海に落ちた話 | キドラの憂鬱と微笑

キドラの憂鬱と微笑

施設の介護の事 特に 認知症ケアの事
自分史 振り返り
ファンタジー文学

余市町沢町の頃

近くに水産試験場という

建物があって

その向こうに防波堤

防波堤の下に石や岩があった

小学校に入る前だったから

余市に来て、

日が浅い頃だったのだろう

他に数名子供達がいたが

始終遊んでいた記憶はない

だから

その時だけ一緒に遊んでいたらしい

そもそも小児喘息だったので

幼稚園など行かず

近所に友人らしい友人はいない

だから、

その時いた子供達は

その時だけ遊んでいたのだろう

鏡の国のアリスのなかの

名無しの森のように

何者か認識せずうちとけてしまう

時がある

名前を意識せず

無記名で溶け込みあう

きっと子供の能力なのだろう

その時もそうだった

そしてその子供達と

防波堤の下の岩場を

ピョンピョン飛んで遊んでいた

夕張から越してきたばかりで

多分、海はほとんど初めてだった

と思う

楽しかったのだろう、

その時、恐怖心は全くなかった。

濡れて海草のついた岩に

ジャンプした時、

足が滑った

そのまま、岩場の下の海に

バシャンと落ちる

多分、

泳ぐという概念もなく

浮くという意味さえ知らず

息も出来ないので

ただ手足をバタつかせる

運が良かったのは

引き潮だったのか、

元から浅瀬だったのか

もがいているうちに

立てた

深さが小学校入学前の子供の

腰までもなかった。

びしょ濡れになって家まで帰った

泣いていた記憶はないし

何か嬉しい気持ち

だったような気がする

それが

他の子供達と遊んで楽しかった

からなのか

海の遊び場が楽しかったからなのか

溺れずにすんだ喜びなのか

もう思い出せない。

今考えると

よく他の岩に頭をぶつけなかったな

とか

よく浅瀬だったなとか

運の良さを感じる