイン王子の手を止めた。

「ん? まだ食べちゃダメ?」
「あ、あの……」

 何故か顔を真っ赤に染めて見つめてくる。そんな風に見つめられては色々と我慢が出来なくなるんだけど……。

「これは、その……恋人同士での食べ方があるそうで……」

 その言葉にピンときた。またアル先輩に吹き込まれたのか。しかし、恥ずかしそうにしているエリー王女を見るのは好きなので、セイン王子は知らないふりをすることにした。

「そうなの? じゃ、それで食べようか。どうやって食べるの?」
「はい……、それをお借りしても?」

 セイン王子が持っていたチョコを受け取りると、それをじっと見つめている。

「エリー? どうしたの?」
「え? はい……あの……ちょっと恥ずかしくて……」

 エリー王女は頬を染めたまま困ったように笑う。あまりにも可愛くて思わずにやけてしまいそうだったセイン王子は、手で覆って口元を隠した。

「あー……じゃ、普通に食べよっか?」
「あっ! いえ、そういうわけにはまいりません。大丈夫です! ……あの、では三秒ほど目を閉じていていただけませんか? その間に準備いたしますので……」

 少し焦った様子のエリー王女はそう提案してきた。思ったとおりの反応をしてくれるエリー王女をセイン王子は愛しく思う。

「うん。じゃ、数えるね。三、二、一……」

 セイン王子が瞳を開けると、瞳をぎゅっと閉じ、チョコを咥えて顔を突き出すエリー王女の姿があった。僅かにプルプルと震えてる。可愛いな。セイン王子は顔をほころばせる。エリー王女が咥えたチョコの先をセイン王子は焦らすようにゆっくりと食べて行く。

 徐々に近づいてくるクッキーのかじる音と振動がエリー王女の緊張と期待感を煽り、胸を高鳴らせた。気配であと少しだということは分かった。しかし、あと寸前というところでピタリと止まり、顔が離れていくのを感じた。

「うん、美味しい。じゃあ、もう一本食べてもいい?」

 目を開けるとセイン王子が微笑んでいる。

「はい……」

 期待感を裏切られたような少し残念な気持ちを残したまま、エリー王女はまたチョコを咥える。同じようにセイン王子がチョコを食べ、唇に触れる前に離れてしまう……。

 これは聞いていたのと違う。違うと思っているが、違うと言えないエリー王女は視線を落とす。

「どうしたの? 食べ方違った?」

 ちょっと腑に落ちない表情をしているエリー王女を見て、セイン王子は顔がゆるむのを堪えてそう聞いた。

「あの……」

 セイン王子は首をかしげて見ている。どう伝えればいいのだろうかとエリー王女が頭を悩ましていると、セイン王子がにこっと笑う。

「あ、じゃ、エリーがやって教えてくれる? はい」
「私が……ですか?」

 にこにことセイン王子が頷き、チョコを咥えて瞳を閉じる。少し躊躇したが、エリー王女はドキドキと高鳴る胸を押さえながら唇を近づけた。本当にこのまま口付けていいものだろうかと悩みながらゆっくり食べ進める。口づけは初めてではないのだからと、自分に言い聞かせて、徐々に近づくセイン王子を意識する。

 寸前のところでもう一度躊躇したが、意を決して唇触れるところまで食べた。しかし恥ずかしさのあまり、直ぐにセイン王子から距離を取る。どう思われたのだろうかと不安になり、口元を手で隠しながら上目遣いでセイン王子を見ると、離れたはずのセイン王子がすぐ近くまで来ていた。

「そっか。エリーごと食べて良かったんだ」
「え?」

 いたずらっぽく笑うセイン王子はエリー王女の手首を掴み、そのままソファーの上に組み敷いた。

「あ、あの……」
「それじゃ、いただきます……」

 セイン王子はエリー王女の甘い声を聞きながら、ゆっくり味わって行った――――。










―――恋するプリンセス ~バレンタイン編~ 完



 
 
 
 
 
ギルのバレンタイン
 
 エリー王女はセイン王子の部屋へ行ったため、アランとアルバートはギルの部屋を訪れていた。

「うわ、ギルの部屋、俺らの部屋より立派じゃね?」
「そ、そうですかね……。でも、確かに立派な部屋を用意して頂いてなんだか悪い気がしてます」

 アルバートは部屋の中を物色し、アランはソファーに腰を下ろした。来客室のように家具も細やかな装飾が施され、ソファーはふかふかだった。

「ギルはセインに可愛がられてるもんな」
「やっぱりそうですかね……? 側近待遇なのかなとも思いましたが……」

 アルバートが冷やかすように笑うと、ギルは嬉しそうに頬を赤らめる。

「まー、俺はそう思ってるけどな。んで、今日はアリスちゃんからチョコ貰ったわけ?」

 物色が終わったアルバートはどかっとソファーに座り、ニヤニヤとギルを見る。

「な、何言ってるんですか? 貰えるわけないですよっ! ああっ!」

 更に顔を真っ赤にするギルは、二人に紅茶を差し出す際にカチャカチャとカップを揺らし、紅茶を受け皿に溢した。

「なに? あんだけ一緒に行動しておいてなぁ~~~んにも進展がないわけ? かぁーー! 男ならもっとバシっといけよ!」
「自分に気がないのが分かってたらいけないですよ」
「なんだよ。それを振り向かせるんだろーが。ああいう自分でなんでも出来るような女は、母性本能をくすぐりゃーいいんだよ。……ってか、十分できてっと思うけどな……」

 後半部分は頭をひねりながら自分だけに聞こえるように呟いた。こいつが鈍感っていうオチじゃねーよな……。と、目の前にいるアランとギルを見たら思わず大きな溜息が出た。

「言うのは簡単ですけど……。ね、アランさん」
「……俺らはお前みたいに本能で動けないんだよ」
「ははは~、やることやってるアランには言われたかねーな~」
「そうなんですか?」
「いや……」

 純粋そうな瞳で見つめるギルにアランは何も答えられず、アルバートに助けてほしいというような視線を送る。

「じゃあよ、ギルからチョコあげりゃーいいじゃん」
「え? ダメですよ。無理です、無理。それってもう告白しているのと同じ――――」

 そこにドアを叩く音が部屋に響き、ぴたりと声を止める。

「ギルいる~? 私~」

 その声に三人は顔を見合わせた。

(なに? アリスじゃん。チョコ持ってきてくれたんじゃねーの?)
(そんなわけないじゃないですか。とりあえず出ますけど、変なこと言わないで下さいね)

 小声でそう話すとギルはドアまで駆け寄る。アルバートにそう言われると若干期待してしまう自分がいて、気持ちを落ち着かせるために一呼吸置いた。

「やあ、アリス。どうしたの?」
「うん。チョコ持ってきたから一緒に食べようかと思って」
「え?」

 アリスは大きな紙袋を掲げて見せて笑ってる。驚いているギルをよそに、アリスは部屋の中を覗き込む。

「あ、二人ここにいたんだね。ちょうど良かったぁ~。入るね~」

 二人に手を振りながらずかずかとアリスが入って行き、アルバートの隣に座る。

「なになに~。ギルにチョコ渡しに来たん?」

 肘でアリスをつつきながらニヤニヤ聞くと、アリスもにこにこしている。

「そうそう、二人のところにも行ったんだけどね、ここにいてくれて良かった。はい、これ。おすそわけ」

 テーブルの上に次々と沢山のプレゼントを置いていく。それはここにいる人数よりも数倍はあった。

「何か……多くね?」
「そうなの。毎年いっぱい貰うのよ。生菓子はすぐ食べなきゃいけないから一応厳選して持ってきたの。ね、食べるの手伝って」
「……にしても、四人で食べるにしては多すぎるな」

 プレゼントの山を見て、アランが眉間にしわを寄せる。

「アリスちゃん、そろそろ本命の彼女を作るべきだな……」
「そうね~。でも、可愛い子が多くて悩んじゃうのよね~……って、何でよ!」
「じゃ、誰もあげる相手はいないわけ? ま、ここにいるっちゅーことは、いねーんだろうけど」
「うるさいわね。どーせいないわよ! ってか、そういうのをセクハラって言うんだからね!」

 二人のやりとりを見ていたギルは、渡す相手がいないと分かると胸のうちで喜んだ。

「でも、俺達が食べてもいいの? アリスに食べてもらいたいんじゃない?」
「一人じゃ、ぜーったいに食べきれないからお願いします! 捨てるよりいいでしょ? このとおり!」

 ギルがそう尋ねると、アリスは頭を下げ両手を頭の上で合わせる。

「しゃーねーな。じゃ、この辺を貰っていくわ。俺らはまだやることあっから、部屋で食うわ」
「そう? ありがとう! 宜しくね~」

 アルバートはアランに目配せをして半分持って部屋を出ていった。二人きりになったギルは急に緊張し始め、アリスのお茶も用意することにした。

「今、お茶を用意するよ」
「ありがと。さて、どれから食べようかな~」

 アリスはいたっていつも通りだ。やはり男として見られていないのだろう。それでも、一緒に過ごせるだけでギルは幸せだった。お茶を差し出し、向かい側に座る。

 嬉しそうにチョコレートケーキを頬張る姿が可愛い。

 いつかお裾分けじゃなく、アリスから貰える日が来たら良いなと思って見つめていると視線が交わる。

「ん? これ食べたかった? いいよ。はい、あーん」
「ええっ!」

 驚いてるギルにアリスはにこにこと笑っている。冗談で言っているわけではないらしい。ドキドキしながらと、差し出されたケーキをぱくっと頬張る。

「甘い……」

 アリスから貰ったチョコは思っていた以上に甘かった――――。






―――恋するプリンセス ~ギルとアリスのバレンタイン~ 完
 
 
 
 
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この話は本編が終わった後の最初のバレンタインのつもりで書いています。
本編は秋にバフォールを倒し、
冬はエリー王女のクリスマスがあります。
そのあとのお話ですね。
 
なので、この時はもうアランくんはハッピーエンドを迎えています。
(アラン恋愛編の話ね)
どんな経緯で結末を迎えるのかはわからないけど、
6月末には第一子誕生しますね♡
アラン似のノアくんです°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
 
子供たちの話もいつか書きたいんだけどなぁ~
 
セイン様とエリー様は結婚する前も結婚した後もなかなか会えないので、
会えばイチャイチャしちゃう( *´艸`)
そういうイチャイチャをまた今後も書きたいな~。
 
バレンタインのこのお話、本当はもう少しブラッシュアップするべきなんだけど、
今回もせずに終わってしまったな~。
今見ると気になるところが色々とあるw
そのうち直します~。(いったいいつになるのやらw)
 
ギルとアリスはまだまだ暫くじれじれしますゆえ、
色々といじりがいはありそう♡
 
アル先輩は物語を上手く動かしてくれるので、
いてくれると本当ありがたい(*'ω'*)
彼がハッピーエンドを迎えるのはいったいいつになるのか……。
 
 
あああ、なんか書きたいなぁ~~~!!!!
恋プリ書きたいな~~~~!!!!!
 
誰か私に恋プリ接種させて~~~~~
イラストやらなんやらほしぃ……w
 
 
 
 

 

 

 

■参加予定企画

なし

だけど遊パチママさんの企画、出来たら参加したい…

 

 

 

 

 

 

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(アメブロは本編掲載中)
小説「恋するプリンセス ~恋してはいけないあなたに恋をしました~」あらすじ&目次
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恋プリ公式サイト

☆診断「今日は恋プリキャラと何をする?」☆


「小説家になろう」というサイトで小説を投稿しています。
一気に読みたい方はこちらから(↓)ご覧ください(๑•̀ㅂ•́)و✧
【完結済み】恋するプリンセス ~恋をしてはいけないあなたに恋をしました~
 


【連載中】恋するプリンセス ~アラン恋愛編~ 

【連載中】恋するプリンセス ~番外編とかいろいろ~

【完結済み】恋するプリンセス ~エリー王女のクリスマス~

【二次創作】恋するプリンセス ~ジェルドの任務報告書~

 

 

 

 

 


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