閑話休題 100年の孤独② | 婦人科備忘録

婦人科備忘録

ある婦人科医の独り言です

お答えを読む前に注意喚起しておきますが

私は既婚・子あり(成人済)の女医

そもそもご相談されてきたマダムが

一番苦手としている人種であるだろうと推測されます。

そんな立場の人間が、好き勝手お返事を書くことを

まずはお許しください。

 

自分で言うのもなんだが周囲には

恵まれた人だなあと思われているでしょうし。きっと。

だってかわいいしぃ(言った♥)けけけ

 

冗談はさておき。

お答えいってみよー

 

************

「綸言(りんげん)汗のごとし」

という言葉があります。

 

えらい人の言葉は

汗のように

いったん出したあとは

引っ込めることができない

 

という意味ですが

恐れおおくも私たち医療者も

該当してしまいます。

 

その実、偉くもなんともないのでその影響力を

すっこーんと忘れちゃってることが

問題となること多数。

白衣を脱いじゃえばきっと誰しも

年齢相応のろうにゃくにゃんにょ(老若男女)

に過ぎないのですが

私の医者人生、期せずして

「今、他人の人生を大きく変えちゃった??

 どうしよう~(悶絶)」の

心当たりが割とありまして

滅多なことはたとえ軽口でも言えんなあ、

とは思います。

たまーに言っちゃうけど。(言うんか!)

 

なので、それでなくても満身創痍のマダムに

「推し活」言ってのけた女性医師には

はしゃいでんじゃねえよ

口を慎め 怒

思いますが

(明るく人懐こい人

 なんだろーなー、

 きっと)

マダム、キビシイことを申し述べると

あなたにも少しだけ

思考の転換が必要か、と思います。

 

あなたは自分を惨めだ、とおっしゃる。

 

それはなぜか?

 

パートナーに恵まれず

子を持つ夢が叶わず

しかも心の支えに、と持っておきたい子宮に

治療を要する筋腫ができちゃった、という不幸を

「100年の孤独」という不幸に

すり替えているからです。

 

子宮を摘出されたくないのはなぜか?

それは子供を持つ夢が根底から絶たれるから。

子供を持つ夢が根底から絶たれるのが辛いのはなぜか?

子供を持たぬ自分を、不幸だと思うから。

子供を持たぬ自分を不幸だと思うのはなぜか?

 

それはこの先

 

たった一人で人生を

終わってしまう

かもしれない恐怖が

あなたを

待っているから。

 

この世の不幸や辛さは

すべてこの「100年の孤独」から端を発している。

そして女性は本能的に

「子を産みさえすれば、この孤独から逃れられる」

と感じているのではないでしょうか。

 

マダム、あなたもきっと例外ではない。

 

だって私もそうだったから。

 

かつてこの「100年の孤独」に

10代、20代を随分と苛まれました。

言うなればこれは

「体育の時間にペアになりなさいと言われて

ひとりぽつんと取り残される恐怖そして羞恥」

とよく似ています。

衆人環視の下

誰にも必要とされない(と、感じてしまう)

自分をさらけ出すというのは

恐怖と消え入りたいほどの羞恥に他なりません。

他の人たちは「いとも簡単にできていること」が

自分にはできていない、という

悲しい気持ちも合わせて襲ってきて

もう、身の置き所もないですよね。

 

若いころ、相思相愛のパートナーができれば

これが解決するのかと思い

モテる努力もしてみましたが(ちょっとだけだよ)

いざそういう相手が現れても

結局、相手も自分とは別の人間です。

決して思い通りには動くはずもなく

(っつーか、邪魔ばっかりするよねー)

100年の孤独が改善されることはありませんでした。

 

では、本能の赴くまま子を産めば癒されたのか?

 

マダム、これも残念ながら「否」であります。

 

産んだ直後、ほんとうに一時期だけ

全身全霊で母を欲するふにゃふにゃの生き物を手にして

生まれて初めて「孤独から解放」された

と自覚しましたが

自分から生まれた分身のはずのソレも

いずれ己で立つ一人のニンゲンに成長していき

自分があずかり知らぬところで始まる

その生き物だけの物語を持つようになります。

だんだんに別の生き物になっていくわが子を尻目に

やっぱり自分だけの物語を

紡いでいかねばならないのは産む前と一緒

あなたが今もなお苦しむ「100年の孤独」は

あなたの思い描く

「パートナーと子がそろう家庭」であっても

癒されることはありません。

 

 

誰かの幸福を預かって

二人分、美しい物語を書けるほど

他のニンゲンも強いわけじゃないのです。

 

そう。ニンゲンは

 

生まれてから

死ぬまで一人で旅をする

生き物なのだから。

 

これが、私が長い時間をかけて気が付いた

悲しくもいじらしい、「孤独」の正体です。

宿命、と呼ぶのかもしれません。

 

 

続きます。

 

 

長い…

ごめんねー

 

 

 

追記:

たくさんの熱のこもったコメント

ありがとうございますぅ