認知行動療法では、感情は、一次性感情、二次性感情、道具的感情の三つに分類されます。
●一次性感情とは、ある刺激に対して最初に純粋に起こる怒りや悲しみ、喜び、不快、嫌悪などの感情のことです。
●これに対して、道具的感情とは、他人に影響を及ぼすために利用される感情であり、例えば、相手を支配したいがための怒りであったり、相手の同情をひこうとする悲しみなどです。
これは、劣等感から来る過度の競争意識など、自分の劣等感を不適切な方法で補償し歪んだ優越感を得ようとするものであり、劣等感を適切な方法で補償できるようになればなくなるものです。
●最後に、二次性感情は、認知行動療法が問題としている感情で、一次性感情を自分で評価したり、分析したり、解釈したりするために起こる感情のことです。
例えば、怒りに対して「自分はなぜこんなに心が狭いのか」と評価して落ち込んだり、ある出来事に対して不快な感情を抱いたときなどに「楽しめない自分がダメなんだ」と自分を責めたりする感情であり、これがうつ状態の原因になったりします。
それ故、一次性感情を評価したり、分析したり、解釈したりせず、そのまま受け入れて体験するようにすれば、二次性感情の発生を防ぐことができるのです。
また、認知行動療法では、感情はある目的や目標を達成するためにあると考えられている。
従って、感情を評価したり、分析したり、解釈したりせずに、その感情に意識を集中してそのまま体験することにより、その感情が持っている欲求や要求に気づくのです。
つまり、何に対してその感情を抱いているのか、その感情により何を達成しようとしているのかなどに気づくことが大切なのです。
人間の認知機能は、不安定な未来に適切に対処できるように進化してきたのです。
つまり、常に未来を予想するようにできているのです。
従って、うつ状態の人は、現在の状況に絶望しているのではなく、現在の体験を通して、自分の将来に絶望しているということです。
状況を評価したり、分析したり、解釈したりせずに、常に「今、ここ」を心がけることは、他人とのコミュニケーションにおいても重要です。
他人との会話の中で、相手の言動や態度を評価したり、分析したり、解釈したりすると、目の前の相手と直接会話しているのではなく、自分の心の中の相手のイメージと会話していることになってしまうのです。
「今、ここ」に注意して、相手をそのまま体験できれば、相手のそのままの存在に気づくことができるのです。
関係ないですが(笑