函館ちゃんちゃんこ物語24「開かずのカーテン」 | 海峡kid.の函館ちゃんちゃんこ物語

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 函館ちゃんちゃんこ物語24

 

「函館ちゃんちゃんこ物語」
毎年届く年賀状。その中には学生時代の懐かしい仲間のものもある。

ここ数年多くなったのが、「退職」の知らせだ。いつの間にかみんな年を取った。

道場海峡男(どうばうみお)は、
ふと、大学の研究室の機関誌「学大地理」を本棚の隅から取り出した。
色あせた機関誌だが、一瞬のうちに学生時代の記憶が蘇り、心がときめいた。

 

 

「開かずのカーテン」
 

道場海峡男は目が覚めた。

寝たのは何時だったのだろう。
昨夜の函館山の夜景が目に焼き付いている。


地理研伝統の「決死の函館山登山」を終え、居酒屋で二次会。
 

花見でしこたま飲んだ酒と、登山の疲れと山頂の日本酒で、もうできあがっている状態での二次会。海峡男も、中田文司も、長老奥出大蔵も、1年生の、朝5時場所取り部隊の3人も、みんな元気に振る舞ってはいたが、もう魂はどこかに飛んでいた。


二次会が終わり、みんなで店を出て、十字街から函館駅前、大門を通って、それぞれ途中で別れ、階級男はどこかに寄って一休み。



 

それから松風町を通って・・・・自宅到着。
・・そうだ、歩いて帰って来た。途中まで誰かがいて、最後はひとりになった・・・。ほとんど意識はなく、本能で巣に向かっていた。

函館山に登ったのにもかかわらず、十字街から宮前町の家まで本能で帰ってくるなんて、誠に体も脳も元気な若者、道場海峡男であった。

 



 

次の日は月曜日、もちろん大学は平常営業である。大学の講義はもちろん定刻に始まる。しかし、海峡男の家の小さな窓は、カーテンが閉まったままだった。

向かいの地理研究室から、仲間が海峡男の部屋を眺めていた。声が聞こえてきそうだ。

「おおい、朝だぞ!」
奥出の年老いた情けない声。
「海峡は、きっと今日は完全休養だな」
神童中田文司のあざ笑う声。
「そだねえ~」
眠り姫安子貴子の半分寝ている、けだるい声。
昨日転落した伊藤正盛も元気な姿を見せている。
それぞれ、昨夜のけっこうなダメージが残っているはずなのに、みんなシャキッとしていた。それに比べ海峡男は・・・。

「気の利いた仲間は、きっと代返しているはずだ」
朝になったことも、今日は月曜日ということも、授業があると言うことも、海峡男はみんな知っていた。
その日の海峡男の部屋のカーテンは、夕方になっても閉まったままであった。



 

「函館の夜景はやっぱりきれいだった!」


続きます。



 

※おことわり
この物語は、実際にあったかどうか疑わしいことを、作者の老化してぼんやりした記憶をもとに書かれていますので、事実とは全く異なります。登場する人物、団体、名称等は、実在のものとは一切関係はありません。
また、物語の中の写真はすべてイメージです。