義母から「大好きな小説」といって勧めてもらったネビル・シュート『パイド・パイパー』。
何の前知識もなく読み始めたら、予想外の感動が待っていました。
あらすじを紹介すると…
時は1940年夏。現役を退いたイギリスの老紳士が、フランスの山村で釣り三昧の旅を楽しんでいたが、戦局が悪化し、帰国を決意する。同じホテルに泊まっていたイギリス人の若い母親から、二人の子供を、いっしょにイギリスに連れ帰るよう頼まれてしまう。
しかし、戦争の影響で、電車や港は次々に封鎖され、イギリスへ戻るための子連れの大冒険がはじまる。
パイド・パイパーとは、ハーメルンの笛吹きのことなのだそうです。一行には老紳士の温かい人柄のせいで、子供がほかにもどんどん加わってきます。
作中の子供たちは、熱を出したり、チョコを欲しがったり、話しちゃいけないところで英語を話して身元がばれそうになったり…子供ならではのトラブルが続出で、子育て中の私たちは身に詰まされること請け合いです(笑)。
老紳士は本当に誠実な人柄の持ち主で、なんとか、子供たちを無事にイギリスへ連れ帰ろうと、必死の苦戦を強いられます。旅の途中では、息子(若くして亡くなってしまい、老紳士はその傷心を慰めるためにフランスへ旅に来ていた)の恋人とも知り合うなど、若い二人のロマンス話も織り込まれます。
作品が書かれたのが1942年で、戦争が悪化する前の古き良き時代の描写もあり、往年の少年冒険小説(十五少年漂流記とか)や、吉田健一訳で読んだ『ブライヅヘッドふたたび』なんかも、思い出したりしました。
また、義母には以前、『おばちゃまは飛び入りスパイ』を勧めてもらったこともあり、こちらもまた、人生経験豊富なお年寄りが、常識力と辛抱力だけを頼りに、大移動&大冒険をする話で、通じる部分がありました。
魅力的な常識ある人物像、小市民の善良さと誇りが描かれた『パイド・パイパー』や『おばちゃまは飛び入りスパイ』は、推理小説の枠を超えた名作だと思います。
秋の夜長にいかがでしょうか?!
いいネ西宮
『パイド・パイパー』
『ブライヅヘッドふたたび』
『おばちゃまは飛び入りスパイ』