「ジャズと映画とベースボール」95 E.T. | JAZZ&Coffee kikiのブログ

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未知のものに向かう時、基本的には好奇心が上回る。「怖いもの見たさ」ということかもしれない。地球外の生物に対して、映画人はこれまでいろいろな形で作品に登場させてきたが、恐怖をテーマにするよりファンタジーの方に好感が持てる。気味悪くて怖いのは、どうも性に合わない。

「E.T.」(1982 スティーヴン・スピルバーグ)は、宇宙船から置いてきぼりをくらった「地球外生命体」(宇宙人)と少年の心の通い合いをほのぼのとコミカルに描く物語だが、宇宙人を子どもと交流させることで素敵なファンタジーに仕上がったと思う。これが大人だとこううまくいかないかもしれない。警戒心が上回ったり、敵視したりでおおよそ不穏な空気が満ちてしまう。子どもは、虫などの生き物を簡単に殺してしまう残酷な面も持ち合わせてはいるが、一方で大人が感じる障壁を簡単に飛び越え、純な好奇心で宇宙からの生命体と接することができる。スピルバーグの描く交流は無理なく、自然で見るものをすんなり作品世界に導き入れてくれる。

そして、あの名場面が訪れる。月はファンタジーの象徴である。昔から人は月の世界を夢想、空想し、そこにさまざまな物語を作ってきた。その大写しの月にE.T.のパワーで舞い上がった自転車の少年がシルエットになって映し出されていく。

E.T.はやがて迎えに来た宇宙船で旅立っていくが、宇宙人は迎え入れる心づもりがあれば、きっと友好的にどこからか現れてくれるような気がする。ファンタジーの世界に子どもが登場するのは、子どもの心がいつも宇宙に向かって開いているからだと思う。そう、子どもの心はいつも空想に満ちている。(12月29日)