閑話休題 うちのコムスメの言うことにゃ① | 婦人科備忘録

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ある婦人科医の独り言です

ネタが尽きたので自家発電に切り替え。

 

うちのコムスメ

南の島での夢のような6年間を終了し

めでたくこの春、研修医になった。

飛行機など乗り継いではるばる帰省していたのが

車で1時間程度、私の通勤時間とあんま、変わらない距離での

研修が始まった。

 

私は天気予報などで南の島通信を見張らなくてよくなり

台風の進路にいちいち心拍数が上がる生活が終了し

精神の安寧を取り戻したのであるが

コムスメはと言えば

お気楽な学生時代が終わり

急になんのトレーニングもなく社会人として放り出され

それはそれで苦労しているようですよ、みなさん。

わが子ながら実に初々しい。

 

まだ気持ちは一般人に限りなく近いので

いちいち反応が新鮮

治癒が見込めず、ツライ転帰を取りそうな患者さんを前に

心底同情し、心配し、傾聴しともに涙しているようであります。

ま、研修医の仕事は

患者さんの手を握って泣くこと、なんで。

それができていればこの時期、OK牧場です。

 

やさしくない医者なんて

医者である資格ないから!

(おめえだよ、そこのじじい。

 金の勘定だけしてんじゃねえ)

 

私も患者さんの病状とともに

体調のアップダウンがあったクチなので

目の前の患者さんに共感、思いを寄せていく気持ちは

よ~く理解できます。

人間だものbyみつを。

人生の何かに立ち会うとき

何も思わない・感じないはずはないのであります。

 

私が研修医の時

自分の担当だった患者さんが亡くなった朝

医局に戻ったら(医者の控室みたいなとこ)

皆が笑っていいとも!を大笑いしながら観ていて

私がこんなに大事に思っていた彼女が亡くなって

私の世界が変わってしまったというのに

皆は笑えているんだ、大筋のところでは世界は変わらないんだ、

という「諦観(仏教でいうところの悟り)」を

経験したことを思い出します。

 

うちのコムスメ、何がツライって

「だって指導医がみんな、ドラゴンボールの悟空みたいなんだもん。

 患者さんの病状が悪いのを見て

 おらワクワクする、とか言ってるのがもう、受け入れられない」

・・・・わかる。

そう、これがある意味一般人と医療関係者の

超えられないマリアナ海溝。深い。

決して相いれないどこぞの地域紛争と一緒で

絶対に理解し合えない感覚、なんだよねえ・・・

 

重症患者さんの病と立ち向かうとき

やっぱりプロは奮い立つ。

例えば私なんかは大出血している手術なんかに奮い立つ。

(同僚の先生はたいてい白目)

ここで負けたら患者さんは死ぬから

絶対に負けられないわけですよ。

たまに負けると分かっていても

負け戦を覚悟で戦いを挑むこともあるわけで

その姿がもし、「おら、ワクワクするだ」に見えているとしたら

それは大変申し訳ない、とは思います。不謹慎だからね。

 

ただもうちょっと自分のできることが増えてきて

患者さんの状態に慌てることなく

「自分で」次の手を打てるようになったらまた

なにも全医者=孫悟空のわくわく感、ではないことが

理解できるようになってくるんじゃないか。

・・・と先輩でもある母は思っております。

 

がんばれ研修医。

まずは採血が一発でできるようになろう。

温かく見守ってるで。