【舞台演出家 小池博史ロングインタビュー その6】 | 小池博史ブリッジプロジェクト公式ブログ

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【舞台演出家 小池博史ロングインタビュー その6】

新型コロナウイルスの影響で舞台業界も実際に上演が不可能になり、
オンラインでの可能性を探っている劇団が増えています。

 

Q:この状況下で舞台芸術の世界はどうなっていくと思いますか。
 

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「いや、ぜんぜん良くないと思う。舞台もどんどん商業寄りになってきて、
一方向だけに向かってる。そういう時代にあって、これからも作り続けていくことが果たして可能なのか、と思うよね。
観る側も忙しくなってきているからなかなか芸術に親しむ機会がない。
忙しいということは、経済とも密着していてね。急がないと経済的に追いつかなくなってきてしまったんだよ。

あとは舞台作品の制作・上演に資金を出す側の人は、その人たちが「わかりやすく説明できるもの」を求めるようになってきているんだよね。わかりやすい作品にお金を出す、ということになる。でもそうなると想像することがなくなるから脳を使わなくなる。

 

Q:4月から小池さんは大学で教鞭をとりますね、どんなことを学生に伝えたいですか。

 

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「例えば会計士、弁護士という仕事はこれからなくなっていくと思うんだよね。これらはコンピューターの代替が利く。銀行なんかもそうで、そんなに人員がいる必要がないんだよ。

時代はどんどん変わっていて、今後人類はシンギュラリティ(技術的特異点)という時代を迎えていく。なんでもコンピューターがやるようになる。そうなったとき、何が人間だからできることの証になるのか。

 

結局大事なのは、自分の頭で考えられることであり、クリエイティビティであり、どう新しいものを見出していくか。
こういう視点がなければ、確実にコンピューターに支配されるようになってくる。これまでの時代もコンピューターに支配されてやってきたわけなんだけど、そんな中でどんどん子どもたちが不安をもつようになってくる。そりゃそうだよね、何を持って希望と言っていいのかわからなくなってくるわけだから。
 

昔はそれこそ憧れの職業というのがあって、例えばそれになれるように、出来るようになるまで頑張っていた。でもAIが台頭してくればパイロットとか運転手だとかそういう仕事がなくなってしまう。その中でビジネスの仕方も変わってくるだろうし、人間がどう生きるか、も変わってくると思う。

生きるエネルギーを持っていないと確実に人間は追いやられる存在になってしまう。そこで大事なのは「考える頭」これを持たないと簡単に追いやられるね。早晩崩れ落ちる。
安全、安心の中で生きることを続けているとね。サラリーがもらえなくなったら、私は生きられないという風になってしまう。

 

自分で考えて生きている人はさ、例えば海外でよくあるけど、何か一つやるにしても相手にものすごい質問を投げかけてきたりするんだよ。

でも、日本人はできるだけ静かにしているのがよい、

目立たないほうがいいという感じでしょう?

 

学校の先生でもそうだよね、特殊なことをやらない人が先生になっていく。

例えばハーバード大学なんて面白いと思うんだけど、あの大学はただ勉強ができる人ばかりを入学させているわけじゃないんだよね。一芸に秀でているとか、何かひとつのことを一生懸命やってきている人をとっていたりするわけ。

世界というのは実はそんなバランスで、面白くない人間ばかりを集めているばかりじゃないんだよね。

僕が子どもの頃に生きてきた環境がそれに近いんだろうな。あそこにはいろんなやつらが集まっていて。
子どものときの環境が、今こう思うほどに影響しているんだと思うんだ。」



【interviewer kazue】