舞台演出家 小池博史ロングインタビュー その3 | 小池博史ブリッジプロジェクト公式ブログ

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稽古情報や制作の日記などを書いていきます。

【舞台演出家 小池博史ロングインタビュー その3】

 

本日のロング・インタビューは、小池が舞台演出家を志すまで、
そして演出家になったのちにもさまざまなアートや現場での
体験がもたらしてくれているものについてこんなことを語っています!


(若かりし頃の小池)
 

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Q : 料理人や船乗りになりたかったと聞きましたが、そのほかにもなりたいものがあったようですね

 

「建築家になりたいと思ったのはガウディの建築をみてから。建築っていうものの概念というのがまるっきり変わったんだよね。なにこの内臓みたいなもの?みたいな。クジラの内臓の内側みたいなものをデザインにみて、ああ、これは可能性というやつだ、と思ったわけ。これは人間の可能性だなと。そういうものを自分自身が欲したから、建築もやりたいと思ったんだよね。

映画を撮りたいと思ったのも、フェリーニの作品を観て、なんだかストーリーもわかんないのにすごい感動したんだよ、この感動は一体どこからやってくるんだろうと。そういう体験が自分自身を育ててくれたんだよね。

読んだ本でもなんでもそう。僕はすでにわかっていることを再確認でするのではなく、わからないことをポンと見せられたことに感動するみたい。

音楽もそう。シューベルトの『未完成』という曲をフルトベングラーという人の指揮で演奏したものをレコードで聴いて、本当にびっくりしたよね、もう、もののけがうわっと出てくるのではないかという感じだった。

この感覚って何だろうと思うよね、『未完成』から別の魂が出てくる。

舞台作品もさ、それが演劇というジャンルに留まらず、それは音楽でもあり、新しい照明の使い方であり、空間の彫刻であったりするのがとても面白いだろうなと思うんだよね。」



Q : 安部公房スタジオの作品を観て驚いたという話がありましたが、安部公房自身も、作った戯曲を舞台作品として作るのではなく、まずは舞台に必要な俳優とか照明とか装置とか要素を置いてみて、はじめてそこから創作を始めると言っていたことがあったようです。

小池作品の台本を見ていると、イメージのスケッチを描いているように見えることがあります。台本のままを舞台にのせるのではなくて、壊したりまた構築したりということをしているようですが。

 

「例えばさ、演者があるとき突然面白い動きをしたり、例えば帽子を被ってきたり、何か面白いものを持って来たりすると、空間が変わる。出演者の様子が変わることで空間全体が変わる。音も同じで、だから何だかちょっとダメだなと思うと自分で変えていったりもするし。

それはいつも時間と空間と身体のせめぎ合いなんだよね。僕の場合。

どういうふうにひとつひとつの要素に向かい合っていくかという。自分の中で違和感が生じたらその瞬間で変えていく。違和感をいかにキャッチしていけるかということも舞台創作では大事なことだと思うんだ。」

 

Q : これまでの舞台作品制作の中では、既存の文学作品、例えば泉鏡花とかそういう人の作品からインスピレーションを受けて作った、という作品もありますね。マハーバーラタのような大きな作品を題材にするときにはなかなかインスピレーションで創作するということは難しいと思うのですが、どのように創作するのですか。
 

「今までの作品もマハーバーラタも同じだよ。
昔『城~マクベス』という作品を作ったことがあるけれども、題材としてマクベスでもそのとおりにやる必要はない。必ず自分で書き替えて、自分の言葉で書く。
だからいつでもinspired byなんだけど。

そういうことを考えていくと、マハーバーラタを生かすことはするだろうけれども、それをそのままやったって意味はないんだよ。そう考えると、言葉を並べるだけでは無理がくるんだよね。いかに新しいことができるか・・・僕はそのための新しい言語を生み出していきたいんだよ。

でも、日本は既存の枠組みの中でいかにできるか、を考えてしまうけれども。」


 

Q : “創作は己にはじまり、己を超えていく作業である”という話をしていたことがありましたね。確か、かつて「Ship in a view」という作品をアメリカで公演した際にパフォーマーのおひとりが来られなくなり、小池さん自身が出演したということを思い出したのですが、これもそんな作業のひとつでしょうか。
 

「それはもう、問題が生じた時に代替案を考えなくちゃいけないわけじゃない?
悩んで苦しんでいる暇があるんだったら、その先を考えたほうがいいわけで。だって照明家とか音響家とか舞台監督ももう公演のために動いているわけじゃない?

じゃあ、来られなくなった人の代わりに誰がいるか?その公演のときは俺しかいないから、俺が出るしかない。即、動かなきゃいけない。そこでごちゃごちゃ言うのは格好悪いから嫌だし。」



Q : 実際、ご自分が出演してみてどうでしたか
 

「それはまあ・・・いいでしょう(笑)でもまあ、すごかったよ。大劇場だったし。突然大劇場で、2ステージか・・・4ステージかあったのかな。それで僕も踊ってね(笑)

当然ダメ出しをくらうわけだよ。みんなももう、ここぞとばかりに。それだけは嫌だったなあ。ダメだされても無理なものは無理だよって。演者はぷぷっ、とかって傍で笑っているし。

でもそれはとてもいい経験になってね、演出家は常に全体を見る立場にいるもんなんだけど、その時は見る側には立てないじゃない。俺自身が舞台上にいるわけだから。

でも、その時舞台上から見た光景は今でもとても覚えているね。そりゃあ美しかったね。
こういうことを言うとみんな馬鹿にするんであんまり言いたくないんだけどね。」


インタビュー書き起こし:kazue


小池博史の演出論がオンラインで開催中です!

全授業録画するため、前日参加できなくても問題ありません。
7月3日まで最終募集いたします。

 

小池博史オンライン講座《舞台と演出の根源を探る》

 

 

開催日時

6月26日(金)→録画視聴可能!

7月3日(金)

7月10日(金)

7月18日(金)

7月24日(金)

 

19:30〜21:30

zoomでの開催

 

参加費

10,000円(税込・全5回) 

別途、本代2,750円(税込)が必要

 

第1回目 第一章、第二章《舞台芸術とはなにか、舞台作品を演出する》

第2回目 第三章《空間について》

第3回目 第四章《時間について》

第4回目 第五章《身体について》

第5回目 第六章〜第七章《物語喪失時代にあっての物語とは〜百年の孤独に至るまでの経緯、新しい舞台芸術への提言》

 

上記のように本の章をベースに授業を展開しますが、本から離れての展開もあります。

 

お申し込み締め切り

7月3日(金)

 

 

《 必須 》

書籍「新・舞台芸術論」2,750円(税込)(水声社刊)

 

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事前にご購入ください。また初の講座の前までに読んでおいてください。

全編でなくても、第一回目ならば第一章と第二章は読み終えてください。

すでにお持ちの方はご購入の必要はございません。

 

 

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非公開でグループを組みますので
フェイスブックのアカウント名が必要になります。

 

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〒165-0026東京都中野区新井1-1-5 1F 小池博史ブリッジプロジェクト

TEL:03-3385-2066 

 

 

小池博史プロフィール

 

 

小池博史(演出家・作家・振付家) 

「小池博史ブリッジプロジェクト」主宰。舞台芸術の学校(P.A.I.)校長。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科教授。 1982年「パパ・タラフマラ」設立。演劇、舞踊、美術、音楽、建築等、ジャンルを横断しながら空間を築き上げる手法で、国際的に高い評価を確立。3.11を受けて、翌2012年5月にパパ・タラフマラ解散。すぐに「小池博史ブリッジプロジェクト」を立ち上げ、作品を創作しながら、若手表現者の育成と芸術文化事業を手掛けるなど、活動は多岐に渡る。現在まで約80作品を10か国で創作、40か国で公演。「新・舞台芸術論」「からだのこえをきく」(新潮社)、「夜と言葉と世界の果てへの旅」(水声社)等4冊を出版。

 

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