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心理コンサルタントの白瀧です。
さて、以前に、『他人の災難を喜ぶ脳』と題して、
うそや窃盗、公共物破損、弱い者いじめといった経歴を持つ少年が、人が苦痛を感じる状況を描いた短いビデオを見ている時に、報酬を得る脳の部位が活発に働いていた、
という実験の結果をご紹介しました。
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しかし、残念ながら、この人の災難を喜ぶという特質は、何もいじめっ子に限ったことではありません。
他人の不幸を見て喜ぶのは、私たち人間の本質的なものでもあります。
俗に言う、『他人の不幸は蜜の味』というやつです。
このことは、大学生を対象にした次のような実験によって明らかになっています。
実験では、被験者に、被験者本人が主人公であるシナリオを読んでもらいます。
この主人公は大学生で、学業成績や経済状況などがごくごく平均的です。
そして、このシナリオには、以下の3名の人物が登場します。
学生Aは、被験者と同性で、進路や人生の目標や趣味が共通で、かつ被験者よりもすべてにおいて優れています。
つまり、自己との関連が高くて上級。
学生Bは、被験者と異性で、進路や人生の目標や趣味が全く異なっているが、被験者よりもすべてにおいて優れています。
つまり、自己との関連が低いが上級。
学生Cは、被験者と異性で、進路や人生の目標や趣味が全く異なっているが、被験者と同様に学業成績や経済状況がごく平均的です。
つまり、自己との関連が低くて平均。
このようなシナリオを読んだ後、被験者の学生A、BおよびCに対する脳の活動を計測し、その後、それぞれの学生に対する妬みの強さを評定してもらいます。
それによれば、学生A、B、Cの順に妬みの評定が高く、それに呼応するように、身体の痛みに関係する前部帯状回という部位が活動していました。
これにより、この部位が、身体の痛みだけでなく、心の痛みである『妬み』にも関係していることがわかったのです。
そして、この部位の活動は、学生Bに対するものよりも、学生Aに対するものの方が強く、また、妬みが強い被験者ほど活発に活動していたのです。
つまり、強い劣等感を感じていたということになります。
その後、被験者には、学生AとCに不幸なことが起こるシナリオを読んでもらいます。
たとえば、所有する自動車にトラブルが発生するとか、恋人が浮気をする、などといったものです。
そのときの被験者の脳の活動を計測し、学生AとCに起こった不幸に対して抱いたうれしい気持ちを評定してもらいます。
その結果、学生Aに起こった不幸に関しては、うれしい気持ちが報告されたのに対して、学生Cに起こった不幸にはうれしい気持ちは報告されませんでした。
それに対応するように、人の報酬に関係する線条体という脳の部位が、学生Aの不幸に対しては活動が認められたが、学生Cでは認められませんでした。
また、不幸に対するうれしさを強く感じる被験者ほど、線条体の活動も高いということもわかりました。
つまり、うれしく感じれば感じるほど、優越感を強く感じていた、ということです。
さらに、注目すべき点は、前部帯状回の活動が活発で妬みを強く感じていた被験者ほど、他人の不幸を喜ぶ線条体の活動が高いという相関関係があったことです。
これにより、強い劣等感を抱く人ほど、優越感を強く欲することがわかります。
この実験によっても、「人は劣等を感じれば優越性を追及したくなる」という人間の持つ本質的な部分が明らかにされています。
そして、問題は、それが適切な方法であるか、それとも不適切な方法であるか、ということなのです。
もちろん、他人の不幸を蜜の味に感じるのは、不適切な優越性の追求と言えるでしょう。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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