函館ちゃんちゃんこ物語58(3)
学内ソフトボール大会。
道場海峡男の地理研究室は、昨年度の準優勝チームである。
今年こそはと、
悲願の優勝目指して臨んだ大会の決勝が始まった。
地理研は、1回の表のチャンスにクマさん伊藤のホームランなどで3点を先制。
しかし、すぐに数学Ⅱ研チームに1点を返され、
ノーアウト2塁のピンチとなった。
「ちゃんちゃんこ軍団の下心」
ピンチに集まったマウンドで、キャッチャーの大田勇から「もっと頭を使え!」と気合いを入れられ、
「俺は頭脳派ピッチャーなんだ」
単純なピッチャー中田文司は、その一言で生き返った。
そういえば、あのおしゃべりでうるさい中田が、1、2番には一言も言わずに投げて、連続2ベースを打たれた。1回の表に思いがけず3点をリードして、さすがの無神経中田でも守りに入っていたのかも知れない。
結局その後は、いつもの頭脳派?中田に戻ったようで、
「さてさて、3番バッターはどなたさんで?」
「ほほう、あなたでしたか」
「お次は4番バッター、どなかよん?」
「そして5番バッターは、どなたご?」
「なかなか、さすが数学Ⅱ研でございますのお」
と、・・・・。
数学Ⅱ研が誇るクリーンアップ、いや大会史上最高と言っても過言ではない3人を、なぜかイージーな内野ゴロに抑え、1失点だけでしのいだ。
思い込みというのは恐ろしいものだ。。。
頭脳派?ピッチャー、神童中田文司は意気揚々とベンチに引き上げた。
地理研ベンチの後ろには、けっこうたくさんの応援団がいた。学食の美少女は別格として、地理研の多くの男女学生たち・・・。来ない奴らは・・コンパで・・・!!痛い目に遭うはず!!(暗黙の強制?!)
英語研チームとの1回戦の時は、ちゃっかり向こうで彼氏の応援をしていた安子貴子と、その友だち野々村も今は地理研チームにいる。野々村と言えば「ちゃんちゃんこ深間」も、さりげなくいた。
そして社会科つながりの哲学科のお嬢様、横野がいるかと思えば、ちょっと離れて、先日五稜郭で討ち死にした「ちゃんちゃんこ間本」もなぜか。
ふと、敵陣・数学Ⅱ研チームのベンチを見ると、「ちゃんちゃんこ山高」がいる。近くには、安子の友だちの白沢が・・・白沢は数学研究室だから、当然と言えば当然。
しかし、あの短足禿げの「山高」がなぜ数学Ⅱ研の応援にいるのだ???
もしかして山高は??・・・白沢を・・・!?
道場海峡男は、いつになく冷静に分析した。ちゃんちゃんこ軍団の奴らは、みんな下心丸出しだ。
そんな不純な連中はさておいて、学内ソフトボール大会決勝は、いよいよクラマックスに近づいていく。
続きます
※おことわり
この物語は、実際にあったかどうか疑わしいことを、作者の老化してぼんやりした記憶をもとに書かれていますので、事実とは全く異なります。登場する人物、団体、名称等は、実在のものとは一切関係はありません。
また、物語の中の写真はすべてイメージです。
「函館ちゃんちゃんこ物語」
毎年届く年賀状。その中には学生時代の懐かしい仲間のものもある。いつの間にかみんな年を取った。
道場海峡男(どうばうみお)は、本棚の隅から、色あせた大学の研究室の機関誌「学大地理」を取り出した。40年前の懐かしい思い出の数々が鮮明に蘇って来た。
研究室の仲間、ちゃんちゃんこ軍団の同志、4年間の輝く函館の歴史がここにある。