婦人科便り279 白衣の魔術 | 婦人科備忘録

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ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ウェルカムですが
最近ご質問内容が
すでに記事になっていることが多くなってきました。
お手数ですが、まずはブログ内をご検索ください。

ネタ提供ありがとうございます。

 

自慢じゃないけど、

人を説得するのを得意にしております。

 

たぶん、なんのご利益もないちゃっちいツボを

60万円ですよと言って売るのもできる。

・・・て、思ってます自分。しないけど。

 

それだけ医師免許は世間一般的に

重く受け止められていると推察されます。

白衣を脱いじゃえば単なる20歳(だいぶ苦しい・・・)

スーパーの特売品獲得競争でも

ばあちゃんの尻圧に負けている。OMG

 

さて、今日はそんな「白衣の魔術」のお話。

 

****************

私の謎は、主治医の気持ちです。

(恋愛相談ではありません)

地元のがん拠点病院で病気が見つかり、

その時点では骨盤内の臓器を全部摘出したほうがいいのかどうか

悩ましい状況でした。

そんな中、

「あそのこ病院なら臓器を温存できるかもしれない」

と言われて、温存治療で有名なA病院(大きな大学病院)を紹介され、

主治医(30歳、男性)と出会いました。

主治医は全摘を勧め、私が「温存のセカンドオピニオンをとりたい」

と言うと、いきなり「帰ってください」と怒り、その日の外来は打切りに。

その後、私が希望したセカンドオピニオン先の病院に

ケンカ腰の電話をかけたらしく、

 

その病院から私のところへ

「あの先生は何なのか?」と電話が入りました。

いろいろありましたが、セカンドオピニオン先で

「温存で受け入れることもできるけれど、

 手術したほうがあなたは長く生きられる」と言われ、

私はA病院で治療を継続すると決めました。

A病院にその旨連絡を入れると、

主治医から夜に長い電話がかかってきました。

とても嬉しそうでした。
わからないのは、私がセカンドオピニオンを希望したとき、

どうして主治医はあんなに怒ったのか。

また、治療を継続すると言ったら、どうしてあんなに喜んだのか、です。

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白衣マジック、ここに極まれり。

 

これが単純にTシャツに短パン、金鎖を首にかけた

チャラい兄さんだったらどうだろう。

 

例え兄さんが優良納税者であっったとしても

絶対に絶対に絶対に

成熟したマダムは耳を傾けまい。

相手は30歳、

下手したら自分で産んでいるかもしれない年齢だもんね。

 

それが白衣を着て、医師免許を持っている(未確認)

と思われただけでこの鬼畜の所業。

 

全マダムに

とっとと謝れ。

 

外来を打ち切ろうとした瞬間、

「あなた、ちょっと

 部長を呼んでくださる?」

でよかったのでは。

・・・と、個人的には思う。

そいつがずっと担当だなんて私なら

ノーサンキュー、丁重に返品。

駆け出しの医者なんて、他に腐るほどいる。

 

ご質問をお寄せいただいたマダムの手術は

卒後5~6年目が気軽に執刀できるレベルではないため

真の執刀医は他にいると思われる。

そしてたまにしかこの難易度の高いケースは存在しない。

 

嫌な話だが

 

絶好のチャンス

 

と思われた可能性がある。

 

要するに、その手術を見てみたい若手の熱意が

そうさせたんじゃないか?と心が穢れた私は思う。

 

だが、まだまだ人生が続くマダムが

ある日突然、骨盤のすべての臓器を切り取らねばなりません。

と言われてハイ、そうですかどうぞどうぞ。

と即答できるはずもなく

四方八方、ご自分がご自分を納得させるために

模索することは想像に難くない。

むしろその道のベテラン、宮大工の棟梁レベルになると

医療者側から「他の病院でも意見を聞いてみてください」

とご本人を促すだろう。大事なことだからだ。

 

人生が伸るか反るか決められると言っても過言ではない

ターニングポイント。悩み苦しむのは当然。

 

この心の機微が分からず

自分の経験値を上げるためだけに早急に決断を迫るなど

奇妙奇天烈、言語道断、唯我独尊。

もし私がこの若造の(マダムの主治医にごめんね)

指導医だったら、即刻、口の中に1メートルほどガーゼを詰め込んで

「二度としゃべんな」とかパワハラ働いちゃってるかもしれぬ。

 

紆余曲折、最後に下した結論が

やっぱりそのむかつく医者の言う通りだったとしても

自分で考え、決断する、というプロセスを尊重されるのと

人から強制されて、考える時間がないまま流されるのとは

全くちっともぜんぜん同じじゃない。

 

人間はこころの底から納得する、というのが

ほんとうのほんとに大事なんですYO

この「こころ」が免疫システムを大きく動かし

時に「奇跡」も発動するからです。

 

ちなみに、私がセカオピ先の担当医だったら

受診予定のマダムではなく、

そのむかつく若手の「上司」に

クレーム入れてるところでございます。

まだおけつに蒙古斑が残ってそうな野郎に

いろいろ指図されるいわれなし。しばいたろか。

 

たまにいるのだ。

 

患者さんが自分に頭を下げていると勘違いしている野郎が。

 

しかし、絶対に違う。

患者さんが首を垂れるとき

それは白衣の向こうに垣間見える

人類の叡智と歴史に対して敬意を表しているに過ぎない。

 

一方、

「いろいろあって」そのむかつく担当医相手に

暴れず騒がず感謝を忘れず

懸命に治療に臨むマダムよ

大丈夫。きっと今からいいことばかり。

何もかもを飲み込んで発揮した「堪忍」が

思いもよらぬラッキーを引き寄せるに違いない。

 

まあ、そんな獰猛でちょっと精神的に幼い医者なんて

世間にはごまんと存在する。

世の中、そこはうまくできていて

必ずどこかで苦境に立ち、

変だな俺、どこかで何かしたっけとか首をかしげながら 

歴史の波に埋もれていくはずである。

マダムがわざわざ聖剣(エクスカリバー)振りかざして

手を下さずとも、天網恢恢疎にして漏らさず。

必ずや、でっかい蒙古斑がばれるに違いないため

その日が来るまでともに待ちましょう。けけけ

 

 

 

たーのーしーみーーーーーーー

蒙古斑♥

・・・なんかちがう

 

 

マダムの主治医の悪口

しこたま言うてごめんね。遅いか。てへ♥